ANK療法はATLの第一治療として大きな可能性を示す リンパ球バンクがANK免疫細胞療法のための培養センターを提供

プレスリリース発表元企業:リンパ球バンク株式会社

配信日時: 2024-09-30 09:30:00

免疫細胞の培養法別FCM分類

各々の治療法で培養した細胞傷害活性比較

NK細胞を用いるがん免疫細胞療法の普及を推進するリンパ球バンク株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:原田 広太郎)が運営する細胞培養センターを利用し、ANK自己リンパ球免疫療法(以下、ANK免疫細胞療法)の臨床および細胞培養を実施する医師である東洞院クリニック・院長 大久保 祐司医師、勅使河原 計介医学博士らが成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)の患者5例ついて、ANK免疫細胞療法を行った後の臨床経過について論文投稿しMDPIに掲載されました。
ANK免疫細胞療法を第一治療とした4例は完全寛解後、5年間の生存が確認され、ATLの治療を必要としませんでした。標準治療が確立していないATLでこの実績は目を見張るものがあります。
加えて注目したいのは、治療したATL患者体内のNK細胞の傷害活性(以下、NK活性)を正常人よりも高いレベルまで向上させていることです。がん患者体内のNK活性の高低はがんの進行や予後を左右する重要な鍵を握る可能性があると考えられています。


【論文】
Yuji Okubo ,Sho Nagai ,Yuta Katayama ,Kunihiro Kitamura ,Kazuhisa Hiwaki and Keisuke Teshigawara. Reports 2024, 7, 80. doi.org/10.3390/reports7030080
Long-Term Survival of Patients with Adult T-Cell Leukemia/Lymphoma Treated with Amplified Natural Killer Cell Therapy


成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)は、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)に長期間潜伏感染した後、その約5%に発病します。その病態は、低悪性度型または高悪性度の進行型の白血病を誘発します。
特に進行型は、多剤併用化学療法に抵抗性があり、また一方、低悪性度型はしばしば高悪性度型に転換します。そして、最も低悪性度型であるくすぶり型であっても、平均生存期間は55ヵ月です。
私たちは、5例のATL患者について、ANK療法を行った後の臨床経過について追跡調査しました。
初回の治療法としてANK療法を受けた4例は、完全寛解に達成し、5年以上の長期生存が確認されました。
残る1例は、急性増悪のため、初回治療としては多剤併用化学療法を受け、その2ヵ月後に再発しました。その後、放射線治療とANK療法を併用して受け、6年以上生存しました。
特筆すべきは、ANK療法がATL患者のNK活性を正常人よりも高いレベルまで向上させていることです。
ANK療法は、ATLの第一治療の選択肢として大きな可能性を秘めています。
(東洞院クリニック 院長 大久保 祐司先生)


■ATL「成人T細胞白血病」とは
ATL「成人T細胞白血病」は、HTLV-1型ウイルスの感染者のうち、生涯で数%が発症します。抗がん剤が奏効しにくく、奏効した場合も直ちに再燃し、アグレッシブATLの余命中央値は13ヶ月と言われています。くすぶり型など症状の進行と改善を繰り返すようなケースでも結局は急性転化し、急性転化後の余命中央値は概ね1年ほどです。骨髄移植が行われることもありますが、副作用が激しいため高齢者は治療できません。一方、患者の多くが高齢者です。標準治療が確立しているとは言えず、重篤な病態になるまで積極的な治療を行わないガイドラインがある難治性の高い疾病です。なお、ATL治療薬として承認取得したモガムリズマブがありますが激しい副作用を伴います。
その点、一過性の発熱等はあるものの、強い副作用(副反応)が見られず、体力的に高齢者でも治療可能なANK免疫細胞療法がATLの標準治療となる可能性を示したこの研究報告は、患者さんやウイルスキャリアの方々にとって朗報です。


■免疫細胞療法で白血病は治療できないと言われている理由
一般的に、免疫細胞療法では白血病を治療できないと言われています。理由は、白血病の場合、培養のために血液から免疫細胞を採取した時点でがん細胞が混入します。培養中に混入がん細胞が増殖し、それを患者さんに戻すことに問題があるためです。研究目的で、混入がん細胞を洗浄除去した後や、モガムリズマブ等の薬剤治療による寛解後に免疫細胞を培養するケース。あるいは承認取得したものとして混入がん細胞を除去して培養が行われるCAR-T療法などがありますが、前処理を行わず臨床上の実用レベルで白血病を治療できる免疫細胞療法はANK免疫細胞療法以外には見当たりません。

