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中国の「NEV規制」とトヨタのHV特許開放が引き起こす? 自動車業界の地殻変動 (3-3)
一定割合のエコカー生産を義務付ける「NEV規制」が始まった中国では、エコカーの範疇を見直す動きが始まり、HVがエコカーの分類に加えられる見通しが出てきた。今までガソリン車並みと分類されて来たHV車が、「低燃費車」として再評価されることになり、今年度中に新エネルギー車としての扱いに変更される見込みだ。
【前回は】中国の「NEV規制」とトヨタのHV特許開放が引き起こす? 自動車業界の地殻変動 (3-2)
修正案で優遇されるのは「低燃費車」でありHV車と明確に指定していないが、HV車の低燃費性能は認知されているところであり、現地メディアの評価も高い。中国指導部が進める排ガス規制の強化方針に現実レベルで「理に適っている」と認められたと言えよう。
HV車は特許が公開されたからと言って、すぐに車両として販売できるような代物ではない。2万件を超える特許の内容を読み込んで、一つ一つを納得できるように形にするには、それにふさわしい知見と充実した経験がなければならない。
時系列で考えると、トヨタがHVに係わる計2万3740件の全特許を30年末まで開放することを発表したのが4月であり、中国がHV車への評価を見直していると伝えられたのが7月だ。中国政府とトヨタが事前に調整することは有り得ないが、トヨタにとっては望外のフォローの風が吹き始めた。
トヨタは特許の公開と同時に、部品供給と技術サポートを並行して行うプランを実行に移しており、そのオーダーは既に5年分の仕事量に匹敵するようだ。
特許の塊のようなトヨタのHV車に対して、独のダイムラーやフォルクスワーゲン(VW)などは「マイルドハイブリッド」という簡易型のHVシステムを採用して、順調に市場規模を拡大している。導入コストが低廉で小型軽量という長所を持つマイルドハイブリッドには、排気ガスの削減効果が限定的で、燃費効率にも物足りなさは否めない、という弱点も指摘されている。
中国の自動車メーカーが、どの程度トヨタの技術サポートを受けて、HV車の生産にチャレンジするかどうかは分からないが、ガソリンエンジンで走っていた自動車が、ガソリンエンジンとモーターを効果的に使い分けるHV車へと進化して、いずれ十分な走行距離を走破できる充電に不安の少ないEV車へと結実するまでには、数年単位では見通せない時間の経過が必要だ。
トヨタ方式の「本格派」HVと欧州勢のマイルドハイブリッドの双方を、中国が「NEV規制」に適うシステムとして認めるのか、「本格派」HVだけを認めるのか、その結論次第によっては世界の自動車業界に大きな地殻変動が発生する可能性がある。もし、「本格派」HVだけにエコカーとしてのお墨付きを得た場合には、トヨタに求められるHV車の部品供給と技術サポートの要請は、飛躍的に拡大する。本格的なEV時代を迎えるまでの一時代を、トヨタのHVが席巻することだって有り得るのだ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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