【小売(家電量販店)特集(1)】特需反動減で厳しい状況、収益改善期待

2012年4月7日 15:32

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

家電量販店業界では、10年から11年にかけて、家電エコポイント制度に伴う特需や、地上デジタル放送への完全移行(11年7月24日、東北3県を除く)に伴う特需の恩恵を受けた。

家電量販店業界では、10年から11年にかけて、家電エコポイント制度に伴う特需や、地上デジタル放送への完全移行(11年7月24日、東北3県を除く)に伴う特需の恩恵を受けた。[写真拡大]

■12年4月~6月期をボトムとして収益改善期待

  家電量販店業界では、10年から11年にかけて、家電エコポイント制度に伴う特需や、地上デジタル放送への完全移行(11年7月24日、東北3県を除く)に伴う特需の恩恵を受けた。

  しかし11年8月以降には、こうした特需の反動減に加えて、デジタル家電の販売価格下落の影響などで厳しい状況が続いている。東日本大震災で延期されていた宮城、岩手、福島の東北3県についても、12年3月末で地上デジタル放送への完全移行を完了した。

  家電量販店主要5社の月次売上動向(POSデータに基づく速報値ベース)を見ると、11年5月~7月は、地デジ化特需が追い風となり、全店売上は概ね前年同月比2ケタ増収になった。しかし11年8月~11月は、地デジ化特需の反動減で、全店売上は概ね前年同月比3割~6割減収という厳しい状況になった。

  特に11年11月は、前年(10年11月)に家電エコポイント制度変更に伴う駆け込み需要が発生していたため、前年同月比で過去最大の落ち込み幅となった。ただし11年12月は、前年(10年12月)がエコポイント制度変更に伴う駆け込み需要の反動で大幅に落ち込んでいたため、全店売上が前年同月比で増収となる企業もあった。

  足元の12年1月~2月も、薄型テレビやブルーレイ・DVD関連の販売不振が続き、全店売上は概ね前年同月比1割~2割減収となっている。ただし、スマートフォン、省エネエアコン、白物家電などが堅調で、減少率は11年8月~11月に比べて縮小している。

  主要5社の足元の全店売上(前年比)を見ると、エディオン <2730> (東1)は1月が87.6%、2月が82.4%、ビックカメラ <3048> (東1)は1月が87.6%、2月が87.3%、コジマ <7513> (東1)は1月が85.3%、2月が77.4%、ケーズホールディングス <8282> (東1)は1月が100.4%、2月が96.6%、ヤマダ電機 <9831> (東1)は1月が88.4%、2月が81.4%となっている。

  11年度通期の主要各社の連結業績は、純利益については特別損失一巡などで増益見通しの企業もあるが、概ね減収、営業減益の見通しであり、従来の会社見通しに対して下振れの可能性も高まっている。コジマ <7513> (東1)は3月30日に、12年3月期通期の連結業績見通しの下方修正を発表した。

  地デジ化特需の反動による薄型テレビの売上減少は、前年同月比で見れば少なくとも12年7月まで続くことになる。さらに通年で見ても12年は、11年に比べて1割程度減少するという見方が優勢になっている。

  しかし前年同月比で見れば、12年8月以降には、地デジ化特需の反動減の影響がほぼ一巡する可能性もあるだろう。そして一方では、スマートフォンやタブレット端末の人気持続が期待されるだろう。

  さらに、電力不足や電気料金値上げに対する企業や消費者の自己防衛策として、省エネ家電製品や太陽光発電システム関連製品の需要拡大が期待されるだろう。したがって家電量販店主要各社の業績は、四半期ベースで見れば12年4月~6月期をボトムとして、改善に向かうことが期待されるだろう。

  家電量販店業界は商品面での差別化が難しいため、バイイングパワーや効率的オペレーションなどによる価格競争力の強化が、企業間競争の優劣を決するという特徴がある。そして大量出店・多店舗展開の加速、店舗の大型化、店舗運営の効率化、中小チェーンに対するM&Aなどによって、大手による寡占化が進んできた。しかし依然として競争は激しく、残存者利益が得られる段階に至っていない。

 今後は高齢者の増加などで、家電製品に対するニーズや購入行動の変化が予想されるため、さまざまな商圏に適した店舗づくり・出店戦略、地域密着型販売戦略なども課題となりそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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