すばる望遠鏡、73億光年かなたの超銀河団の姿を明らかに

2019年10月25日 10:58

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超銀河団領域の銀河の個数密度分布を示す3次元(右)と2次元図。2次元分布では、奥行方向から約73億光年付近のみを切り出した大規模構造を示す。黄色の領域が、今回の研究によって分光確認された超銀河団領域。(c) 国立天文台

超銀河団領域の銀河の個数密度分布を示す3次元(右)と2次元図。2次元分布では、奥行方向から約73億光年付近のみを切り出した大規模構造を示す。黄色の領域が、今回の研究によって分光確認された超銀河団領域。(c) 国立天文台[写真拡大]

 国立天文台などの研究チームは23日、すばる望遠鏡を使った観測により、約73億光年かなたの超銀河団CL1604の全貌が明らかになったと発表した。これは、HSC戦略枠サーベイ観測のデータを使って得られた成果である。

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■HSC 戦略枠サーベイ(HSC-SSP)

 HSC戦略枠サーベイは、すばる望遠鏡の超広視野主焦点撮像カメラyperSuprime-Cam(HSC)を用いた、撮像観測プロジェクトである。約5年間ですばる望遠鏡の約300夜を費やし、夜空の広い領域を撮影してデジタル画像を取得する。HSC-SSPの主要な科学目標は多岐にわたり、以下のテーマとなる。

 ・ダークマター,ダークエネルギーの正体
 ・宇宙の膨張速度の観測によりアインシュタインの重力理論を検証
 ・銀河の形成と進化
 ・宇宙の再電離の原因と過程

 これらの現代天文学における最重要かつ未解決課題について、観測による解明を目指しているのがHSC-SSPである。

■超銀河団

 銀河の分布を調べてみると、宇宙に均等に散らばっているのではなく、偏りがあることが分かっている。銀河は集団をつくっているのである。

 数個から数十個の銀河の集団を銀河群、100個程度以上の銀河が密集している集団を銀河団という。このような銀河団や銀河群がさらに数十個集まって、1億光年をこえるような大きな集まり、「超銀河団」をつくっている。

■今回の研究

 研究チームは、HSC戦略枠サーベイのデータを用いて、地球から約73億光年の距離にある銀河を調査した。銀河までの距離は「測光的赤方偏移」という手法により求めた。

 その結果、CL1604超銀河団領域の北側および南側に銀河が密集した領域が存在していることを発見した。これは、CL1604が南北方向にさらに2倍以上の領域に広がっていることを示唆している。

 研究チームは、対象領域の銀河の距離を正確に求めるため、すばる望遠鏡とジェミニ北望遠鏡の分光装置を利用して分光観測を行った。その結果、銀河が奥行き方向にも偏りがあることが分かり、3次元的にも複数の銀河団からなる構造であることが明らかになった。

 今後、HSCによってより広い領域の観測結果が得られることで、宇宙の大規模構造の進化と銀河の形成との関係について解明が進むと期待される。

 本研究は、日本天文学会発行『Publications of the Astronomical Society of Japan (欧文研究報告)』のオンライン版に2019年9月23日付で掲載された。(記事:創造情報研究所・記事一覧を見る

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