不当な表示に、惑わされない消費者になるには?

2018年4月27日 09:42

印刷

 22日の日本経済新聞は、消費者を惑わす広告の摘発が増加していることを報じている。「不当な表示に当たる」と消費者庁が判断した場合には、「措置命令」を下して再発防止策を策定させることができる。さらに16年度からは課徴金制度が創設され、実際よりも良い商品やサービスと誤認させる「優良誤認」や、実際よりも得だと思わせる「有利誤認」で措置命令を受けた業者の中から、「相当の注意」を怠っていたケースには課徴金が課せられるようになった。

【こちらも】消費者庁、ガンホーとグリーに不適切な広告表示などで措置命令

 この措置命令件数が17年度には50件に及び、前年実績(27件)の2倍近くになった。課徴金の納付命令は16年度には1件のみであったが、17年度には19件と大幅に増加した。しかし、不当表示が増加したから、摘発件数も増加したということではなさそうだ。消費者庁が摘発を続ける中で、不当表示の情報やノウハウを蓄積し、従来から行われていた不当な表示が、「やっぱりおかしい!」焙り出されてきたと言えそうだ。

 最近広告を見ていて気になるのは、「私はこれで楽になりました」等の商品やサービスを称揚するコメントの後で、「個人の感想です」と注釈が入ることだ。スポンサー側がバランスを取る「打消し表示」という手法である。この「打消し表示」は「優良誤認」や「有利誤認」表現に抵触しない表現として、編み出されたものである。よく考えてみると、「個人の感想」だからと容認されていれば、何でも言い放題になってしまわないだろうかと疑問が湧く。いずれチェックされる時期が来る可能性が囁かれている。

 健康食品やダイエット関連商品に即効性を期待するべきではないにしても、「長く続けて頂ければ効果があります!」というコメントには、「本当か?」という疑問を拭えない。効果があるかどうか分からないまま長く続けるのは、メーカーの思うつぼなのではないか?例えば「3年続けても効果がない」という苦情に何と回答するだろう。「効果には個人差があります!」ではないだろうか?

 健康そうな高齢タレントが「私はこれで元気です」というコマーシャルは定番だが、好感度の高い「健康な」タレントと、商品を組み合わせただけではないかと思うのは、下衆の勘繰りではないだろう。

 実際措置命令の1/3はダイエット効果を謳う機能性食品で、価格が有利と誤認させているものが続く。「今だけ」とか「急いで」と、思考停止を促すようなコピーには裏があると立ち止まった方が良い。何しろ素人は効果の有無を判断する材料を持たない。

 17年度に措置命令を受けた企業には、なじみがない先と高い知名度を誇る大企業が混在している。こんなリストに一緒にされて「情けない」と感じる正常な感覚を、しっかり持ち続けて欲しいと思う。

 17年度の課徴金は合計で3億9千万円を超えた。そのうち、上位4社は1社で5千万円を超えている。不当表示による売上高の、最長3年分の3%相当額という課徴基準に照らすと、相当な売上になったものと想像できる。「賢い消費者」でいることは、なかなか難しい。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事