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原油価格の下落がマーケットに与える影響
●3月から下落を続ける原油価格
新型コロナウイルス感染拡大による景気悪化の懸念から、株式市場は乱高下している一方で、原油価格も大幅に下落しており、こちらも株式市場にも大きな影響を与えている。
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原油価格の下落は、石油関連企業が産業の比重を大きく占める米国や、石油の輸出で経済を支えているロシア、中東などの国にとっては死活問題となる。
産油国は産出費用を賄うために株を売るという見方もあり、原油価格がコスト削減に寄与すると考えがちだが、マーケットにはデメリットの方が大きいと言える。
●原油下落の背景
今回の原油下落の原因は、一つは新型コロナウイルスの感染拡大による世界的な石油需要の減退だが、そこにサウジアラビアなどのOPEC(石油輸出国機構)加盟国と、非加盟のロシアとの協調減産体制が崩壊したことで、拍車をかけた。
3月上旬に、サウジアラビアとロシアが3月末に期限が迫っていた協調減産の継続を交渉していたが、ロシアが拒否した。両国は2017年1月から協調減産をしていた。
交渉決裂が影響し、原油価格の目安であるWTIの先物価格は、今年初めには1バレル=60ドル以上だったが、3月には3分の1以下の20ドルを下回ることもあった。4月中旬でも、1バレル=20ドルあたりで推移している。
米国のトランプ大統領は「協調減産できない場合、輸入石油に関税を課す」と述べて、圧力をかけた。そして4月9日、ようやく世界の供給量の約1割にあたる日量1千万バレルを協調して減産することで、合意した。
●日本への影響
原油を輸入に頼る日本にとって、原油価格の下落はメリットになる面が大きい。石油製品の代表的なガソリンは、3月9日から4月13日までに1リットル14円下落した。小売価格とはかい離しているが、原油価格の下落は一般消費者にとっても、工場などの事業者にとってもコスト削減には大きく貢献する。
しかし、現在のような自粛ムードで、車も工場も経済の動きが無ければ恩恵は少ない。原油価格の下落による世界経済低迷のデメリットの方が、コスト減のメリットを上回ってしまう。(記事:森泰隆・記事一覧を見る)
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