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日本マニファクチャリングサービス:12年3月期はTKRを子会社化し大幅増収
■最終利益は震災の影響があったものの、負ののれんにより大幅増益となる
日本マニファクチャリングサービス(以下nms) <2162> (JQ)は21日、12年3月期決算説明会を開催した。
12年3月期連結業績は、売上高318億32百万円(前年同期比54.0%増)、営業利益2億51百万円(同58.3%減)、経常利益2億66百万円(同54.4%減)、純利益13億56百万円(同49.4%増)であった。
売上に関しては、大幅増収となったが、これは11年7月28日にTKRを子会社化したことにより、その売上高約100億円が加算された影響による。
利益面に関しては、大幅増収効果により、売上総利益は35億83百万円(同31.1%増)と大幅増益となったが、販管費が33億31百万円(同56.4%増)と大幅に伸びたことにより、営業利益、経常利益が大幅な減益となった。
しかし最終利益に関しては、震災の影響があったものの、負ののれん発生益11億40百万円が特別利益として計上されたことにより、大幅増益で着地。
■営業利益の減益は前期に限られたもの
営業利益の減少要因は、東日本による影響で1億99百万円減少、タイの大洪水の影響で37百万円減少、将来への事業投資として海外投資1億17百万円、TKRの統合費用30百万円と災害の被害と積極的投資合わせて3億83百万円が減益要因となっているが、災害は一過性のものであり、積極投資は今後の増益要因となることから営業利益の減益は前期に限られたものといえる。
一方、IS事業では新規案件117件を獲得し、32百万円の増益要因となっている。配当に関しては、普通配300円に、TKRの経営統合記念配として100円を加え、400円と実質増配であった。
■主力のIS事業は、請負力による圧倒的な差別優位性を持つ
事業別の概況は、主力のIS(インラインソリューション)事業は、同業他社と比較して、請負力による圧倒的な差別優位性を持っている。EMS(電子機器受託生産)企業を傘下に収め、基板実装から製品組立にいたる国内外生産体制を構築しているため、ものづくり面での競争優位性が評価され、リーマンショック後の在籍数において最高の2,796人となっている。震災を機に、請負企業を見直すところが出てきたことから、同社に委託する企業が増え、前述のように新規案件117件を獲得した。また、海外での製造派遣、製造請負といったサービスメニューを持っていて、他社との完全差別化を図るため、中基衆合、nmsベトナムと連携し、新規案件獲得に向けた営業活動を精力的に進めている。売上高は93億71百万円(同10.0%増)、営業利益9億1百万円(同0.1%減)となった。
■MS事業は震災後2ヶ月間の稼動停滞を挽回するも若干の減収減益
MS事業 (マニュファクチャリングソリューション)は、受託型の修理を中心に行ってきた。前期は、東日本大震災で主力テックである岩手テックの被災により、移転を余儀なくされた。震災後2ヶ月間ほとんど稼動が出来ず、ゴールデンウィークからようやく再稼動した。そのため、修理台数の減少及び新規案件受注の目標未達により前期比で減収減益となった。その結果、売上高29億3百万円(同8.5%減)、営業利益4億78百万円(同4.2%減)。尚、MS事業は、今期よりCS(カスタマーサービス)事業として、事業名を変更している。
■GE事業は、来期以降日本、中国合わせた技術者派遣の拡大に注力
GE事業 (グローバルエンジニアリング事業)は、日本人技術者派遣のほか、中国法人日華材創と連携して中国人技術者の日本メーカーへ派遣する同社グループ特有のビジネスモデルを再度ブラッシュアップし、顧客のニーズに応えているが、まだ、リーマンショックの影響を払拭できていないのが現状である。来期以降は、中国国内での技術者派遣を出来る中国の会社とのコラボレーションを図って、日本、中国合わせた技術者派遣の拡大に注力する計画。売上高は6億28百万円(同8.9%減)、営業利益57百万円(同5.6%増)となった。
■EMS事業はTKRとの経営統合により前期比で大幅な売上高増
