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音波を用いて銅に磁気を生じさせる研究 新たな磁気デバイスに応用可能か
図(a) SAW フィルター素子の構造、(b) レイリー波による交流スピン流生成、(c) 交流スピン流による磁気量の変化とレイリー波振幅の減衰、(d) 磁気量変化の発生によるレイリー波の振幅減衰量。(画像:慶應義塾大学発表資料より)[写真拡大]
慶應義塾大学、東北大学、日本原子力研究開発機構先端基礎研究センターの共同研究グループは、銅に音波を注入することによって「スピン流」という電子の持つ磁気の流れを生じさせることに成功したと発表した。この新しいスピン流生成法によって、磁石も貴金属も必要としない、省エネルギーな磁気デバイスの実現が期待できるという。
【こちらも】新たな物理現象「iTMC効果」を発見、磁気メモリ開発等に応用可能か
室温で強い磁気を持つ物質において、電子のスピン(磁気)が力学的な回転運動と相互に変換可能である、という事実は、今から100年ほど昔、アインシュタインらによって実験的に実証されている。だが、実際に得られる磁力が極めて小さかったため、これをデバイスに応用する研究はほとんど行われてこなかった。
今回の研究グループに参加している日本原子力研究開発機構先端基礎研究センターの松尾研究員が、室温で磁気を持たない銅やアルミニウムなどの金属でも、力学的な回転運動を与えることで金属中に電子のスピンの方向が揃った状態が作れるという理論を発表したのは2013年のことである。
この状態をスピン蓄積状態といい、スピン蓄積はスピン流の源だ。スピン流は、電流よりもはるかに発生させる熱量が少ないため、不揮発性メモリなどの省電力デバイスへの応用研究が進められている。
ただし既存の研究では、プラチナなどの貴金属が主に使われていて、安価でありふれた金属である銅は不向きであるとされていた。
今回行われた実験には、レイリー波と呼ばれる音波が利用された。レイリー波は、1秒間に10億回以上もの速さで原子が回転する音波だ。これがスピンの方向を周期的に変化させる「交流スピン流」を産み出し、磁石の磁気量を大きく変化させることに成功したのである。
なお、この研究の成果は、米国物理学会誌「Physical Review Letters」に、オンライン掲載された。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)
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