超新星2012au 爆発後も輝き続ける神秘

2018年9月22日 20:04

印刷

おとめ座NGC 4790(左)。超新星前の2001年撮影(右上)と2013年撮影(右下)。(C)NASA, ESA, and J.DePasquale [STScI]

おとめ座NGC 4790(左)。超新星前の2001年撮影(右上)と2013年撮影(右下)。(C)NASA, ESA, and J.DePasquale [STScI][写真拡大]

 2012年に発見された超新星2012au(SN2012au)が、爆発から6年経った今なお観測可能な明るさを保っていることがわかった。超新星(恒星の大規模爆発)の明るさは通常数カ月から数年で暗くなっていくが、何故いまだに輝き続けているのだろうか。

【こちらも】中性子星から未知の現象を発見 ハッブル宇宙望遠鏡が明らかに

 2012年に発見されたSN2012auはおとめ座の銀河NGC4790に出現した。超新星(スーパーノヴァ)の爆発はラテン語の新星(=ノヴァ)に「超(=スーパー)」を付けるほど非常に明るいことで知られているが、その点SN2012auは特別明るかったわけでもない。

 だが発見時から多くの点で他の星とは異なっており、爆発の後も他の超新星とは違い非常に緩やかな減光を見せている。パーデュー大学のダン・ミリサヴリエヴィッチ助教授は「爆発する前の星が残した水素ガスと爆発との間で何らかの相互作用がない限り、今回のようなスパンで輝きが持続したことはこれまでにない」と語る。ただ、SN2012auの観測データには水素の存在を示す特徴が見られないため、別の何かからエネルギーを得ている可能性がある、と同助教授は述べる。

 通常大きな星が爆発すると、その内部ではすべての粒子が中性子になるまで崩壊する。爆発によって星の本体は散り散りになるが、爆発後中心部に中性子星やブラックホールが残る場合がある。この時残った中性子星が磁場を持ち高速で回転することによって近くの荷電粒子を加速、形成されるのが「かに星雲」に代表されるようなパルサー星雲だ。

 パルサー星雲は他の超新星爆発の残骸とは異なり、中心にいくにつれ明るくなっていくことも知られている。ミリサヴリエヴィッチ助教授らはSN2012auでも同じような過程を辿ったのではないかと推測する。また、他の超新星爆発に関しても極端に明るかった箇所を観測し続けることで、同様の変化がみられるのではないかと予想している。

 超新星爆発は我々人類の始まりと言っても過言ではない。「カルシウムや酸素、血中の鉄など生命にとって不可欠な要素は超新星爆発からもたらされたのだから」と、ミリサヴリエヴィッチ助教授は語る。超新星爆発のプロセスを理解することは、天文学者に留まらず我々人類が宇宙市民である以上とても重要なことなのかもしれない。(記事:秦・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事