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社会保険の加入対象が拡大―実施を前に勤務時間調整や退職の動きも
社会保険(健康保険・厚生年金)の加入対象を拡大する制度改正が10月1日から施行される。従来、週30時間以上の短時間労働者が対象だったが、拡大後は従業員501人以上の企業に週の労働時間が20時間以上、月額賃金8.8万円以上(年収106万円以上)、1年以上の雇用見込みで勤務する学生以外の短時間労働者も対象となる。厚生労働省は約25万人が新たに適用されると推計している。
これを受け、東京商工リサーチでは今回の適用拡大への対応について、企業を対象にアンケート調査を実施した。それによると短時間労働者の雇用が多いサービス業、運輸業で関心が高く、また、実施を前にすでに従業員の勤務時間調整や退職の動きもでていることがわかった。企業が負担する社会保険料(法定福利費)の増加によるコストアップには、経費節減で臨む姿勢がみられた。企業の保険料負担の軽減を望む声が強く、社会保険未加入事業所の是正など公平な制度運営に関する要望もあったとしている。
社会保険の適用拡大について、「知っている」と回答したのは4,682社(構成比67.5%)と約7割に達した。産業別では、サービス業他(同70.6%)で最も認知されており、次いで、運輸業(同70.0%)、建設業(同69.1%)、小売業(同69.0%)、製造業(同68.6%)と続き、5産業が全体の構成比を上回った。
一方、最も認知度が低かったのは不動産業(同58.6%)で唯一6割を割り込んだ。「知らなかった」と回答したのは2,259社(同32.5%)だった。大半は従業員数500人以下や短時間労働者の雇用がなく、今回改正の対象外となる企業で認知されていない傾向がみられたという。
適用拡大について、何らかの「対応を実施した(予定含む)」のは1,483社(構成比21.4%)と約2割にとどまった。従業員数別では、501人以上で「対応を実施した」のは180社(同37.8%)を占めた。一方、従業員500人以下では1,303社(同20.2%)で、17.6ポイントの開きがあった。
今回の改正で対象とならない従業員500人以下の企業は、「検討しない/対応しない」が2,861社(同44.3%)と最も多かった。
適用拡大に「対応した/する予定」と回答した企業1,483社の具体的な対応策は、「従業員(主に短時間労働者)への周知」が830社(構成比56.0%)で過半を占めた。次いで「管理者への周知」734社(同49.5%)も半数に迫った。
ただ、「(労働時間短縮など)雇用契約の見直し」が320社(同21.5%)、「対象外の短時間労働者を増やす」が59社(同3.9%)と、いずれも少数だった。適用拡大に伴い対象者の増加を避ける動きは少なく、従業員と管理者への周知にとどめるなど、適用拡大を受け容れる姿勢の企業が大半を占めた。
適用拡大が企業に与える影響について、既に出ている影響は「無い」は5,071社(構成比73.1%)で、実施前のため大きな動きはない。次いで、「短時間労働者の勤務時間・日数調整」846社(同12.2%)、「新規採用難」396社(同5.7%)と続いた。
実施前ではあるが、「短時間労働者の退職増加」と回答した企業は130社(同1.9%)に上っており、大きな動きは無いが、既に影響が出ていることもわかったとしている。(編集担当:慶尾六郎)
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※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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