クルマの運転支援装置に潜むバグとボーイング・737MAX事故 (1) 初代BMW850の失敗

2019年7月24日 18:36

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 ボーイングが危機的状況になっている。2019年4-6月期は95%受注減に見舞われている。ボーイング737MAXの事故の対策が済まないからだ。事故の原因は、姿勢制御ソフトの「バグ(誤り)」と見られている。

【こちらも】運転支援装置は大丈夫なのか? ボーイング737MAXの事故はソフトのバグ?

これは自動操縦だけでなく、現在の電子制御技術を取り入れたすべての設備や機器で起こり得るものだ。AI自動運転の夢ばかりが話題になるが、過去そして現在でも、自動車事故においてプログラムの「バグ」によるものも埋もれていると考えるべきなのだ。

■初代BMW850は「バグ」だらけ?

 新型BMW8シリーズが、日本でも発売になる。そのBMW8シリーズの初代が「1999年に生産打ち切りとなり、20年間生産されなかった理由は」何か。

BMW・850に積まれていたV12気筒エンジンの制御プログラムに「バグ」が多く、改修できずに問題となっていたのは事実だ。これは当時のBMW関係者の間では有名な話で、V12気筒エンジン制御プログラムの中で、センサーに異常を検知すると「システムダウン(エンジンストップ)」の処置になるようプログラムされている部分が多く、走行中にエンジンストップが起きやすくなっていたのだ。中には12気筒の片バンクだけ停止してしまい、6気筒しか機能しないなど問題が多かった。

 当時は日本車が電子制御を多く取り入れており、BMWも遅れまいと最高級車BMW850には、今日の「全身コンピュータ制御BMW車」の先駆者としての役割があった。エンジンコントロールの装置は「ボッシュ製品」であったようで、BMWジャパンは改善できずにいた。

日本政府機関に対する政治力で欠陥車扱いを回避し、逃げ切ったのが真相のようだ。当時のセダンであるBMW750の12気筒エンジンも同様であったという。輸入台数の少ない車種であったため、隠蔽に成功したと言える。

雑誌「マガジンX」に当時取り上げられていたが、最初の記事が出てから突然、続編は取材中止となった。これも当時、BMWの政治力であったと思われる。

■ウィンドウズのフリーズは「バグ」

 このように、コンピュータ制御の初期の段階では、ユーザーが気付かぬうちにプログラムの「バグ」が隠蔽されていた事例は確かに存在していると考えるべきだ。その他、ベンツEクラスの初期モデルでも、「信号待ち停車中エンジンが吹き上がる」問題が起きており、運よく整備士が同乗しており確認できたので対処したそうだ。

しかしそれを知っていると、今でいう「ブレーキとアクセルの踏み間違い」として片付けられている事故の中に、たとえ少数でも、このプログラムの「バグ」があると考えておくべきであろう。パソコンのOSであるウィンドウズのフリーズには悩まされてきたが、自動車の運転支援システムでも「バグ」は存在しないわけがない。これはコンピュータプログラム開発の経験があるものなら、根絶は難しい問題であることが分かる。

■法整備の遅れ

 法整備も遅れており、日本のいわゆる「製造物責任(PL)法」では、ユーザー側が「欠陥商品である」ことを証明せねばならない。データを持たない消費者側は、自動車などの複雑なシステムでは立証することは不可能に近い。日本のPL法は、欧米の「製造者が欠陥でないことを証明できなければ欠陥品」とする概念とは全く逆さまなのだ。

また消費者庁などの機能もきわめて手薄で、事実上、クルマの欠陥で起きた事故の責任を問うことが出来ていない。制御プログラムのバグで起きている事故は「必ずある」と言い切れるほどなのだが、データとしては、少なくとも表向きは存在しない。

 こういったことは、「自動運転」・「運転支援システム」が普及する中で解決しておかなければ、社会システムに対する信頼を失うこととなるだろう。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

続きは: クルマの運転支援装置に潜むバグとボーイング・737MAX事故 (2) 「レベル3」の危険性

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