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アメリカの怠慢「混流生産」の遅れ(2) アメリカ自動車産業をダメにしたのは「金融専門家」
GM本社 (c) 123rf[写真拡大]
■「混流生産」は自動車メーカーには必須の課題
建設機械の「小松製作所」では、建設車両の生産台数が自動車に比較して2桁以上違うので、生産ラインの組み立て工員は「40車種以上の組み立てができる」多能工となっている。こうして「多車種の混流生産」をしないと、販売台数の落ちてきたラインは稼働率が落ち、忙しいラインは3交代制などとなってしまう。つまり、「平準化」が出来ないのだ。これは財務知識のある人なら、致命傷ともなりえる「立ち遅れ」と見ることが出来るはずだ。そして、そこにGMが倒産した事実が見える。
【前回は】アメリカの怠慢「混流生産」の遅れ(1) GMは資金効率を理解できないのか?
サプライチェーンについても、専用ラインでは安定していると考えがちだが、混流生産が難しい体質となる危険がある。混流生産では、車種が多様になり部品も多様になる。専用ラインのサプライヤーでは、多様な部品の納入に対応できないので、グローバル発注をしなければ安定しない。すると、メガサプライヤーに発注しない限り、品質とコストが不安定になる。安い人件費を求めてグローバル生産するなら、工場単位だけでなく世界の工場と連携しなければ、コストがかさむ。リストラも必要となる。そこで、「スイング生産」が必要になるのだ。
■アメリカの「リストラ」は日本の「首切り」とは少々違う
今回GMが最大1500人解雇するのだが、アメリカのリストラの考え方は、日本社会の「首切り」とは違った意味だ。「リストラ」に対しては「一時解雇」のほうが、意味が通じるだろう。「生産が落ち込んだのだから解雇して当然」「忙しくなったらまた雇用する」との感覚だ。そのため経営者は「気軽?」にリストラをする。しかし、労働者は生活が安定しない。この繰り返しはアメリカ社会の弱体を招いている。大きな社会的課題だ。その意味で「終身雇用制」は「社会保障」の意味合いがあり、社会の安定に大いに貢献する。そこで、経営者の「平準化」を求める資質が大事になるが、アメリカ資本主義は、その逆で短期的利益を求めることが経営者の使命と考えられているので、社会は「安定」ではなく「変化」を良しとする方向にある。
■アメリカ自動車産業をダメにしたのは「金融専門家」
これを解消するには、労働者も「多能工」になり、会社は「混流生産」に努力しなければならない。経営戦略がビジネスモデルに適合していないのは、アメリカ社会の経営者が金融の専門家であり、ビジネスモデルを知らないからだ。日本社会でも、近頃は、「金融の専門家が経営者にふさわしい」と考えられるようになった。しかし、ファンドはどうしても短期の利益を上げることしか概念がなく、経営者と言っても「ビジネスモデルの素人」であることが増えた。SONYの動きも合わせて、日本産業の復活に何が必要なのか?考えさせられるGMの動きだ。
少なくとも、「オリンピック」だけでは製造業は復活しない。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)
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