【小倉正男の経済羅針盤】『プロ野球16球団制』のボトルネック

2014年6月23日 16:39

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

■「第3の矢」どころか、出てくるのはスマホ税、パチンコ税

  「第3の矢」、すなわちアベノミクスの眼目になるはずの経済成長戦略だが、はたして期待できるものはあるのか。

  法人税の実効税率低減、カジノの規制緩和による新稼動、燃料電池車への補助金などプランが積み上げられている。

  またしても期待外れに終わるのか。いや、もう期待している向きのほうが少ないのだから「外れ」はないか。

  本質的に新産業を育成し、人々に仕事をつくっていくような切り口が見当たらない。

  法人税見直しなどはやらなくてはならない事案である。ただ、これを成長戦略にカウントするのは筋違いではないか。

  その一方でケイタイ電話税=スマホ税、パチンコ税と新増税のプランは次々に出てくる。自民党の知恵やアイディアはどうにも新増税に尽くされているようだ。

■プロ野球エクスパンション

  これまで騒がれているものでなんとか注目できるものは、プロ野球球団をエクスパンションするという案だ。

  セリーグ6球団、パリーグ6球団の現状を、「8球団・8球団」に新増設し16球団制にするという構想だ。

  これにより、静岡、北信越、四国、沖縄などに新球団を誕生させる――。地域経済を活性化するツールになる。内需の柱というべきサービス産業を拡大できる。

  「神宮球場、ねぐらに帰るカラスが1羽、2羽、3羽・・・」(NHKの6大学野球のラジオ放送)の大正、昭和の野球も9人対9人で闘う――。いまの野球も9人対9人。

  だが、それを取り巻くファン・観客の消費行動、新聞・テレビといったメディアなどのサービス産業がゴツい。

  試合がある日は、人気のあるカードなら3万~5万人のお客を呼び込める。コンテンツとしても見逃せない。メディアが群がる。読者、視聴者が多いのだから、取り上げざるをえない。広告も動く。

  大げさにいうと、毎日、ワールドカップのサッカーを開催しているようなものだ。

■メジャーリーグは毎日が試合、年間162試合を行う

  しかし、これとて実現はかなり厳しいと見られる。 これまで球団エクスパンションができていないことが不思議な話なのだが、既得権で儲かっている球団やリーグがリスクを取りたくない。

  日本では、プロ野球というビジネスが極大化を目指さない。通常でも月曜・金曜はお休み。セ・パ交流戦では、2試合をやってはお休み――。極端なほど「勤勉」ではない。 これでは選手の給料も上がらないし、選手を終わってからの年金も払えない。

  アメリカのメジャーリーグは全体で30球団、ほとんど毎日休みなしでゲームをやっている。監督が選手に休みを与え、調整しながら年間162試合を行う。その後にトーナメントで長いポストシーズンを進め地区・リーグチャンピオンを決め、ワールドシリーズで締めくくる。

■ビジネスを極大化しない「カルテル型」体質

  アメリカはビジネスを極大化している。だから世界のよい選手を集められる。ビジネスの好循環をつくっている。

  アメリカの資本主義と日本の資本主義のベクトルが何故こうも違うのか。プロ野球だけではなく、日本では多くのビジネスが、小成に甘んじる「カルテル型」につくられている。

  官僚がコミッショナーに天下ったり、日本のプロ野球も政・官・業のトライアングルがすでに形成されている。ビジネス極大化という資本主義が無視され、中世の「座」のような12球団制がいつまでも維持されている。日本経済のボトルネックの一端がここにあるのではないか。(経済ジャーナリスト・評論家、『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』(PHP研究所刊)など著書多数)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。

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