結婚生活の幸不幸は遺伝子にも起因する エール大学の研究

2019年3月6日 20:11

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●夫婦のうちどちらかが保持していればうまくいくDNA

 結婚生活に必要なものとは何であろうか。信頼、尊重、忍耐力などさまざまな要素が、幸福な結婚生活の要因とされている。

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 エール大学の公衆衛生大学院が科学誌『プロスワン』に発表した研究によると、幸福な結婚生活のカギは遺伝子の中にも存在するのだという。

 研究では、パートナーのうちのいずれかにこの遺伝子が存在すれば結婚は幸せなものになると報告されている。そしてこの遺伝子とは、「愛」や「忠実」のホルモンと呼ばれる「オキシトシン」に関連するものであることが判明した。

●37歳から90歳、178のカップルを分析

 遺伝子が結婚生活にどのような影響を与えるのかを具体的に分析するために、研究チームは37歳から90歳まで178のカップルを対象にデータを収集した。

 結婚生活における満足度や各々の健康状態に関するデータが分析され、オキシトシン受容体の役割を調べるために唾液のサンプルが採取された。

●特定された「幸福な結婚生活」を保障する受容体

 分析の結果、パートナーのうちのいずれかにオキシトシン受容体遺伝子「Oxtr rs53576」の存在が認められたカップルには、結婚生活に対してより大きな満足や安定を感じていることが明らかになったのである。

 Oxtr rs53576は、過去の研究で感情の安定性、共感性、社交性といったポジティヴな性格特性と関連があることがわかっている。そして今回の研究では、結婚生活においても重要な要素であることが判明したことになる。

●それぞれが持つ遺伝子が人間関係に中で果たす役割とは

 人のゲノムが解明されてこのかた、それぞれが持つ遺伝子が人間関係にどのような影響を及ぼすのかという研究に注目が集まっている。

 たとえば、今回の研究ではOxtr rs53576を持つ人はパートナーに対して不安感をぶつけることが非常に少ないという特徴が明らかになっている。研究者たちは、この特徴は夫婦関係の安定になんらかの関連があると推測している。なぜならば不安感を態度で表現することは、過去の経験から派生した不安定性であったり、自尊心の低さや拒否されたりすることへの恐怖、同意を周囲に求めるなどの行動と関連しているためである。

●遺伝子と環境の相互作用

 結婚生活がうまくいくかはつまり、互いが持つ遺伝子が相互作用でどのように変容していくかにもよるというのが研究者たちの結論である。遺伝子や環境は独立した要素ではなく、互いに影響を与えていくものであると研究者は主張している。

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