本来淡水に発生するアオコが塩分を含む湖に生じるのは何故か?筑波大が解明

2018年6月10日 20:31

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汽水で出現したアオコ(網走湖から流出する網走川、2017年)。(画像:筑波大学発表資料より)

汽水で出現したアオコ(網走湖から流出する網走川、2017年)。(画像:筑波大学発表資料より)[写真拡大]

 アオコは富栄養化した淡水の湖沼に生じるラン藻類である。独特の毒素「ミクロシスチン」を生成したり、また悪臭があるため、水質汚染の原因となる。これは本来淡水で暮らす藻類だが、まれに塩分の濃い湖すなわち汽水湖にも生じる。その原因は何故か。それを筑波大学などの研究グループが解明した。

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 研究グループに名を連ねているのは、筑波大学藻類バイオマス・エネルギーシステム開発研究センター田辺雄彦主任研究員、京都大学生態学研究センター程木義邦特定准教授、国立環境研究所佐野友春主任研究員ら。

 汽水湖というのは塩分を多く含んだ湖の総称で、その成立上の定義などがあるわけではないが、一般的には海に面した立地にある湖がそうなる。代表的なのは宍道湖、網走湖などである。

 アオコを形成するラン藻類は、その学名をミクロシスティス・エルギノーザ(Microcystis aeruginosa)という。研究グループは、このミクロシスティスのゲノム解析を行った。

 結果として、汽水湖で採取されたミクロシスティスは、バクテリアの細胞に塩分体制を与える性質を持つスクロース(ショ糖)を合成する遺伝子を持っていることが分かった。また、この遺伝子そのものが、塩分が高ければ高いほどより多く合成され、最大で塩分濃度1%まで増加を続けるという。

 なお、通常のミクロシスティスはこの遺伝子を持っておらず、実験したところ、塩分濃度0.25%で増殖できなくなることも分かった。

 今後の研究としては、日本の各地で発見されている汽水域のミクロシスティスが、それぞれどのような横のつながりでもって同じような塩分耐性を獲得したのかを調べていきたいという。

 なお研究の詳細は、Frontiers in Microbiologyに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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