国立循環器病研究センター、アルツハイマー原因物質の蓄積抑制を発表

2017年5月5日 16:54

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記事提供元:エコノミックニュース

 国立循環器病研究センターの研究グループは、脳アミロイド血管症に焦点を当て、アミロイドβの蓄積を抑制する物質を突き止めたと発表した。アルツハイマー病では、神経細胞内のタウ蛋白質が沈着物を形成して、神経細胞の機能維持や脳内の清掃をつかさどるグリア細胞が活性化。炎症反応が起こって神経細胞が死に至る。このとき脳にできる、アミロイドβの凝集体からなる「老人斑」がアルツハイマー病の原因として有力視されていたが、認知機能の低下と老人斑の数が一致しないなどの矛盾が起きていた。

 アルツハイマー病治療薬に関しては、2014年の研究では、413種類の治療薬が試験されたが、99%以上は効果がまったく見られず苦戦を強いられている。アミロイドβの蓄積がアルツハイマー病の原因とする「アミロイド仮説」に基づき、これの除去および蓄積抑制にターゲットを絞った創薬が世界中の製薬会社で行われている。現在進行中の25件の主な研究は試験中の治療薬の効果を検証するステージ6以降が対象で、このうち約半数は沈着物を破壊または沈着物の形成を阻害することで治療を目指している。製薬大手、米イーライリリーによる大規模臨床試験が昨年11月に失敗を発表。米メルクは2月、アミロイドβをターゲットにしたアルツハイマー病治療薬「ベルベセスタット」の効果を証明するのは事実上不可能とし、大規模な研究を停止した。これ以外にも、タウ蛋白質の除去にターゲットを絞ったシンガポールのタウRxの治療薬や、脳内のグルコースの新陳代謝を活性化させる米アクセラの治療薬も失敗に終わっている。

 一方、今回の国立循環器病研究センターによる研究は、アミロイドβが蓄積して形成される集合体「オリゴマー」が脳内を泳ぎ回って神経細胞のシナプスに作用し、認知機能を低下さえるとの「オリゴマー仮説」に基づいている。研究グループは、脳アミロイド血管症を患うマウスの実験にてアミロイド凝集抑制作用を持つ「タキシフォリン」の投与により、脳アミロイド血管症のアミロイドβオリゴマーの量を1/4程度に減少させることに成功した。さらには、脳血流量が正常と同程度までに回復。空間記憶能も正常に回復したとのこと。このようにタキシフォリンにより脳内アミロイドβが減少するとともに、認知機能障害も回復させられることが明らかしており、臨床応用に期待したい(編集担当:久保田雄城)

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