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【不動産業界の2016年3月期決算】景気に減速感が漂っても需要はオフィスもマンションも、分譲も賃貸も陰りが見えない
5月12日、不動産大手5社の2016年3月期本決算が出揃った。減収は三菱地所だけだが、これは2015年3月期の反動による一時的要因。最終利益は住友不動産を除く4社が2ケタ増益だった。オフィスビルは空室率の低下と賃料の上昇、商業施設は集客の増加が寄与し、マンションは需要が衰えを見せず高額物件でも売れている。そんな状況は今期2017年3月期も続く見込みで、業績見通しは全社が増収で、最終減益は前期の反動が出る野村不動産HDだけ。三井不動産、住友不動産、東急不動産HDは営業利益が最高益を更新する見込み。不動産は今期、業績が最も安定している業種だと言ってもいいだろう。
■タイトな需給、空室率の低下がオフィス賃料を押し上げる
2016年3月期の実績は、三井不動産<8801>は売上高2.5%増、営業利益8.8%増、経常利益11.7%増、当期純利益17.5%増の増収、2ケタ最終増益。最終増益幅は2015年3月期よりも圧縮したが過去最高益を更新。年間配当は5円増配の30円だった。戸建て分譲は苦戦したがマンションの販売は坪単価がアップして増収。賃貸部門は「ららぽーと富士見」など新しい商業施設の開業効果、既存賃貸ビルの賃料上昇が寄与し、売上が1割近く伸びた。
三菱地所<8802>は営業収益9.1%減、営業利益6.3%増、経常利益8.8%増、当期純利益13.8%増の減収増益。最終利益は2ケタ増。年間配当は2円増配して16円。増収から減収に転じた理由は、2015年3月期にビル事業の物件売却件数が多かった反動が出た一時的要因。営業減益、経常減益から営業増益、経常増益に転じた理由はオフィスの空室率改善、賃料上昇の他、アウトレットモール運営事業の収入増、マンション事業の採算改善なども貢献している。
住友不動産<8830>は営業収益6.0%増、営業利益5.0%増、経常利益6.7%増、当期純利益9.0%増の増収増益。最終利益は3期連続で過去最高益更新。年間配当は1円増配の22円。分譲マンションの販売も、不動産賃貸事業の収益もともに好調。東京都心部でオフィスビルの賃料市況の改善が続いていることがその背景にある。当初計画通り、完成工事、不動産流通、不動産賃貸、不動産販売の主要4事業全てが増収増益だった。
東急不動産HD<3289>は売上高5.5%増、営業利益8.6%増、経常利益9.1%増、当期純利益13.8%増の増収、2ケタ増益。年間配当は2円増配して12円。東急のホームグラウンドで大規模な再開発が進む渋谷周辺ではIT関連企業のオフィス需要が旺盛で、賃料水準を押し上げている。「東急ハンズ」など商業施設は訪日外国人のインバウンド需要もあり集客堅調で、マンション「ブランズ」の販売は東京都内だけでなく大阪市や札幌市の中心部の物件も好調だった。
野村不動産HD<3231>は売上高0.4%増、営業利益12.5%増、経常利益14.1%増、当期純利益22.7%増の増収、2ケタ増益。営業利益、経常利益は2015年3月期の減益から増益に転じた。年間配当は12円増配の57円。オフィス賃貸事業はビル空室率が低下し、マンション販売も引き続き好調。不動産売却益を加えて増収を確保した。自ら運営する3本のREIT(不動産投資信託)を1本に統合し、統合手数料収入を26億円計上したことも増益に寄与した。
■丸の内、銀座、渋谷など東京の一等地の収益性は抜群
2017年3月期の通期業績見通しは、三井不動産<8801>は売上高11.6%増、営業利益8.7%増、経常利益8.5%増、当期純利益6.2%増の増収増益で、今期も過去最高更新を見込む。予想年間配当は2円増配の32円。マンションなど住宅の販売戸数は前期比約1000戸増の6150戸。投資家向けの不動産売却益も拡大すると見込む。商業施設やオフィスの賃貸事業は新しく完成する予定はほとんどないが、稼働率の高止まりと賃料の上昇を想定している。横浜市都筑区のマンションのくい打ち問題は、建て替えなど具体的な是正方法が定まっていないとして関連費用の計上は織り込んでいない。
三菱地所<8802>は営業収益9.2%増、営業利益5.3%増、経常利益3.6%増、当期純利益3.1%増の増収増益を見込む。予想年間配当は16円で据え置き。東京・丸の内の通称「三菱村」周辺では需給はタイトで、オフィス空室率が改善し賃料も上昇傾向。その近くの千代田区内に「大手門タワー・JXビル」が開業する予定で収益の押し上げ要因になる。マンション分譲の販売戸数も前期比で132戸増の約4000戸。平均単価は約270万円増で5850万円。高額物件としては東京・港区に「ザ・パークハウス・グラン南青山」が完成する予定。
住友不動産<8830>は営業収益2.9%増、営業利益2.2%増、経常利益4.4%増、当期純利益10.5%増の増収、最終利益は2ケタ増益で4期連続の過去最高益を見込む。予想年間配当は1円増配の23円。3月に満室で開業したオフィスビルの「新宿ガーデンタワー」など新規大型ビルの賃料収入が加わり、マンションの販売も順調な見通し。
東急不動産HD<3289>は売上高3.0%増、営業利益6.2%増、経常利益8.2%増、当期純利益9.7%増の増収増益を見込む。予想年間配当は1円増配して13円。3月末に開業した大型商業施設「東急プラザ銀座」が営業利益を30億円程度押し上げる見通し。
野村不動産HD<3231>は売上高3.4%増、営業利益6.1%減、経常利益7.8%減、当期純利益8.9%減と増収減益を見込んでいる。予想年間配当は3円増配して60円。オフィスビルの売却を増やして増収を確保しても、REIT統合関連収入がなくなる反動、退職給付債務の割引率引き下げに伴う関連費用の負担増で減益を見込んでいる。(編集担当:寺尾淳)
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