EMS事業(エレクトロニクスマニファクチャリングサービス事業)は、本体の事業ではなく、志摩電子工業という一昨年7月に傘下に収めた会社と昨年の7月に経営統合を果たしたTKRというこの2グループから構成されている。売上高は、TKRとの経営統合により前期比で大幅な売上高増となったが、東日本大震災に続き、タイで起きた大規模洪水により部材調達面で影響を受けた。その結果、売上高189億50百万円(同128.4%増)となったが、災害の影響で1億65百万円ほどの利益悪化が出たため、営業利益15百万円となった。
■総資産187億10百万円(前年同期比154.1%増)と大幅増
バランスシートは、総資産187億10百万円(同154.1%増)と大幅増となっている。これは過去2年間において2回のM&Aを行ったことによる。内訳は、流動資産130億36百万円(同100.3%増)、固定資産56億72百万円(同564.2%増)となっている。
総負債は128億70百万円(同147.9%増).内訳は102億29百万円(同141.7%増)、固定負債26億41百万円(同175.1%増)。
純資産は58億39百万円(同169.2%増)。
労働集約型のビジネスモデルであったので、バランスシートが小さいのが特徴であったが、EMSを傘下に収めていく中で、総資産が大幅に増加した。その結果、総資産で2.5倍、純資産で2.7倍に膨らんだ。また、2回にわたるファイナンスは全て金融機関からの借入れとなり、Net Debt約21億円となっている。
■今期13年3月期売上も大幅増収、営業利益10億円を見込む
今期13年3月期連結業績予想については、今期より志摩グループが12月決算となるため、志摩日本、志摩香港の損益計上が9か月分となる。TKRの期間損益の計上は12か月分となる。そのため、売上高450億円(前期比41.4%増)、営業利益10億円(同296.8%増)、経常利益10億50百万円(同294.7%増)、純利益5億円(同63.1%減)と大幅増収を見込んでいる。最終利益の減益は、前期にあった負ののれん発生益が消える影響であり、実態は大幅増収増益。
事業別の売上予想は、IS事業111億50百万円(前期比19.0%増)、CS事業31億円(同6.8%増)、GE事業7億50百万円(同19.4%増)、EMS事業300億円(同58.3%増)となっている。
海外売上費率は、11年3月期35.5%、12年3月期42.2%となり、今期13年3月期は52.2%を見込んでいる。
営業利益に関しては、大幅増益を見込んでいるが、その要因として、TKRの営業損益改善により4億38百万円増益、志摩の営業損益改善で47百万円の増益、nmsの増収効果により5億12百万円の増益が見込まれている。一方で、海外支援によるコスト増で58百万円、業容拡大に伴う人件費増で1億7百万円、採用関連コスト23百万円、システム投資関連コスト37百万円、その他24百万円が経費として増加するが、結果的には前期比7億48百万円の大幅増益を見込む。
■代表取締役社長小野文明氏 業界の現況と今後の戦略を語る
今期業績予想の説明後、代表取締役社長小野文明氏より製造アウトソーシング業界の現況と今後の戦略についての説明が行われた。
製造アウトソーシング業界の経営環境については、製造業の海外移転が加速している状況で、今後も継続して海外移転が進むと予想される。発表されている外部機関のデータによると2010年の海外現地生産比率は25.1%であったが、2015年度の見通しは29.7%となっている。原因は米ドルの為替推移が恒常的な円高となっていることと、基幹部品のサプライチェーンが震災により寸断された影響もあるが、海外市場が国内市場より伸びているため、海外で生産拠点を設けたほうが今後の事業展開で有利と判断しているため。
その様な状況下、国内の製造アウトソーシング業界の復興・復旧特需は昨年の11月、12月がピークで、今年1月になって、減産、縮小、解約が急増し、震災特需で売上を伸ばしてきた国内の同業者が、非常に苦しんでいる。また、これまで、国内では高付加価値製品の生産が行われ、汎用品は海外の工場で生産される傾向にあったが、現状は変化してきて、高付加価値製品も海外で生産される状況となってきている。最近になって、日本を代表する自動車メーカーが、中国での生産に切替えている。
■請負力はメーカーが業者を選定する際の最も大きな根拠
