【編集長の視点】「一粒で3度おいしい」、3度目増資見送る1部指定替え候補株が有望=浅妻昭治

2012年9月3日 14:13

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

【マーケットセンサー】

 株式上場には、かつて「一粒で3度おいしい」とする決まり文句があった。株式上場の目的の一つが、マーケットからの資金調達にあり、その資金調達を少なくとも3回は行なうチャンスがあることを指していた。

 資金調達の1回目が、新興市場へのIPO(新規株式公開)時、2回目が、新興市場から東証2部への上場時、3回目が、東証2部から東証1部への指定替え時で、これに合わせて新株式を発行し、株式売出しも実施するのが通例であった。この市場変更は、相場の活況期ならいざ知らず、相場が沈滞している局面では、投資家サイドにとっては投資判断の迷うところとなる。

 とくに投資家を苦しめるのが、東証2部から東証1部への指定替え時である。指定替え同時に新株式を発行するケースでは、株主価値が希薄化する一方、指定替えに伴って東証株価指数(TOPIX)に組み入れられ、TOPIX連動型のファンドなどが買い増す買い需要が発生するからである。

■「2部から1部へ指定替え時」に新株発行見送り企業増加

 ところが、このところ東証2部から東証1部に指定替えする銘柄は、この新株式発行・株式売出しを伴わないケースが増えているのである。8月24日に指定替えを発表したノエビアホールディングス<4928>(東1)にしろ、8月29日発表のマニー<7730>(東2)にしろ、ファイナンスを伴わないため株価は好感高し、ノエビアHDは、短期2割高して年初来高値を更新した。

 今年2012年に東証2部から1部に指定替えされた銘柄は、19銘柄にのぼるが、このうちファイナンス実施銘柄は、わずか3銘柄にとどまっている。指定替え銘柄の8割強の銘柄が、みすみす資金調達のチャンスを見送ったことになるが、投資家サイドからすれば、素直に需給好転を先取りできて大歓迎となる。

 この指定替え銘柄は、全般相場が軟調に推移し日経平均株価が、8900円台を割る8月後半相場で、逆行高セクターとして人気化しており、このトレンドに乗り2部銘柄から次の指定替え銘柄をセレクトする先取りの動きも強まった。

 9月相場も、8月31日にバーナンキFRB(米連邦準備理事会)議長のジャクソンホール講演のイベントは通過したものの、追加金融緩和策の動向は、今週末発表予定の米雇用統計、9月12~13日開催のFMOC(米連邦公開市場委員会)待ちなどと先送りとなり、さらに中国の景気動向も気懸かりとしてお様子見が続く可能性があり、指定替え銘柄探しは、少なくとも9月前半相場で引き続き有望な相場テーマとしてトライしてみる価値はありそうだ。(執筆者:浅妻昭治 株式評論家・日本インタビュ新聞 編集長)

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