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肝臓の再生は自律神経によって促される 肝臓がん治療に大きな光 東北大の研究
肝臓は脳からの自律神経による信号が肝臓内の免疫細胞を刺激し、再生を促進する。つまり、この仕組みを利用することで、意図的に肝臓再生を促し、肝臓の生存率があがることが解明された。
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解明したのは、東北大学大学院医学系研究科糖尿病代謝内科学分野および東北大学病院糖尿病代謝科の今井淳太准教授、井泉知仁助教、片桐秀樹教授らの研究グループ。教授らは、マウスの肝臓の70%を切除し重症の肝臓傷害を起こす実験により、脳からの信号によって、緊急に肝臓を再生させることを解明した。
肝臓がんなどによる腫瘍切除手術後、重篤な肝臓障害時には、早い時期から急速な肝臓再生が起こり、その後、緩やかな再生へと変化することは知られている。また、老化によって急速な再生が妨げられてしまうとも考えられている。
そこで肝臓がどのようにして急速な再生が促されるのか、そのプロセスに注目し、解明したのである。
(1)肝臓が大きな損傷を受けると、脳からの信号が迷走神経と呼ばれる、全身の臓器の働きを調整している自律神経によって、届けられる。
(2)迷走神経はアセチルコリンという神経伝達物質を分泌することで、肝臓内のマクロファージ(免疫細胞)を刺激し、今度は免疫細胞がインターロイキン6という物質を分泌する。
(3)インターロイキン6は他の細胞機能に影響を与える物質で、肝臓細胞内のシグナル伝達経路を活性化し、肝臓再生を強く促すことで、急速に再生が進む。
この再生プロセスは、肝臓内に広く、また多数存在するマクロファージを刺激することで、神経信号を肝臓という巨大な臓器全体に効率よく伝達するために重要であると、研究チームは結論付けた。
そして研究チームは、神経信号がない状況では、重篤な肝臓障害の生存率が低下することを実験によって証明した。さらに、肝臓細胞内のシグナル伝達経路を活性化することで、重篤な肝臓傷害の際の生存率を回復させることに成功したのである。
今回の成果について研究チームは、「肝臓再生の新たな仕組みが明らかになった」としており、「肝臓疾患の病態を明らかとして治療方法を開発」することや、「肝臓が濾過をきたすメカニズムの解明」につながることも期待されるという。
肝臓がん治療についても、今回発見された仕組みにより、「肝臓癌手術の際に広範囲の肝臓を切除することが可能となり、根治に向けて切除手術後の合併症が少ない治療法の開発につながる」ことが期待されるという。(記事:和田光生・記事一覧を見る)
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