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【小倉正男の経済羅針盤】GPIFが直面する二つのガバナンス
■新浪剛史氏の「もの言う株主になれ」という提案
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用資産は、2013年度末で126兆5771億円――。
この126兆円超というおカネはなんと日本の実質GDPの四分の一に近い金額に匹敵する。もちろん、すなわちすべて国民から集めたおカネだ。
運用資産額では、確かに世界断トツの「機関投資家」にほかならない。その存在感は相当に大きい。そのGPIFが株式への運用拡大をさらに促進する動きを見せている。
新浪剛史・ローソン会長などは、GPIFの存在感を指摘して「GPIFはもの言う株主になれ」と提案している。 そう、GPIFは株主として大きい存在感を持っているのである。
GPIFは、いま二つのガバナンス問題に直面している。ひとつは、日本の企業全体のコーポレート・ガバナンスである。
■日本企業のガバナンス欠如問題
GPIFが株式への資産運用を拡大するなかで、投資する企業のガバナンスはかくあれと要求する――。あるいは、ガバナンスがある企業に投資する、と表明する――。
ガバナンスとは、詰めていえば、権力へのチェック&バランスということだ。CEOなど経営者(オフィサー)層を統括・チェックする機能である。
アメリカでは、株主代表が「ボード・メンバー」となり、CEOを統括・チェックする。
日本企業では、その多くは監査役が経営者層をチェックすることになっている。しかし、社長が監査役を任命しているのだから、相当に酷い経営をしていない限りは何も言えない。 「社外役員」「独立役員」なども、おおよそほとんど同様である。
日本企業は、「ガバナンスがない」とかねてから批判されている。それはチェック&バランスがないためだ。
新浪剛史氏は、GPIFが株式への資産運用を拡大するなかで、「もの言う株主になれ」とイメージしている。GPIFは、国民のしかも巨額資産を安定的に投資するのだから、「株主として日本企業にガバナンス改革を求めろ」、というわけである。
■GPIF、おのれ自身のガバナンス問題
GPIFが抱えるもうひとつのガバナンス問題は、おのれ自身のものである。
GPIFは、国民から巨額の運用資産を預かりながら、運用に失敗しようが、成功しようが、何も問われることがなかった。
何をするのか、何をしないのか、あるいは何にもしないで座っているのか――。結果責任どころか、説明責任すらなかった。それで今日までいたっている。
これでは、「最高の天下りポスト」である。仮に、「最高の天下りポスト」であってもよいのだが、やはりそこにはチェック&バランスが必要ではないか。「責任」という概念を少しでも植え付けるべきではないか――。
GPIFは、国民の巨額資産を預かるいわば「政府系機関投資家」――。
とすれば、国民代表から「ボード・メンバー」を選び、理事長以下のオフィサーの仕事を統括・チェックすることが望まれる。
国民も「GPIF理事長が誰だかわからない」、という調子で任せっきりでは済まないということになるのだが・・・。(経済ジャーナリスト・評論家、『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』(PHP研究所刊)など著書多数)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。
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