【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(2):◆次は臨検か◆

2017年12月10日 09:50

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記事提供元:フィスコ


*09:50JST 【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(2):◆次は臨検か◆
〇北朝鮮情勢緊迫、日本株には目先の重石〇

米軍の北朝鮮攻撃で、「Xデーは18日前後」との観測も流れ、緊迫度が増してきた(17日が金正日総書記の命日、18日が新月)。4~8日、史上最大規模の米韓合同空軍軍事演習が行われ、5日から8日まで国連事務次長が訪朝する。来週13-14日は国連事務総長が来日し安倍首相と会談、15日には河野外相が議長で、安保理閣僚級会合が開催される。最後の「国連努力」となる公算がある。

11月のトランプアジア歴訪後、中国特使の失敗→米国が北朝鮮をテロ指定国に再認定・追加制裁→北朝鮮ミサイル発射と流れて来た。ミサイルは大気圏再突入技術は完成していないと看做されたものの、飛距離は欧米到達の脅威感を一気に高めた。米国は中国に石油禁輸を求めたが、中国の反応は捗々しくなく、次の手として、11月28日にティラーソン国務長官が言及した「北朝鮮に出入りする海上輸送の阻止を含む海洋安全保障の強化」が注目されている。海上臨検を国連軍で行おうとするもので、トランプ大統領の横田演説(国連軍司令部がある)も意味があるとする見方。なお、朝鮮戦争の国連軍は16カ国(韓国除く)で構成されており、同様の国連軍監視体制構築に動く可能性がある。ちなみに、朝鮮戦争時に参加したのは、米、英、仏、蘭、加、豪、NZ、ギリシャ、ベルギー、ルクセンブルグ、トルコ、タイ、比、南ア、エチオピア、コロンビア。一部は困難としても、新たにドイツやインドなどが加わる可能性があり、東南アジアの参加国も拡大する可能性がある。
ただし、日本の参加は微妙だ(船舶監視には加われると見られるが、戦闘行為に発展する恐れのある相手船への乗り込みが微妙)。また、既に北朝鮮船からの積み替え画像が公開され、代替する恐れのある中国船が対象となれば、中国の出方が不透明だ。領海内往来が可能なロシアとの関係も不透明。なお、11月上旬、米韓豪の海軍は臨検想定の訓練を行っている。

余談だが、6日未明、ロシアの命運を握るIOC理事会で平昌冬季五輪参加可否の結論が出る。プーチン大統領は五輪メダルラッシュの勢いをバックに、3月18日の大統領選圧勝再選を目論んでいるとされるだけに、全面排除となれば大きな痛手を受ける。経済情勢は芳しくなく(原油70ドル/バレルが必要とされる)、ウクライナ問題での経済制裁が海外投資を止め、日本との交渉にも失敗している。窮地打開に北朝鮮カードをチラつかせてきたが、海上臨検はそのカードも消失させる。

中国は本音として、北朝鮮情勢のグダグダが続いた方が好ましいと見られている。トランプ政権が南シナ海問題や通商交渉などで、鉾先を緩めざるを得ないと見られているためだ。習政権が完全に掌握できていないと見られる旧瀋陽軍区(現北部戦区)・江沢民派勢力との摩擦激化リスク、北朝鮮問題が無くなった後の対米交渉の図面を持っていないと見られること、の両面で、苦慮する事態に追い込まれる公算がある。展開次第では、日本経済の中国メリットが萎む可能性がある。

戦争となれば、一気に事態は流動化するが、米軍は異例の早期決着体制を敷くと見られている。市場は大枠として、北朝鮮に戦争遂行能力は無いと看做していると思われ、短期波乱→事後展開模索の流れが想定される。


以上

出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/12/5号)《CS》

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