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視聴率過去最低も評価が高かった第70回紅白歌合戦にみる、アナログと最先端の融合
2019年の紅白舞台演出に使われた、電子部品企業ロームグループ・ラピスセミコンダクタの「ORIZURU」。写真は同社が展示会で実施したプロモーション飛行の様子。[写真拡大]
今や国民的アイドルグループとなった乃木坂46。2011年の結成当初から同グループの中心メンバーの一人として最前線で活躍してきた白石麻衣が1月6日、3月25日発売の25枚目シングルの活動をもってグループから卒業することを発表。ファンのみならず、社会的にも大きな波紋を呼んでいる。
乃木坂46は、2017年に「インフルエンサー」、18年には「シンクロニシティ」で、2年連続で「日本レコード大賞」を受賞。紅白にも15年の66回大会から70回大会まで5年連続で出場を果たしており、 まさに年末のテレビを彩る顔ともいえる存在だ。しかし、今年の年末にはそのアイドルグループの中に白石の可憐な姿が見られなくなるかと思うと、今から少し寂しく感じている人も多いのではないだろうか。
紅白といえば、近年は様々な試みで話題になることが多い。
一昔前のような演歌中心の構成ではなく、乃木坂46をはじめ、若手のアイドルやyoutubeなどで話題になったアーティストも積極的に採用している。残念ながら、70回大会では第2部の視聴率が37.3%と、2部制となった1989年以降で過去最低視聴率となってしまったが、これは単純に「紅白が面白くなくなった」ということではなく、メディアが多様化したことで、年末の映像コンテンツの楽しみ方が分散したことも大きく影響しているのではないだろうか。とくに2019年はNetflixやAmazonプライムビデオ、Huluなどの動画配信サービスが大躍進を遂げていることを考えれば、むしろ健闘したといえる。
その証拠にネット上でも、低視聴率に反して、第70回NHK紅白歌合戦 の演出を評価する声は多い。特別企画でビートたけしを歌手として初出場させたのをはじめ、今年解散を発表しているアメリカの伝説的ロックバンドKISSとYOSHIKI の共演など、 NHKの紅白だからこその出演者は見ごたえがあった。
また、昭和の大スター美空ひばりがAIで復活するというとんでもない演出には仰天した。これは、NHKやレコード会社などに残る音源や映像をAIのディープラーニング(深層学習)という機能を駆使して実現させたものだ。紅白のステージにリアルな美空ひばりが現れた瞬間、テレビに向かって涙を流したお爺ちゃん、お婆ちゃんも多いのではないだろうか。
このように流行りの歌を流すだけでなく、今の最先端のテクノロジーを番組を通して国民に伝えるのも、NHK紅白歌合戦の大きな役割の一つだ。
今回の紅白ではAI美空ひばりの他にも、3回目の出場を果たした若手演歌歌手の代表格ともいえる丘みどりが歌う「紙の鶴」の舞台演出に使われていた、最先端のテクノロジーが印象的だった。
鶴を想起させる白い振り袖姿の美しいダンサーたちが舞い踊る中、丘の応援に登場したKis-My-Ft2のメンバーが手にしていた紅色の大きな折り鶴。ただの小道具かと思いきや、突然彼らの手を離れ、まるで生き物のように羽ばたきながら宙を舞ったのだ。審査員の驚く様子も映され、大いに盛り上がったが、番組終了後も、丘みどりやKis-My-Ft2のファンらを中心にSNSなどで「あれはどうやって飛んでるの?」「新型ドローンだ」などと、大きな話題となっていた。
実は、この空飛ぶ折鶴は、日本の電子部品企業のローム〈6963〉のグループ企業であるラピスセミコンダクタが2015年から開発と改良を続けている「ORIZURU」という羽ばたき型飛行体だ。まるで鳥のように羽ばたくORIZURUの胴体部分には、同社の超小型マイコンボード「Lazurite」をカスタマイズした「Lazurite Fly」が搭載されており、無線通信ICやセンサ、モータードライバなど、最先端の半導体技術がSDカードサイズに凝縮されているそうだ。。あの紅白の現場で、他の電子機器からの無線電波に妨害されずに安定した飛行を成功させていることからも、その技術力の高さがうかがえる。このORIZURUには、超小型マイコンボード「Lazurite」で手軽にIoTを検討してもらうことで、世界に通用する技術力を持っている日本の優秀なスタートアップ企業やベンチャー企業のサポートになればとの熱い思いも込められているという。
演歌歌手の出番が減って、高齢者が楽しみにくくなってしまったと嘆く声もあるが、NHK紅白歌合戦は単なる歌番組ではなく、こういった日本の誇るべき技術や魂をお茶の間に届けるのも大きな存在理由の一つだ。また、美空ひばりとAI、折鶴とIoTという、アナログと最先端の融合も演出として非常に面白い。夏には東京オリンピック、そして2025年には大阪万博も控えており、今年も様々な、未来を予感させるテクノロジーが誕生するだろう。今年の年末、第71回NHK紅白歌合戦の演出にも期待したいところだ。(編集担当:藤原伊織)
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