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スルガ銀行は「かぼちゃの馬車」で何処へ行く!(8)金利の見直しが水面下で進んでいた
2日の日経新聞で、「かぼちゃの馬車」の購入資金の大半を融資したと伝えられているスルガ銀行が、毎月の返済負担を軽減するため、オーナーと個別に金利の見直し協議を行い、すでに300人ほどと合意したようだと報じられている。
【前回は】スルガ銀行は「かぼちゃの馬車」で何処へ行く!(7) 狭まるスルガ銀行包囲網
スルガ銀行は、「かぼちゃの馬車」への投資を巡るトラブルが表面化した2月に、融資先へ個別に事情を聴取し、自行の貸出しが妥当だったか否かを詳細に調べる実態調査に着手した。同月、「かぼちゃの馬車」の債務者76人が横浜東口支店を訪れ、3月からの返済停止を通知した際には、「返済が止まっても当面差し押さえなどはしない」と明言し、債務者との個別交渉に前向きとうかがわせる姿勢を見せている。
3月になると金融庁が動き出す。スルガ銀行に対して、銀行法に基づく「報告徴求命令」を発出したことが伝えられた。その1カ月後には、スルガ銀行への緊急立ち入り検査を始めた。スルガ銀行からの報告内容や、緊急立ち入り検査の状況は報道されていない。
4月18日の日経新聞は「シェアハウス破綻、投資家救済のハードル高く」と題する記事の中で、「大半の所有者に土地・建物代金を融資したスルガ銀行は、運営会社の破綻の有無にかかわらず「融資契約は有効」との見解を崩していない」と報じている。
融資契約は金融機関と債務者との相対取引なので、双方が合意すれば契約内容の変更は可能であるが、金融機関は通常そんな面倒くさいことはしない。それが金利の引き下げという、将来に渡って収益の圧縮につながるような後ろ向きの変更は、「融資契約が有効」であるならば、協議に応じることすら考えられない。
経済環境の変化はどんな時代にも訪れる。基本的には、過去に結んだ契約を、「利払いが苦しくなったから」という理由で見直していたら、銀行経営はそもそも成り立たない。
今回のスルガ銀行の対応はそんな”銀行のタブー”に踏み込んだ重みがある。自行の調査で「後ろめたい何かを掴んだのか」「金融庁から因果を含められたのか」「株価の大幅な下落という、投資家の厳しい視線に怯んだのか」、具体的な動機は不明であるが、色々絡み合っているのだろう。
例えば、1億円を4%で借入して30年間の元利均等で返済すると、毎月477,415円の返済が必要である。家賃収入で払える人は問題ないが、入居状況は押し並べて「あまり良くない」と伝えられる。家賃収入で足りない分は、会社員が多いというオーナーが、毎月の給料の中から捻出しなければならない。本来は、毎月多少の小遣いが残る筈だったのに、入居者の動向に怯えながら、持ち出しになる生活が続くというのは厳しい。金利が1%まで引き下げになると、毎月の返済額は321,639円になる(借入金額が1億円の場合、金利1%毎に毎月の返済額がおよそ5万円増減すると考えると分かり易い)。
目先の絶望的な状況から脱出を図ろうとする心情は充分理解できるが、条件変更は今回限りと腹を括って、横断的な情報交換を行いながら、後悔に繋がらないような条件の見直しに辿りつくべきだろう。オーナー76人がスルガ銀行に「返済停止」を通知してから、2カ月足らずの間(土日を除くと営業日で40日程度だ)に300人との交渉が成立しているというスピードには、正直、違和感を感じてしまう。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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