「盆と正月が一緒に来る」のか「泣きっ面に蜂」になるかオリンピック関連株で9月相場の方向とスケールに探り=浅妻昭治

2013年8月19日 10:32

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

<マーケットセンサー>

  「盆と正月が一緒に来る」ようになるのか、「泣きっ面に蜂」になるのか、悩ましく9月相場が目の前である。しかも、その分水嶺のヤマ場は、9月7日、9日と矢継ぎ早に迫っている。9月7日にアルゼンチンのブエノスアイレスで開催される国際オリンピック委員会(IOC)の年次総会で、2020年夏季オリンピックの開催都市が決定され、東京都が当選するか、前回の2016年夏季オリンピックに続き落選してしまうか運命の日となる。

  9月9日は、株式市場にとって最も重要な日となる。この日に4~6月期の国内総生産(GDP)の確定値が発表される。8月12日に発表された速報値は、年率換算で前期比2.6%増と2期連続のプラス成長となったものの、市場予想の3.6%増を下回った。期待された設備投資が、0.1%減と6四半期連続で前期を下回ったことなどが要因となったが、これが確定値では上ぶれ、成長率の上方修正につながるとする観測が有力となっている。この確報値こそ安倍晋三首相が、来年4月に消費増税関連法通りに消費税の増税を政治決断するかしないかの参考指標としているからである。

  9月7日と9日が、ともに株式市場にプラスに働くか、マイナスとして影響するかによって、9月相場の方向とスケールが決まることになり、それは秋相場にも尾を引き続ける。ともにプラスなら「盆と正月が一緒に来る」ような活況相場を呼び込み、ともにマイナスなら「泣きっ面に蜂」の波乱相場を覚悟しなくてはならないということである。

  このうちオリンピック開催都市の決定は、株式市場にとってプラスかマイナスか、極く単純で分かりやすい。東京都が開催都市に決定すれば歓迎高、ご祝儀相場に沸くことになる。落選すれば、東京都は今後50年は、開催都市への立候補さえできないほどのダメ-ジを受けるとする失望売りが、関連株ばかりでなく市場全体のショック安さえ招きかねない。

  GDP確定値は、プラスか、マイナスか影響の予測が難しい。上方修正されて安倍首相が、消費増税を政治決断するとして、実態経済面と株式市場での評価とが分かれる可能性があるからだ。消費増税は、もちろんデフレ経済への逆戻り要因となる。「アベノミクス相場」の第1ステージでしこたま儲けた「勝ち組」投資家や富裕層には、消費税率が8%に引き上げられようが、10%にアップしようが、痛くも痒くもないはずだ。ところが、第1ステージの高値近辺に遅れて参加して保有株の評価損を抱えてしまった「負け組」投資家や、まだ「アベノミクス効果」の給与所得の増加に預かっていない勤労者所帯、年金支給額の上積みなど望むべくもない年金生活者は、またも節約志向・生活防衛意識へのカムバックを迫られることになり、景気サイクルは、再びデフレ不況に逆回転を余儀なくされる。株は売りとなる。

  ところが、株式市場にとっては、消費増税が買い材料となる可能性も予測されている。外国人投資家が、大量に買い出動してくるとみられるからだ。衆議院と参議院の多数派が異なる「ねじれ国会」、政治の空洞化要因となって何も決められないとされ、「失われた20年」から脱却できない日本が、今年7月の参議院選挙で、自民・公明党両党の与党が圧勝、「ねじれ国会」の解消で、国際公約の財政再建に手をつけたと評価されることが要因である。その先には、法人税率の引き下げ、TPP(環太平洋経済連携協定)参加などの成長戦略の加速も期待されている。

  9月相場は、早々の2つのヤマ場の動向次第で、売りにも買いにもなる不透明さが拭えない。このヤマ場まで、きょう19日のお盆明けから3週間である。そこでこの間、ヤマ場がどちらに転ぶかは「神のみぞ知る」だが、次善の策として株価は株価に聞いてみることにしたい。俎上に載せるのは、なお高等数学のように関数が複雑に絡み合っているGDP確定値でなく、小学生でも理解可能な算数問題のようなオリンピック開催都市の決定である。開催都市が東京に決定した場合に歓迎高するはずの銘柄の先取り人気次第で、2020年の夏季オリンピックの東京招致が成功するか失敗に終わるか占おうというのである。

  2020年のオリンピック関連株は、これまでも散発的には買い人気となった。東京都競馬 <9672> や東京ドーム <9681> などが動意付くたびに、格別な買い材料が観測されないことから、オリンピック関連などと無理矢理のマーケット・コメントを引き出してきた。オリンピック招致委員会の開催計画では、オリンピック競技の85%が、東京・お台場を中心に半径8キロメートル圏内の競技会場で実施されるコンパクトな会場配置となっていることをセールスポイントとしているだけに、社名に「東京」の冠がつく銘柄にとっては、追い風になることが間違いないとする先取り思惑である。

  株式市場には、この「東京銘柄」は、ザッと40社も数えるのである。「東京銘柄」から今後、3週間、1日少なくとも2社強、オリンピック銘柄が、思惑人気高していい計算にはなる。しかし、この「東京銘柄」の材料株人気は、逆に現在のところ全般人気をリードする本命株が不在ということの裏返しでもある。(本紙編集長・浅妻昭治)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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