【アナリストの眼】急騰後の利益確定売りをこなしながら強基調を継続、円安が加速すれば一段高の可能性

2013年4月7日 18:06

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

<相場展望>(8~12日)

  来週(4月8日~12日)の株式市場は大勢として強基調に変化はなく、急騰後の利益確定売りをこなしながら、日銀の「異次元の金融緩和」を好感する動きが継続しそうだ。米3月雇用統計が予想外に弱い内容だったことや、4日と5日の重要イベントを通過して主要企業の3月期決算発表までやや材料難となるが、為替が1米ドル=97円台に下落しており、円安が加速して1米ドル=100円に接近する動きになれば株式市場は一段高の可能性もあるだろう。

  日銀は4日の金融政策決定会合で、物価上昇率2%目標を早期に実現するため新たな量的緩和策を決定した。主な内容としては、金融緩和の指標を従来の翌日物金利からマネタリーベース(資金供給量)に変更して、2012年末に138兆円だったマネタリーベースを2013年末に200兆円、2014年末には約2倍の270兆円に拡大する。さらに長期国債・ETFの保有額を2年間で2倍にするなどとした。

  新たな量的緩和策が市場の期待以上の内容だったため、ポジティブサプライズとなって市場は4日午後の結果発表直後から大きく動いた。外国為替市場では急速に円安方向に傾き、翌5日には1米ドル=97円台まで円が下落した。株式市場は急騰して、5日の取引時間中に日経平均株価が1万3200円台まで上昇する場面があった。また債券市場では10年物国債利回りが急低下して4日、5日と連日で過去最低を更新した。ただし5日には0.315%まで低下した後に、一転して0.620%まで急上昇する場面があった。

  5日発表の米3月雇用統計では、非農業部門雇用者の増加数が8万8千人にとどまり、2月改定値26万8千人から大幅に減少して市場予想も下回ったため米国株式市場が下落した。ただし為替は1米ドル=97円台後半に円が下落している。このため来週初8日の日本の株式市場では、米国株下落というマイナス要因と円安進行というプラス要因が交錯する可能性もあるだろう。

  また、日経平均株価は4日の日銀会合結果発表直前の1万2200円近辺から、翌5日の寄り付き直後の高値1万3225円までほぼ1000円上昇し、ドル・円相場は同じく1米ドル=92円台後半から5日の1米ドル=97円台後半までほぼ5円、円安方向に動いた。そして5日の株式市場では、過去最高の売買高を伴って日経平均株価の日足チャートが上ヒゲ陰線となった。このため目先的には高値警戒を意識させて、一旦は利益確定売りや揺り戻し的な動きが優勢になっても不思議ではないだろう。物色面では過熱感の強い不動産関連は買い難く、出遅れ感の強い銘柄に注目したい。

  その後は米国で4月中旬、日本で4月下旬から始まる主要企業の3月期決算発表まで重要イベントの谷間となるため、焦点は日銀の「異次元の金融緩和」の賞味期限となりそうだ。外国為替市場では円安トレンドが継続して1米ドル=100円台が視野に入ったとする見方が優勢になっているが、黒田東彦日銀総裁が会合後の記者会見で「現時点で必要と考えられるあらゆる措置を取ったと確信している」と述べているため、当面のカードは出し切った形であり、少なくとも次回4月26日の決定会合に対する期待は高まらないだろう。大方の想定通り円安方向への動きが継続すれば株式市場にとってプラス要因だが、為替が動きを止めた場合には株式市場も膠着感を強める可能性があるだろう。また5日の債券市場が乱高下したことで、金利上昇リスクが波乱要因になる可能性にも注意が必要だろう。

  海外のリスク要因としては、北朝鮮問題が波乱要因となる可能性があるだろう。15日の金日成(キムイルソン)主席の誕生日か25日の軍創建記念日に合わせたミサイル発射実験の可能性が指摘されており、一段と緊張が高まる可能性があるだろう。またユーロ圏ではキプロス問題がやや落ち着いた形が、イタリア政局問題に関しては再選挙の可能性があり、債務危機問題がいつ再燃してもおかしくない状況だ。

  そして今後、4月下旬から5月上旬にかけての国内主要企業の3月期決算発表での14年3月期見通し、安倍晋三内閣が「第3の矢」として6月中に取りまとめる予定の成長戦略、7月に予定される参院選へと好材料が繋がり、日本経済がデフレ不況から脱却すると確信するためには、やはり「第3の矢」である成長戦略の具体化や大胆な規制改革が次の焦点になりそうだ。

  来週の注目スケジュールとしては、8日の日本2月経常収支、日本3月景気ウォッチャー調査、9日の中国3月PPI・CPI、10日の中国3月貿易統計、米3月財政収支、米3月19日~20日分FOMC議事録公表、米予算教書、11日の日本2月機械受注、日本3月マネーストック、12日の米3月小売売上高、米4月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値などがあるだろう。その後は15日の中国3月主要経済統計、18日~19日のG20財務相・中央銀行総裁会議、26日の日銀金融政策決定会合と展望リポートなどが控えている。(本紙シニアアナリスト・水田雅展)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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