日本の新車販売、「5ナンバー」減少し93年代比半減 3割を切ったその理由

2019年2月10日 17:34

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記事提供元:エコノミックニュース

90年代には6割以上だった「5ナンバー車」の国内乗用車シェア。2018年、遂に3割を割り込んだ

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 2000年まで国内新車販売の6割以上を占めた乗用車「5ナンバー車」のシェアが縮小している。

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 2018年の軽自動車を含む乗用車新車販売は、日本自動車販売協会連合会(自販連)の発表によると、総数で439.1万台。そのうち、いわゆる5ナンバー車といわれる小型乗用車は、131.2万台(前年比94.1%)の販売に止まり、販売比率は29.9%と、自販連が統計を取り始めて初めて構成比3割を割った。

 一方、3ナンバーの普通乗用車は158.2万台(前年比102.2%)でシェア36.0%と2年連続で過去最高を記録した。また、軽自動車も販売を伸ばし149.5万台(前年比103.6%)、シェア34.0%だった。これら数字の背景には、メーカーの国際競争力強化を狙った自動車開発戦略の転換と国内消費者ニーズの変化がある。

 国内の自動車ナンバーは、道路運送車両法によって自動車のボディサイズとエンジンの排気量などでナンバープレートに違いを設けている。排気量が660cc超~2000cc以下で全長4.7m、幅1.7m、高さ2.0m以下ならここでいう「5ナンバー車」に当たる小型乗用車だ。ナンバープレートには「5」で始まる3ケタの数字が付く。それを超えれば普通乗用車で「3ナンバー車」となる。

 日本では長らく5ナンバー車が主流だった。自販連の数字を見ると1993年の5ナンバー車の販売台数は約254万台と全体の65.3%を占めた。半面、3ナンバー車は16.0%にすぎなかった。だが、冒頭で示したとおり2018年は5ナンバー車が、ほぼ半減。逆に3ナンバー車は、過去最高を記録した。

 理由は、メーカーの商品戦略にある。各社は開発効率化に向けて、プラットフォームを複数車種で共有する。端的な例は昨年6月に発表した新型「カローラスポーツ」だ。同車は、トヨタの基本設計システムTNGA(Toyota New Global Architecture)に則って、それまでのプラットフォームに比べてひと回り大きい「プリウス」と共通化したことで、車幅が拡大し3ナンバー車となった。こうした例は、ホンダのシビックやインサイト、SUVのCR-Vなどが同じプラットフォームを使う動きとおなじだ。

 もうひとつの理由は消費者ニーズの変化だ。日本の交通インフラは、概ね5ナンバー車のサイズに合わせて設計された。1960年代半ばから都心部で導入された立体駐車場の多くは、5ナンバーサイズに準拠していた。また、分譲住宅地などで一般的に公道とされる道路の最小幅員は4mで設計する。5ナンバー車なら、こんな狭隘な道でも何とか擦れ違いができる。とくに都内部の住宅地は道幅が狭く、依然として小型車の人気は高い。

 しかし、5ナンバー車の減少している。理由は海外市場をにらんだ開発も影響しているようだ。前述したカローラスポーツは欧州でも販売を予定しており、世界的に厳しくなる安全規準を満たすため、室内空間を保ちながらボディ強度を上げる必要がある。そのため車幅が拡大した。同じようなことは海外メーカーでも起きており、フォルクスワーゲンのBセグメントのコンパクト車「POLO」が、昨年モデルチェンジして3ナンバー車になった。

 手ごろサイズで日本の交通インフラに合致し、運転もしやすい5ナンバー車は、日本で独自の存在感を保ってきたが、グローバルな車両設計という流れが強まるなか、日本市場だけのために、わざわざ5ナンバー車を投入する意義は薄れている。国の「5ナンバー」「3ナンバー」というナンバープレート区分そのものが「意味なし」と言ったら言い過ぎだろうか。(編集担当:吉田恒)

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