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【TNGAの本質を見誤るな(2)】トヨタ近未来5つの技術 それでも中国EVは進む
新型無段変速機(CVT)「Direct Shift-CVT」(画像: トヨタ自動車の発表資料より)[写真拡大]
■新【CVT、6速MT、2.0リッター直噴エンジン、2.0リッターTHS II、4WDの新統合制御】の5つの技術
今回5つの新技術が発表されたが、2030年までに生産台数の10%をEV(純電気自動車)とFCV(水素燃料電池車)の無公害車にする。また、EV・FCV・HV・PHVなど、「電動車」を50%とする。結果として、これらのパワートレーンを効率化することは、Co2排出量削減に大きく貢献することとなる。近未来のトヨタのパワートレーン戦略の具体化である。
【前回は】【TNGAの本質を見誤るな(1)】トヨタ近未来パワートレーンの裏 それでも中国EVは進む
参考:
TNGAによる新型パワートレーンの開発(トヨタ自動車)
新型パワートレーンの特長(トヨタ自動車)
■Direct Shift-CVT 発進ギヤを持つことにより6%燃費向上
CVTは数ある変速方式の中で、エンジン効率にとって最適と言われているが、発進時など少々エンジン回転が上がるまで「もたつき」と感じられる「タイムラグ」がある。そのため運転の専門家を中心に評判が悪い。実際、一般ユーザーの日常運転ではタイムラグさえ感じていないようだが、アクセルの操作に対してのもたつき感が、CVTが嫌われる原因であった。
逆に言えば、「段付きミッション」に過去ならされていただけだが、人間は過去の経験を基準に好き嫌いが激しいものだ。CVTがスクーターではなく、先に自動車に採用されてきていたなら「段付きミッション」など今更、許容できないだろう?CVTが自動車に使えなかったのは、プーリー、ベルトの強度が車両重量に追いつけなかったからだ。先駆者はスバルだが、日産が経営危機へ陥る前に大型車のCVTを完成させていたので、ルノーが2000憶円で日産を傘下に収めるとき、この「CVTの技術が目当て」などと陰で言われるほど日本の高い技術だった。それも、「割れないプーリー」を可能にしたのは、現場の作業者の手作業の工夫だった。
ヨーロッパなどではCVTは普及せず、DCT、多段ATなどが使われ、CVTは世界の中で日本市場だけといった様相だ。それは、CVTを造るにはATとは別途の設備投資が必要で、DCTのほうが投資を削減できるメーカーの資金的事情だったからだ。しかし、今回発表の「発進ギヤ」、つまりローギヤを持つことで、発進時のもたつき感はなくなるはずだ。
さらに、CVTを発進に使わないことから、セコンドから上に使うことが出来るため、プーリー直径を小さく、またプーリー狭角化ができて、大きさを抑えてワイドレシオにできた。そのためトップでのエンジン回転を抑える効果が出て、燃費を改善できた。「乗用車では世界初」と言っても日本市場向けと思われるが、新型CVTの効果は大きい。スバルもCVTの開発では先駆者だが、段付きシフトを可能にするなどフィーリング面でも苦労している。ローギヤをCVTに着けるアイディアは朗報であろう。しかし、陰では開発競争であったのかもしれない。
一つ疑問なのは、HV用のCVTでは、従来から発進はモーターの駆動であるので、ガソリン・エンジン用のローギヤの必要性がなく、新CVTのローギヤを除いたような構造になっていたのではと考える。今回、HVの「2.0L THS II」との組み合わせでは9%の燃費向上と、ガソリン車との組み合わせの18%燃費向上との差となっているのは、そのためではないのか?アイディアとしては両者の組み合わせと言えるのだろう。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)
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