国内の製造アウトソーシング業界で、受注が増えているのは、製造サービスの高度化と品質力を持ち、しかも請負力があるところに限定されてきている。中でも、請負力は、メーカーが業者を選定する際の最も大きな根拠となっている。一方、海外においては、以前は、人材提供力が求められ、500人投入して500人分の紹介料を得るビジネスモデルとなっていた。しかし、現在中国では最低賃金が上昇しているため、「ただ人を集めればよい」という時代でもなくなってきている。現在中国当局が一番問題としているのは、労働者の待遇改善である。原因は、職場の待遇不満で、ストライキ、デモが多発しているため。この問題を解決するために、待遇の改善が必要となってきている。
同社は、国内、海外で請負事業を行ってきて、これまで集めた事例をもとにマニュアルを持っているため、既に中国語・ベトナム語にも翻訳して現地でマニュアルとして活用している。そのため、人材提供力、請負力、コンプライス体制、製造サービスの高度化への対応、ものづくり品質といった企業の要望には対応済みといえる。
■国内の製造派遣の場合、2012年問題が発生
また、国内の製造派遣の場合、3年以上同じ現場で働くことを禁止しているため、2012年問題が発生している。08年のリーマンショックでの減産に伴い、自然に製造派遣のクーリングオフ期間が発生したが、その後生産の回復となり、再度製造派遣を契約したことから、2012年度に契約満了の期限が発生し、抵触日問題が発生している。
企業の選択肢としては、請負、直接雇用の2つの選択があるが、直接雇用では、コスト増に加え、一時的な増産に対応できないこともあり、請負を選択する可能性が高いといえる。同社にとっては、追風である。
国内事業では、海外投資源泉を確保するために、サービス品質の向上、競争優位性の確立により、収益性の向上を図る。既に、「製造業界グローバル社会に対応する課題と対策セミナー」を4月に東京と大阪で開催し、新規顧客を開拓している。
■事業戦略コンセプトである「neoEMS」のグローバル展開を加速
以上のことを実現するために、今期の戦略では、nms、志摩電子工業、TKRによるグループ営業の機能を強化して、事業戦略コンセプトである「neoEMS」のグローバル展開を加速していく。具体的には、(1)国内での製造請負・製造派遣事業と修理事業を今まで以上に強化・拡充する、(2)中国・ベトナムにおける製造派遣、製造請負事業を拡大する、(3)グループ各社で展開するEMS事業とnmsの人材ビジネスのコラボレーションによる「neoEMS」をグローバルに展開する、(4)グローバルな「neoEMS」企業を目指すために、戦略企画部、営業開発部を統括する営業戦略本部を設け、組織体制を整備するとしている。
修理事業のビジネスモデルを拡大し、発展させBtoBからBtoCまでビジネス領域を拡大する。全国の集中修理拠点、フィールドサービス(出張修理)網を活かしていく。そのため、今期より、MS事業からCS事業へ名称を変更している。
■フィールドサービスがこれから利益の源泉
「成長のプロセスの中において、フィールドサービスがこれから利益の源泉になってくると思っています。今までは修理の受託や製造の受託がメインでしたが、メーカー企業と出張修理の契約が既にスタートしています。また大手家電の家電量販店との修理受託も目指しています。これからサービスでの提携が出来るところが出てくると思います。そのためCS事業のフィールドを広げ、事業規模を拡大してビジネスに結び付けていこうと考えています」(小野社長)。
CS事業では、フィールドサービスネットワークの構築、CS事業専門のWebサイトの構築により、営業機会の増大を図る。また、家電量販店からも受注することで、売上高31億円(同6.7%増)を見込んでいる。
■請負大規模事業所担当のプロダクトマネジメントグループを作る
人材ビジネスの製造請負・派遣事業では、モノづくり力強化、営業機能強化の組織体制を構築するため、人的リソースの最適配分を実施し、現場密着型の大規模事業所担当のプロダクトマネジメントグループを作り、請負品質のさらなる向上や顧客満足度を向上させ、既存大規模事業において安定的な業績を拡大する。一方で、営業機能の強化により、顧客開拓に注力できる組織体制を構築し、各支店で新規顧客の開拓と共に既存顧客の営業にも注力する。
