新幹線と地上間で従来比750倍の高速データ通信に成功、日立国際電気など

2019年1月30日 09:15

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実験システムの概要(日立国際電気発表資料より)

実験システムの概要(日立国際電気発表資料より)[写真拡大]

 日立国際電気と鉄道総合技術研究所、情報通信研究機構は、90GHz帯のミリ波を用いて時速240kmで走行する新幹線と地上の間で、従来の通信速度の750倍となる毎秒1.5ギガビットのデータ通信に成功した。

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 実験では、北陸新幹線の富山・金沢間の線路脇約2kmおきに無線基地局を4か所配置し、これらの基地局を光ファイバを介して中央制御装置に接続した地上システムと、新幹線後部運転席内に設置した車上無線局との間で無線通信を行った。通信は、各地上基地局区間で順次分担通信するファイバ無線ネットワーク接続として行われ、必要最小限の電波照射で安定したデータ通信ができることが確認された。

 従来の移動体への無線通信では、移動体に合わせて地上の基地局を順次切り替えるハンドオーバー操作が必要で、この操作が通信の高速化を制限していた。今回のシステムでは、ハンドオーバー操作を不要とするファイバ無線ネットワーク接続で通信を構築したため、高速通信を実現できた。

 スマートフォンの普及により、地上だけでなく新幹線の中でも、高速通信環境の整備要請が年々高まっている。今回の実験は、新幹線での乗客のインターネット利用環境整備に貢献するものとなる。また、近年、新幹線などの高速移動体の防犯対策も喫緊の課題となっているが、今回の実験で、高速走行する新幹線内のカメラ画像をリアルタイムで地上に伝送できることが確認された。これは、新幹線のセキュリティー対策の面からも重要な開発に繋がっていくステップとなった。

 今回の実験は、総務省の電波資源拡大のための研究開発課題「ミリ波帯による高速移動用バックホール技術の研究開発」の一環として、JR西日本の協力のもと、実施された。今後は、高速通信システムの実用化に向けた技術開発と併せて、国際電気通信連合に対して、今回のミリ波通信の鉄道無線への応用システムを、国際標準化提案していくという。

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