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【第3ハードル】「未知の概念」の不安
人類は、勝ち誇ったようにすべてを考慮したシステムを開発できると事実上公言してきている。まだ記憶に新しいが、タカタのエアバッグが不良品であると分かって、事実上タカダは消滅した。これは、「火薬が化学製品である以上、経年変化で劣化することもあり得る」との概念が、自動車製造・整備の概念の中になかったのが原因だ。タカタの事件で、エアバッグは「賞味期限」があることが分かったのだが、振り返って考えれば、タカタの技術はこの「経年変化を引き延ばす技術」であったと認識できる。しかも、環境が変われば賞味期限が短くなってしまうものであることは明白だ。よく考えれば「当たり前」なのだが、世界の自動車設計・製造・メンテナンスにおいて「未知の概念」だったのだ。
【前回は】中国・自動運転シティー開発(3) 開発【第2ハードル】実用化・品質保証(量産技術)
このような例を人類は幾度となく経験している。「摩擦」の概念も近年に確立できたものだ。初期の鉄道車両の車輪は「ギア」のようになっていた。つるつるの鉄で出来たレールと車輪の表面が、あれほど滑るように見えて、摩擦で滑らないとは考えられなかったのだ。宇宙ロケットにおいても、当初の打ち上げイメージではロケットが垂直に上っていけるとは考えられず、レールでジャンプ台を作り滑走して放り出されるイメージだった。ジャイロを使った姿勢安定化装置の発想、概念がなかったのだ。
第2次大戦で実用化されていたボーイングB29などの爆撃機から、B52のようなジェット爆撃機になっても、なかなか旅客機はジェット化されなかった。それは、燃費が悪く旅費が高くなりすぎるのが主な原因だった。それを克服して世界で初めて実用ジェット旅客機となった、デ・ハビランド・コメットと言うイギリスの飛行機が実用路線に投入された。しばらくは何事もなかったのだが、突然「空中分解」して墜落した。もちろん上空であるので、乗客・乗員は全て死亡した。原因が判明せずにそのまま就航し続けたところ、結局4度空中分解してしまった。
その原因がついに判明したのは、「金属疲労」の概念だった。「日航ジャンボが御巣鷹山に墜落した」のと同じ原因だった。金属疲労は、日常生活では既に分かっていたことで、日航機は以前のしりもち事故の時の修理ミスが直接の原因だった。その前、現在からは半世紀も前のことだが、私も所属していた日本航空機製造の国産旅客機YS-11の開発に当たった技術者が、金属疲労について教えてくれた。その時は衝撃的なことで、「胴体だけを試作して水槽に漬けて、いくども客室の加圧、減圧を繰り返し」金属疲労の出やすいところなどを綿密に実験していたのだ。
こうして人類は幾度となく「知恵足らず」を思い知らされているはずなのだが、また繰り返してしまう。スバルの「品質保証体制」も、分かっている人から見れば「なんで繰り返すの?」と言いたいことなのだ。テスラのイーロン・マスク氏の量産・品質保証の概念欠落は、天才の危険性を示している。また、「中国社会の人権軽視」はどこに現れるのかは予測が出来ず、不安を感じるのだ。いや不安に思うべき事案と言える。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)
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