関連記事
日本の原発ビジネスは四面楚歌、将来のために今どうするか?(上)
2000年代の前後にかけて世界中で環境問題への意識が高まり、二酸化炭素の排出量の削減が声高に叫ばれるようになった。2006年に公開された「不都合な真実」というドキュメンタリー映画は大きな話題となり、主演した元アメリカ副大統領のアル・ゴア氏は環境問題への啓発に貢献したとして後にノーベル平和賞を授与された。
【こちらも】太陽光発電量が増えても既存の発電所を止められない理由
この頃、発電時に二酸化炭素を発生させない長所を持ったうえ、安定して大量の電力を供給できる原子力発電が、見直されることとなり「原発ルネッサンス」と呼ばれるほどの時代のうねりを呼んだ。
当時は1979年に起きたスリーマイル島の原発事故や、1986年のチェルノブイリ原発事故などの大規模事故の影響を引き摺り、原発は安全上のリスク管理が困難であるとの認識が一般的だっだ。「不都合な真実」はそうした当時の風潮を別の角度から見つめるきっかけとなり、原発の見直しを進めて復権させる程の勢いを生んだ。世界各地で原子力発電所の増設や、施設の延命化が大きな流れとなった時期でもある。
そんな機運を一気に逆回転させた出来事が、2011年に発生した東日本大震災である。この地震によって福島第一原子力発電所が受けた被害は世界を震撼させ、原発ルネッサンスとまで言われた潮流は一気に萎むこととなった。
日本はこの原発ルネッサンスの時期に、インフラ輸出の象徴的な存在として世界への原発の売り込みを進めてきたが、世界を覆い尽くす反原発の流れは重い足かせとなった。
日立が進めていたリトアニアでの原発計画は、市場環境の変化により費用対効果が悪化するとして、2016年に計画が凍結されている。三菱重工業と東京電力が進めていたベトナムの原発は、資金不足と住民の反対により2016年に計画の中止が正式に決定した。
三菱重工業と仏フラマトムを含む日仏企業連合が、トルコに計画していた原発4基の建設も、安全対策費が膨らんで建設費が当初計画より倍増し、総事業費が5兆円規模に高騰したためトルコ政府に謝絶された。
2018年の中盤までは日立が事業化への期待をつないでいたイギリスの原発も、事業費の高騰を分担することが難しくなり、引き受けの見通しが付かなくなったことから凍結に至った。肝心のイギリス自体がEUからの離脱問題で混迷の渦中にあり、踏み込んだ交渉が不可能なことも災いとなった。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
スポンサードリンク