トヨタ、国内販売網を見直し 系列店の垣根を超え全店で全車種販売へ

2018年10月1日 09:25

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記事提供元:エコノミックニュース

これまでトヨタ車は、トヨタ店、カローラ店など4拠点の販売系列で顧客層の棲み分けを図ってきた。が、今後はすべての販売店でレクサス車を除くトヨタ車全車を販売する。写真のハイブリッド車「プリウス」は初代からトヨタ全店で取り扱っていた。この流れが全車種に及ぶ

これまでトヨタ車は、トヨタ店、カローラ店など4拠点の販売系列で顧客層の棲み分けを図ってきた。が、今後はすべての販売店でレクサス車を除くトヨタ車全車を販売する。写真のハイブリッド車「プリウス」は初代からトヨタ全店で取り扱っていた。この流れが全車種に及ぶ[写真拡大]

 トヨタは国内販売体制を抜本的に見直す。現在までトヨタ店、カローラ店など4拠点の販売系列でそれぞれ専売車を設けて顧客層の棲み分けを図ってきた。が、今後トヨタ車全車種を国内約5000店で系列に関係なく売る方針を固めた。

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 国内市場がピーク時に比べ3割減り、保有から共有への消費の構造変化が進むなか、60年以上続けた系列店による販売戦略を転換する。こうした動きは、10数年前からホンダや日産なども進めている。

 トヨタは現在、ブランドの旗艦車種クラウンなど高級車中心に取り扱うトヨタ店、中級車のトヨペット店、大衆車のカローラ店、若年層対象のネッツ店を展開してきた。それぞれ独占販売できる「専売車」を設け、顧客層の棲み分けを進めてきた。70年代から永年、国内販売トップを堅持した大衆車「カローラ」はカローラ店だけで売るという販売店の系列化だった。

 これまで、こうした施策によって国内販売が伸びている頃は系列ごとに異なる顧客層を獲得でき、トヨタ全体の販売を底上げできた。だが少子高齢化で国内販売の伸びが見込めないなか、系列販売による開発や販売のコストが膨らみ、見直しを迫られていた。

 事実上、商品面での販売店の系列統合が進む。と、同時に、これまで国内向けに生産・販売してきた約60車種を絞り込み戦略も進める。系列ごとに車種をラインアップする必要がなくなり開発費も削減できる。例を挙げると、ミニバン3兄弟の「ノア」「ヴォクシー」「エスクァイア」などは、1車種に統合可能となる。

 約280社あるトヨタ車の販売会社の9割以上は地場資本による独立経営だ。地域に密着した接客やサービスでトヨタの販売シェア首位を支えてきたともいえる。2017年の国内新車販売台数(軽自動車含む)のシェア31.2%を握るのがトヨタ車だ。10年前と比べ1.6ポイント上昇した。

 だが、国内新車販売は漸減傾向が続く。国内の新車販売台数は1990年に778万台/年だったが、2017年には523万4000台と3割減。業界団体によると、販社1社あたりの平均販売台数は2017年に3639台と、2013年に比べ9%減だった。今後も市場の縮小傾向は続くとみるのが一般的で、このため全販社の2割程度が近い将来赤字に転落するとの試算もある。

 それでもトヨタだけが国内メーカーで唯一、系列販売を維持できたのは国内保有シェア5割、150万台以上の新車販売があったからだ。だが、保有台数が減れば販売店の収益モデルは崩壊する。

 自動車メーカーは電気自動車(EV)などの環境対応車や自動運転など次世代車の開発競争が激しく、研究開発費や人手確保の面からも国内で車種をそろえるのは難しい。遂にトヨタも60年以上続けてきた従来の系列販売体制から離脱する。ただ、高級ブランド「レクサス」だけは異なる。(編集担当:吉田恒)

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