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「e-4WD」の必要性(2) EV時代の4WDは「イン・ホイール・モーター」
「ノート e-POWER」4WD(画像: 日産自動車)[写真拡大]
■電動式4WD(4輪駆動)
トヨタ・プリウスにも「E-Four(電気式4WD)」が設定され、FFを基本として後輪にモーターが配置されて、フロントのエンジン、モーターとは独立して後輪を必要な時に駆動するようになっている。日産・「ノート e-POWER」4WDも基本構造は同じで、必要になったときだけ、つまりFFで駆動している前輪のスリップを感知すると後輪モーターを駆動して、スリップを防ぐようになる仕組みだ。しかし、この方式では機械部分と電子部分を合わせた反応の速さに限界があり、30km/h以上ではスリップを止めるのに間に合わないと言われている。路面の状況はいろいろなので、機械式フルタイム4WDとは違って運転には注意が必要だ。
【前回は】「e-4WD」の必要性(1) 日産・e-POWER、トヨタ・E-Four、ホンダ・NSXと機械式スバル・4WD、スズキ・ジムニー
しかし、ホンダ・NSXの、ミッドシップに搭載されたエンジンと一対に配置された後輪駆動用モーターと、前輪を左右別に駆動する2モーターの組み合わせなど、電動モーターとの組み合わせで制御する方法は進歩し続けている。
一方で、純粋にモーター駆動するEV日産・リーフやHEV日産・ノートなどでは、FFのため、立ち上がりのモーターの強烈なトルクを制御しきれてはいない。日産・リーフの発進でフル加速すると、前輪は浮き上がり左右に暴れてしまう。少々慣れがないと使いきれはしない。これらの前輪がスリップしているときにアクセルを戻してやれば問題はないのだが、自動制御はできていない。
これに後輪駆動の仕組みを用いて駆動力の制御をすることは、きわめて緊急に必要性が高い装備であると感じる。日産が、4WDのe-POWER車に「踏み間違い衝突防止アシスト」を標準装備したことは歓迎すべきで、EV、HEVなど電動車には標準装備とするべきであろう。モーターのトルクが強い中で、踏み間違いをすると重大なことになるからだ。
この辺の技術開発に関してトヨタは慎重である。電動モーターのコントロールについて、プリウスは、これまでのエンジン車の運転感覚と違和感のないように開発している。日産はリーフなどで「ワンペダルコントロール」を提案しているが、これは現在のガソリン車の運転感覚とは異なるので、慣れるまでは注意が必要だ。突然の運転に関しては、十分にレクチャーを受けてからとすべきである。特に、後続車に迷惑をかけることとなる。この「協調ブレーキ」の味付けでは、日産・トヨタ両社の社会に対する認識の差が出ている。注意して理解しておくことだ。
■EV時代の4WDは「イン・ホイール・モーター」
さらに高級車市場では、BMWのようにカメラやセンサーを使って事前に前方の路面状況を掴み、先回りして4輪の駆動力をコントロールする技術も進んでいる。それは、ガソリンエンジン駆動、モーター駆動などに関わりなく、制御の精度を上げる方向で進めていくだろうが、EVにおいては「イン・ホイール・モーター」の方向に進歩していくのであろう。
「イン・ホイール・モーター」は、タイヤの付け根にあるハブの中にモーターを仕込んでしまう方法で、4輪を別々にコントロールして、あらゆる状況下で最適の駆動力を得ようとするものだ。現在モーターの小型化が進められており、タウンカーとしてなら現在でも実用化できる段階にきているものと思われる。軽4輪、小型のワンボックス、あるいはミニバンなど、車内のスペースを確保するのに都合がよく、雨の日や雪の日などのスリップ事故を防ぐには大いに役に立つことだろう。将来モーターの出力が上がれば、実用車の範囲は広がると思われる。全固体電池などの実用化と同時に進んでいくと考えられる。しかし、「e-4WD」については、EVよりもHVの可能性のほうが、現実味が高いともみられる。
「e-4WD」の必要性については、EV、ガソリン車などの区別なく、安全性にとって必要な装備と見られ、出来るだけ早い開発装備が望まれる。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)
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