米マイクロン、エルピーダの取得と支援を目的とするスポンサー契約に調印

2012年7月3日 12:06

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 米マイクロン・テクノロジーと更生会社エルピーダメモリおよび子会社秋田エルピーダメモリの管財人は2日、マイクロンがエルピーダの取得および支援を目的とするスポンサー契約に調印したことを発表した。同契約は、東京地方裁判所の管轄下におけるエルピーダの会社更生手続下において結ばれたものであり、東京地方裁判所の許可を得たもの。同スポンサー契約にしたがって総額2000億円の支援金を前提に、一定の手続費用等を控除して、更生担保権者・更生債権者への支払いが行われることになる。

 具体的には、スポンサー契約の実行時に、マイクロンは600億円の現金をもってエルピーダメモリへの100%出資を行う。その後、エルピーダメモリはマイクロンの子会社として、マイクロンに対して行うファンダリ(製造受託)事業等を通じて、2019年までにキャッシュフロー1400億円をマイクロンの支払いにより得る。これらの支払いを原資とする更生計画に基づく債権者への弁済により、残りのエルピーダに対する更生債権の支払い義務は更生手続に基づき免除される。

 マイクロンは、スポンサー契約において、一定の条件のもと、スポンサー契約締結直後から、エルピーダの設備投資資金に対して支援を行うこと、エルピーダの生産と従業員を維持することに合意している。

 また、マイクロンは同日、スポンサー契約に関連し、マイクロンとパワーチップ・テクノロジー社との別途の合意により、同社グループが保有するレックスチップ・エレクトロニクス社の株式約24%を取得することも併せて発表している。

 エルピーダの資産には、300mmウエハに対応した広島工場、同じく300mmウエハに対応した工場を持つレックスチップの株式約65%、そして秋田エルピーダメモリ株式会社における後工程の事業を中心とする資産が含まれる。マイクロングループは、パワーチップから取得するレックスチップ株式と併せて同社の発行済み株式の約89%を有することになる。エルピーダとレックスチップの工場を合わせれば、月産20万枚以上の300mmウエハ処理能力となり、これはDRAM、NAND、NORを合わせた現在のマイクロンの生産能力を50%増強することとなる。

 エルピーダは高い技術力を背景とし、携帯電話やタブレットPC向けモバイルDRAMで高いプレゼンスを築いている。一方マイクロンは、ネットワーキングやサーバー向けの企業向けDRAMソリューション、およびNAND/NORフラッシュメモリの幅広い製品ポートフォリオの提供でリーディングポジションを獲得している。両社の補完的製品ポートフォリオにより、DRAM市場におけるマイクロンのポジションのさらなる強化、顧客へのさらに質の高い完全なソリューションの提供が可能となる。

 マイクロンのマーク・ダーカンCEOは、「我々は業界をリードするメモリ専門会社を創っていく。今回の合意は、研究開発活動の強化と生産能力の拡大、メモリのコア市場へのアクセスの向上、DRAMとNAND/NORフラッシュメモリのバランスを取るための生産能力拡大を実現し、その帰結として現在のマイクロンとエルピーダの顧客へ大きな利便性をもたらすことにより、今後統合される両社のメモリ市場における地位の向上に寄与する」と述べている。

 なお、今回の契約の実行までには、債権者、東京地方裁判所および各国の競争当局による承認等を含む一定の条件の充足が必要となる。エルピーダの更生計画案は現在2012年8月に東京地方裁判所へ提出される計画となっているが、これらの手続を経て、2013年前半に契約を実行することを見込んでいるという。なお、マイクロンは、パワーチップが所有するレックスチップ株式を、スポンサー契約の実行と同時に取得する予定。

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