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神経変性疾患の可能性がある5匹のクローン猿が中国で誕生
●不眠症以外の疾患がある可能性も
上海の中国科学院は、昨年に続き5匹のクローン猿が誕生したと発表した。新たに誕生したクローン猿は、ゲノム編集を受精卵の段階で行い不眠症やその他の疾病を持つ可能性がある。中国科学院は、この種のクローン猿の誕生はこれまで実験室での再現が不可能であった疾患の研究に役立つと主張している。
●病気になることを運命づけられた猿
今回のクローン猿の誕生については、2つの実験が実施されている。
一つ目は、CRISPR-Cas9という技術を使用し遺伝子組み換えを実施したことである。つまり、「時計遺伝子」といわれるBMAL1が機能しないように改変されている。この胚から誕生した猿たちには、あきらかに統合失調症に似た症状があることが認められた。
もう一つの実験では、成体幹細胞の核を睡眠障害のある猿から採取し、あらかじめ核を除いた卵細胞に移植した。この過程を経て、概日リズムに障害がある猿が誕生したのである。
●より人間に近い哺乳類に与えられた疾患
概日リズムの障害は、糖尿病や肥満、癌、神経変性疾患などの病気との関連性があるといわれてきた。
中国科学院は、概日リズムに障害がある猿を使用してさまざまな病気の進行状況や治療法の研究が可能になると主張している。これまではマウスやラットで実施されてきた実験が、より人間に近い哺乳類で可能になるというわけだ。
●学界に広がる倫理的な論争
中国科学院の新たな試みは、発表と同時に世界中で議論を巻き起こしている。中国は、他国と比べると比較的この種の制約が少ないといわれているが、昨年11月に同じく中国の科学者がゲノムを編集し、HIVに耐性のある双子を誕生させて大問題となったばかりである。
動物を対象とした倫理問題も長年論争の対象となっており、より人間に近い猿の実験使用についても学界にさらなる議論を呼びそうだ。
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