【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(2):◆陰の極を探る◆

2018年8月26日 09:50

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記事提供元:フィスコ


*09:50JST 【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(2):◆陰の極を探る◆

〇米株買い+日本株売りの構図に揺り戻しも〇
昨日は菅官房長官の「携帯料金4割下げ余地」発言で、情報通信セクターが波乱となった。日経平均終値は20円高だったが、KDDIは-36.18円、ソフトバンク-18.14円、NTT-1.03円、NTTドコモ-0.44円をファーストリテイリング+41.93円、テルモ+13.36円などの寄与でカバーした内容。業種別の情報・通信は前日比-1.89%(TOPIX-0.40%)と突出、年初来比でも-0.42%と、マイナスに転落した。

情報・通信は今年の日本株安定を支えてきたセクターで、空売り筋が場中に飛びついたとは言え、売り材料はココまで来たかの観がある。菅官房長官発言は実現までに相当の時間が掛かると見られるので、上値圧迫要因ではあるが直ちに業績悪化に結びつくとは見られない。むしろ連想として、野田総務大臣の機能マヒ問題、政府内で消費低迷論議が行われ通信費が槍玉に挙がっている可能性、通信各社が「顧客サービス強化」で反応しているので5G投資の加速などに思いを馳せた方が良いように思う。余談だが、東電-中部電の原発提携協議の動きが伝えられており、膠着感の強かった産業界の構造課題に取り組む動きが広がるか注目されるところだ。

東証売買代金は連日の2兆円割れ、出来高は20日の10億株割れからは持ち直したものの11億株には届かず。新高値銘柄数は12(東証1部4銘柄)、新安値474(同302銘柄)。ドル建て日経平均は201.64ドルと低迷が続いている。売り込み優勢の地合いが継続しているが、売り材料自体は目まぐるしさを増しており、売り込まれた銘柄の反発力の弱さが目立つ展開。TOPIXコア30が0.92%安となったのに加え、小型株指数のTOPIX Smallも0.40%安で、3月26日のザラ場ベース年初来安値を更新した。
東証空売り比率は42.9%、月曜からは低下したものの依然高水準。
週明けに売り攻勢から入り、翌日には一部買い戻すパターンが7月後半から続いている。

21日の米市場は4日続伸、NYダウは6ヵ月半ぶり高値、S&P500指数は最高値を更新した。NYダウと日経平均の絶対値差は3600ポイントに拡大(経験則上、格差は4000ポイント程度が限界)。
日本株はNY市場に連動するとの先入観があるが、知らぬ間に「米株買い+日本株売り」の構図が進行した。
米株を買い進んではいるものの、来月リーマン・ショック10周年を迎え、高所恐怖症的なイメージがあり、一部の投資家がヘッジ対象に日本株を選んでいる可能性、中国経済波乱時の影響は米国より日本経済への影響が大きいとの見立て、欧州情勢がブレグジット交渉難航などで混沌としており、流動性の高いヘッジ市場は日本しか見当たらないこと、などが緩い背景と考えられる。

あまり理論的ではないが、日本株には陰の極形成のイメージが漂っており、その是正・転換の動きを探すことになろう。


以上


出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(18/8/22号)《CS》

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