ソニー、「教育格差問題」縮小に挑む NPOやNGOと連携するSDGs発表

2018年9月11日 09:18

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「Warp Square」での異文化体験(写真:ソニーの発表資料より)

「Warp Square」での異文化体験(写真:ソニーの発表資料より)[写真拡大]

 ソニーは10日、教育格差の解決の一助となる「感動体験プログラム」を9月より開発すると発表した。

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 1945年の終戦、戦後の焼け野原から復興を遂げ、1964年にはアジア初の東京オリンピックを開催。その後も資源の少ない日本は技術立国を掲げ、1990年代には国内総生産(GDP)世界2位にまで至る。その復興は東洋の奇跡と世界中から賞賛された。

 その後のバブル崩壊で、失われた20年、30年と言われる日本。GDPは、米国、中国に次ぐ世界第3位。数値はトップの1/4と大きく離される。この停滞感が生み出した課題の一つが貧困だ。ソニーの発表では、17歳以下の子どもの相対的貧困率は13.9%、なんと7人に1人が相対的な貧困だという。この記事を見ている読者の一部には、衝撃的な事実であろうか。

 世界では約8億人が飢えているという。栄養失調の母は虚弱な子供を産み、5歳まで生きられない子供は500万人を超える。これは真の貧困だ。では、なぜGDP第3位の日本で、13.9%と高い貧困率というのであろうか。それは相対的、つまり格差貧困だ。格差での貧困の課題は、貧困の連鎖を生む。

 格差貧困で採りあげられるのは、ひとり親世帯の貧困率が半数以上を占める事実だ。このひとり親世帯の貧困率は世界中のワースト1位といわれ、経済を優先した政策の負の遺産であろう。

 グローバル経済を標榜する日本で、新たな課題も生まれている。言語難民という課題だ。海外からの移住者など、日本語指導が必要な子どもは全国に4万3,000人。日本語が学べず、社会から孤立する状況がある。例えばNPO法人の中には、言語難民の子供たちを無償で支援する団体もある。

●ソニーの感動体験プログラムの特長

 ソニーの培った技術で子どもの「教育格差」を縮小する。ソニーは、創造性や好奇心、感性などを育む体験機会の差が生じていると考え、NPOやNGO等の外部団体とのパートナーシップのもと、ソニーの製品やコンテンツ、技術などを活用し、STEAM(Science:科学、Technology:技術、Engineering:工学、Art:芸術、Mathematics:数学)分野に関連したワークショップを開催する。

 ソニーは、学校で過ごす時間よりも長い、年間約1,600時間の放課後や長期休暇における体験機会の差が子どもたちの成長に与える影響は大きいと考え、放課後ワークショップや遠隔授業を計画した。

●教育格差問題(ソニー、感動体験プログラム)のテクノロジー

 世界の人口は70億人強。その内の10億人以上が貧困や飢餓にあえいでいる一方、ほぼ同数が飽食による生活習慣病に悩む。食の貧困に加えて、教育の貧困は貧困の連鎖を生む。十分な教育を受けないと社会が受け入れない実態が日本にはあるのであろう。

 「For the Next Generation」は、ソニーの次世代を担う子どもたちの教育支援のキーワードだ。これは、持続可能な開発目標(SDGs)の一部であり、今回目標を強化したという。感動体験プログラムは、NPOやNGO等の外部団体とのパートナーシップを組む構想だ。ソニーのテクノロジーは、IoTや仮想空間のみならず、言語変換にも及ぶ。現状の教育格差に加え、明日の教育格差にも広く活用されることを願う。(記事:小池豊・記事一覧を見る

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