継続は力なり。被災地で行われている新入社員研修の効果

2014年7月20日 19:55

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記事提供元:エコノミックニュース

 東日本大震災から3年余りが経った。メディアで取り上げられる機会はすっかり少なくなってしまったが、決して被災地の復興が完了したわけではない。被災地では今も尚、厳しい生活が強いられている。あれだけの大災害だから、すぐに元通りというわけにはいかないし、甚大な被害を受けた街並みや施設を復元するだけでは復興とはいえない。本当の意味で被災地が立ち直るためには、被災者自身の行動もさることながら、日本国民全体での継続的なサポートやバックアップが必要だ。

 各大手企業も震災以降、経済的な支援をはじめ、様々な支援を行っている。最近では復興支援を企業のCSR活動として、新入社員研修の一環に組み入れている企業も多い。

 たとえば、事務機器や光学機器などの製造で知られる株式会社リコーは、宮城県沿岸部で漁業の生業回復支援を行っているNPOジェンと共同で、2012年度から毎年、町の基幹産業である漁業の復興支援活動を行っている。3年目となる今年は、224名の新入社員が南三陸町の地元の漁師とともに、ワカメの出荷や養殖関連の作業を行った。また、NECグループのネットワークソリューション事業の中核を担うNECネッツエスアイも、同社の全新入社員と一部グループ会社の新入社員も交えて、被災地でのガレキ処理や草取りなどを行ってきたが、3年目となる今年は、次のステップとして、田んぼや畑、果樹園、小川や丘などの環境整備も実施している。

 中でも規模の大きい取組みとしては、住宅メーカー大手の積水ハウスが挙げられるだろう。同社も2012年度から、新入社員による被災地での復興支援活動を行っているが、総合職の新入社員全員が3ヶ月間に渡って交代で取り組む大規模なもので、今年の参加者は460名、3年間で1373人にのぼる。

同社の活動では、「これをやらなければいけない」という会社側からの押し付けではなく、現地に入った社員たちが地元で活動するNPOなどと連携し、支援ニーズを聞きながら、班ごとに自分たちでどんな支援ができるかを自発的に考えて行動するシステムを採用しているところが興味深い。その結果、仮設住宅の物置づくりやごみ捨て場の整理、子どもたちの遊び場を作るためのガレキや危険物の撤去、高齢者単身世帯の訪問、小学校の校舎や池の清掃活動など、活動範囲は多彩なものとなっている。

ニーズに合わせた支援を行うことで、被災者にとってより効果的な支援となるのはもちろんのこと、新入社員にとっても得るものは大きいようだ。活動を終えた後、業務に従事している社員の感想からは「安心して快適に暮らせる家づくりに携われることを誇りに思う」「自発的に行動することの大切さを学んだ」「安全・安心な住まいを提供したいと強く感じ、営業活動の礎になった」など、通常の研修だけでは学べないものを肌で感じて成長し、住宅メーカーとしての業務へも良い効果を得ている様子が見て取れる。

被災者だけでなく、新入社員にとっても得るものは大きい、このような復興支援活動は、事業の内容にも結び付きのある業種においてはより効果的なものであろう。企業がCSR活動として取り組む意味合いは深い。(編集担当:石井絢子)

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