東大、開花と収穫の時期を自在に制御できるイネを開発

2017年3月29日 09:19

印刷

イネのイメージ画像。

イネのイメージ画像。[写真拡大]

 イネ(稲)というものは普通、栽培する地域と、田植をした日と、その後の気温や日照という環境によって、開花・収穫の時期が決まる。人為的にこれを操作することは、これまで不可能であった。だが東京大学らの研究グループは、抵抗性誘導タイプの市販農薬を散布するとそれに反応して40~45日後に開花するタイプのイネの系統を生み出すことに成功した。

 これにより、栽培者は任意の時期に開花・収穫を調節することが可能となり、栽培環境ごとに収量、バイオマス、品質制御を最適化することが可能となる。生産効率が向上するのはもちろんのこと、新しい品種開発を行うに当たっても、これまでにない研究を行うことが可能となる。

 ちなみに花芽(イネにも花はある)の発現には、フロリゲン遺伝子と花芽形成抑制遺伝子が深く関わっている。この研究では、これらの遺伝子を改変することで、開花時期を操作可能な系統の創製に成功している。

 植物は栽培を続ける限り基本的にはいずれ花が咲くように遺伝的に定められているが、このイネ系統では、フロリゲン遺伝子の働きが抑えられているために、自律的には花芽を作ることができない。

 研究の流れとしては、まず開花することのない性質のイネを作り、そこに「抵抗性誘導剤すなわちオリゼメート(MeijiSeikaファルマ)やルーチン(バイエルクロップサイエンス)等の農薬を処理した時にのみ反応して働くように改変された人工フロリゲン遺伝子を導入、任意の条件下においてのみ開花する系統を生み出した」という。

 この研究は、農林水産省の委託事業、「次世代ゲノム基盤プロジェクト」と「新農業展開プロジェクト」の委託を受けて行われた。

 さて。開発されたのはあくまでも研究のベースとなる系統であるが、気になることはといえば、やはりこのイネから採れる米はどんな味がするのか、ということである。食味よく、生産性に優れ、その上収穫時期を自在に調整できる新しい米が登場するとなればそれは素晴らしいことであろう。今後の品種創出の行方に期待したい。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事