東京メトロ、「鉄道の防災」テーマに体験勉強会 大雨・地震にミサイルも

2017年9月1日 19:54

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 東京メトロでは7月下旬、東京大学と協同で『鉄道の防災』をテーマに体験勉強会を開催。9月1日の防災の日を念頭にしたこの勉強会では、東京メトロの社員向け施設「東京メトロ総合研修訓練センター」にて中学生約40名が災害の専門家のもと、災害に対するさまざまな取り組みを学んだ。

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 近年、特に注視されているのがゲリラ豪雨による洪水の被害だ。今年も各地で記録的短時間大雨情報が発令されたり、局地的集中豪雨などの被害が出た。地下鉄は施設がすべて地下にあるため洪水の被害が懸念されており、東京メトロでは駅の出入り口からの水の浸入を防ぐ止水板の設置を推進している。東京メトロ管轄の駅出入り口は1094箇所、うち509箇所が今後も整備が必要で、勉強会では止水板を取り付ける作業を実際に体験した。東京メトロでは止水板の設置を2022年度の完了を目標として、地下街や駅ビルと接続する箇所の地権者との話し合いを進めている。

 勉強会はその後、東京大学生産技術研究所に場所を移し、「クロノロストーリー」で災害をリアルにイメージする手法を学んだ。これは具体的な災害を想定した上で日時や天候、災害の規模、災害発生時にいた場所を設定し、起こり得る事象を想像して課題や対策を書き出すというもの。体験会ではいくつかのグループに分かれ、「8月3日午後4時、新宿駅で震度5強の地震に遭遇」という共通の状況を設定の上、「なぜそこにいたのか」「どういう状況に陥ったか」など個人的な状況も細かに設定。ゴールは「自宅に帰る」とし、そのために何ができるか、周囲の状況はどうなのかなどを想像し、考えたストーリーをグループ内で見せ合い、そこから得た教訓を話し合った。

 その際、「駅ではパニックが発生する」「情報を求めて人が殺到する」など、災害時の駅の様子が意見として出され、さらにそれに対する対処法や対策などが提案された。

 同研究所の講師で防災の専門家である沼田宗純氏は「災害が起きたら何が起きるか、具体的に想像することが大切」と話す。実際に災害に直面すると、想像出来ないものに対して人はどうしたらよいか分からなくなるという。日頃から具体的に想像することで災害に対応できるようにしておくことが大切なのだ。

 先だって北朝鮮のミサイル発射の際、Jアラートが発令された。ミサイルの落下に備え、地下に逃げ込むとよいとされているが、実際に地下鉄に逃げ込むことになったらどうなるだろうか。東京メトロに人々が押し寄せるかもしれない。こうした状況を設定しクロノロストーリーで備えておくことも重要だろう。(記事:M_imai・記事一覧を見る

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