プロダクトマネジメントグループに関しては、「従来では、IS事業の各支店が請負大規模事業所の管理を行うとともに営業活動等も行ってきました。これを今回整理し、請負大規模事業所は本社直轄のプロダクトマネジメントグループが管理することとしました。従来の支店は、新規顧客開拓と既存の顧客営業に注力します。今まで請負大規模事業所を担当していた各支店から大規模事業所を全部本社直轄にすることで、各支店の営業力を更に高めることを狙うと同時に請負大規模事業所のモノづくり力向上を図ってまいります。」(小野社長)。
■GE事業は、中国人技術者派遣事業の再構築とTKRとの協業等で事業拡大
GE事業では、中国人技術者派遣事業の再構築とTKRとの協業等により事業を拡大し、売上高7億50百万円(同19.4%増)を見込む。
「GE事業では、国内において、日本人、中国人技術者の派遣を行っています。現在は、中国国内において技術者の需要が高まっておりますので、中基衆合と連携し、中国国内の技術者派遣も開始する予定です。日系の企業では、日本語が出来ることが必須条件となります。私達の中国政府系機関の採用ネットワークと大学における独自開発した教育プログラム「nms2年間プログラム」を展開しながら事業を展開してまいります。」(小野社長)。
■志摩電子工業を一昨年買収したことで人材交流が始まる
国内のEMS事業においては、志摩電子工業、TKRとの経営統合により製造サービス領域を拡大し、販売と開発を強化し、自動車関連産業、美容機器産業、遊技機器産業へ参入することで、今期売上高65億円を計画している。
「志摩電子工業を一昨年買収したことで、TKRの人材が志摩に異動、またはnmsに異動したり、人材交流を始めています。彼らのもっている力を使って一緒に営業をやっています」(小野社長)。
■海外のEMS事業では、nmsの協業体制を確立し、事業規模を拡大
一方、海外のEMS事業では、nmsの協業体制を確立し、事業規模を拡大することで、235億円(同75.0%増)と大幅増収を見込んでいる。
「現在無錫では300社以上の日系メーカーが活動しています。上海はそれ以上です。何故私が無錫に注目したかというと、この300社以上の日系メーカーの中で、我々が人を共有財産として持っていこうと考えているからです。例えばある企業では現場だけで5000名の社員を抱えています。これが無錫で一番大きい企業です。他でも2000名規模の工場がほとんどです。このような工場で生産が落ちてくると、すぐ人を切ります。そしてすぐ新しい人を採用します。企業が採用して、企業が解雇したら、その企業には二度と解雇した人たちは戻ってきません。したがって、解雇する際も200名切りたいのに、100名で止めておくこともあります。これを繰り返しているため、非常にロスをしています。我々が入ると、我々の社員を送り込むわけですから、その現場で必要とならなくなったら、他の現場に送り込むことで対応できます。当社に委託すれば、生産性のアップに繋がります。当社で採用し、教育し、多能工となった人達は、仕事が出来ることから様々な現場で必要とされ、給料も上っていきます。当社にとっても、社員にとっても、企業にとってもウイン、ウインの関係が構築できます。こういうことを狙って動いています」(小野社長)と海外戦略について語った。
志摩電子工業、TKRを買収したことから、事業領域、営業エリアも拡大したことに加え、無錫では新たに5社と取引を開始し、志摩の深セン工場に派遣を実施するなど新たな動きが出ている。
同社は、製造アウトソーシングでアジアNo.1を目指している。そのために、海外のEMSの拡大、中国・ベトナムにおける製造派遣・製造請負の拡大、国内修理事業の拡大を実現することで、2020年3月期には売上高1,000億円超を目標としている。また、グループ価値の最大化のために、将来的には中国においては、香港株式市場のメインボードに上場、東南アジアではシンガポール株式市場のカタリストへの上場、日本では東京証券取引所市場1部への上場を計画している。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。
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