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【小倉正男の経済羅針盤】アベノミクスは日本経済の新機軸たりえるか
明けましておめでとうございます。2013年が日本のみならず世界にとって、輝ける年になることをささやかながら祈っております。
さて新年の焦点は、安倍ちゃんこと安倍晋三総理のアベノミクスの成否である。
前回のコラムでは、安倍総理の決意について触れた。幸いにも、その決意は静かなうちにも相当に堅固に見受けられる。
様々な艱難が待ち受けているだろうが、「経済を立て直す」という決意をブレずに持ち続けてほしいものだ。
いまは第二次安倍内閣の発足当初で、国民の多くと「蜜月」状態にある。この「蜜月」は、時の経過とともに反動や飽きなども生じるのはしごく当然のことだ。
しかし、(民主党のように)ブレて飽きられるよりは、ブレずに飽きられるほうがよいぐらいの強い気持ち(=強い諦念)で進んでいってよいのではないか。 国民は飽きやすいものだが、その決意が本物なら、立場を超えて、それを認める度量は持ち合わせているに違いない。
■アベノミクスがもたらすサプライズ
アベノミクスに対して、当初、民主党は当然として、それらを筆頭にクロウト筋など多くが否定的だった。 「日本銀行の独立性を侵すのはいかがのものか」、「おカネの価値がなくなり、悪性のインフレをもたらすのでは」、あるいは逆に「お札を刷ってもインフレは起こらない」という旧来型というか、まっとうというか。半信半疑どころか、シロウトが何を言っているのか、という否定的な議論が圧倒的だった。
安倍総理は経団連との会合で、「日銀に大胆な金融緩和を求める。大胆な金融緩和で円高を是正するのは当然のことだ」という立場を述べた。
経団連はその後豹変するが、やはり当初はアベノミクスに半信半疑だった模様だ。しかし、安倍総理は、「日銀と政策協定を結び2%のインフレ目標を設定する。日銀にもインフレ目標の達成に説明責任を持ってもらう」と言い切った。
政策協定では、日銀の説明責任も明記するというのである。これは「アベノミクスのサプライズ」というべきだろう。
■景気・雇用に責任を持て――日銀にデフレファイターへの大転換を要求
確かに、これはアベノミクスの新機軸というべきものかもしれない。
日銀は、自分たちの使命は「インフレファイター」(物価の番人)という伝統的な『呪縛』に頭が縛られていた面がないとはいえない。20年にわたり長期のデフレが続いているのに、ディスインフレ論とか、デフレは敵ではない、という旧態依然の骨盤を持っていた。
しかし、アベノミクスでは、日銀に「デフレファイター」への大変身を求め、しかも景気、さらにその結果である雇用にまで責任を持て、と180度の大転換を求めている。
以前のあの「不動産バブル」、そして「バブル崩壊」の断末魔では、当時の三重野康・日銀総裁が金融総量規制を行い、それを「平成の鬼平」とメディアの一部などが賞賛した。
しかし、バブル崩壊後の20年に及ぶに日本経済の低迷、つまり「失われた20年」をもたらした面が否定できない。
景気や雇用に責任を持ち、目配りしたものだったか。「大人の金融政策」といえるものだったのか。
不動産バブル、インフレを潰せば、(身綺麗な)自分たちの使命は終了――、確かに世の中はそれでは済まない。バブルを潰した後の景気や雇用に責任を持つのが大人の使命ではないか、ということになる。
■なんとしてもなしとげる、という決意
アベノミクスが問うているのは、そうしたことではないか。しかし、逆にアベノミクスもそうしたことを問われることになる。 アベノミクスは、「はたして大人の経済政策か――」、と。
かつて経営の神様といわれた松下幸之助は、なんとしてもなしとげる、という気持ちがカイゼンを含めて商品の新機軸を生み出すと語っている。
「なんとしても二階に上がりたい。どうしても二階に上がろう。この熱意がハシゴを思いつかせ、階段をつくりあげる。上がっても上がらなくてもと考えている人の頭からは、決してハシゴは生まれない」
安倍晋三総理のアベノミクスは、死に瀕している日本経済に新機軸を蘇らせ、立て直すことができるか。アベノミクスは、すでに昨年末に誰も予想しなかった円安、株式回復を超スピードで実現した。第一弾は上々である。
あえて呼ばせてもらうが、安倍ちゃんにはいま、なんとしてもなしとげる、という決意がひしひしと見られる。艱難や試行錯誤はあるだろうが、その決意で二階=「日本の経済を取り戻す」ハシゴをかけてほしいと思うのは少なからぬ人々の願いにほかならない。日本の命運・盛衰は、ひとえにアベノミクスの成否に託されている。(経済ジャーナリスト&評論家・小倉正男=東洋経済新報社・金融証券部長、企業情報部長などを経て現職。『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』『日本の時短革命』など著書多数)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。
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