ANK免疫細胞療法でも採取した血液に混入するがん細胞があまりに多いと培養は無理ですが、混入がん細胞があるレベル以下であれば、培養中ATL細胞をPCR検査で検出できないレベルに減少させることが別の論文で報告されています。

Teshigawara K, Nagai S, Bai G, Okubo Y, Chagan-Yasutan H, Hattori T. MDPI Reports 1(2):13, 2018. Doi.10.3390/reports1020013

Case report
Successful Amplified-Natural-Killer Cell (ANK) Therapy Administered to a Patient with Smoldering Adult T-Cell Leukemia in Acute Crisis


■NK細胞の傷害活性
NK細胞ががん細胞を傷害する効率(スピード)を測定するもの。NK細胞と標的がん細胞を一定条件の下で一緒に培養し戦わせ、所定時間内に傷害された標的がん細胞を数え傷害率を求めます。がん患者を治療後に、体内のNK活性が高ければ予後はよく、低ければがんは進行し予後不良になると考えられています。


■ANK自己リンパ球免疫療法(ANK免疫細胞療法)
患者さんご自身の血液を5~8リットル、成分採血等に用いる装置で体外循環させ、血液に含まれるリンパ球を選別して、採り出します。その中のNK細胞を高度に活性化すると同時に選択的に増殖させます。高度に活性化されたNK細胞は、がん細胞を傷害する爆弾のような小胞体を細胞内に大量に抱えるため、細胞分裂の際に爆弾が破裂し、自爆しやすい傾向があります。
そのため、臨床上の実用として意味のあるレベルの活性化と増殖の両立は難しいとされてきましたが、京都大学の研究者2名がこの難題をクリアし、活性と増殖、両方の意味を込めて増強された=Amplified NK(ANK)と名付けました。この治療で進行がんを克服した患者と、研究者らが、2001年にリンパ球バンク株式会社を創業しました。
治療では、培養されたANK細胞を点滴で体内に戻します。がん細胞を攻撃するのが本職のNK細胞の機能をそのままに、直接がん細胞を傷害する上、大量の免疫刺激物質を放出することで、体内のNK細胞の活性化も促します。この時放出される免疫刺激物質はほとんどが発熱を誘導する性質を持つため、点滴後一過性ですが悪寒や高熱などの副反応が出ます。

画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/411308/LL_img_411308_1.jpg
免疫細胞の培養法別FCM分類

■免疫細胞療法の背景と特徴
強力な免疫刺激によりがんが消失することがある、あるいは免疫抑制剤の大量投与によりがんが異常増殖する、といった様々な現象から、私たちの体内にはがん細胞を強力に傷害する免疫細胞が存在すると考えられてきました。1970年代、T細胞や樹状細胞、マクロファージ等は、既に知られていましたが、がん細胞への反応はそれ程でもなく、もっと強い細胞の探索が精力的に行われた結果、活性が高ければどのようながん細胞でも出会ったその場で直ちに攻撃するリンパ球が見つかり、ナチュラルキラー(NK)細胞と名付けられました。がん細胞を認識する専用センサーを多種大量に備え攻撃力も強く、体内の存在数も1,000億個レベルと非常に多い腫瘍免疫の主役が発見されたのです。
今日では、がん患者体内のNK細胞は活性が低下しており、がん細胞の増殖を許してしまっていることが知られています。

米国国立衛生研究所(NIH)では、数十リットルという大量の血液からNK細胞を体外に採り出し、強く刺激してから患者体内に戻す免疫細胞療法の大規模臨床試験を実施、抗がん剤が奏効しないがん患者数百名全員に何らかの効果を示しました。3日以上培養すると増殖に伴って活性の高いNK細胞が自爆を起こしやすくなるため、培養期間を3日間に制限しました。また、大量の活性化されたNK細胞を体内に戻すと、大きな腫瘍が壊死を起こし、腫瘍内部のカリウム等が大量に放出され、心停止などのリスクがありました。そのため、治療はICUを占拠し体液コントロールを行いながら実施され、非現実的なコストがかかり実用化はできませんでした。

NK細胞は培養が非常に難しく、活性を高めないと役に立ちませんが、増殖が始まると強い攻撃力ゆえに自爆を起こし易いという問題があります。京都大学の研究者二人が、米国法の限界を超えて、NK細胞の活性化と増殖を同時に実現するANK自己リンパ球免疫療法(ANK免疫細胞療法)を開発し、小規模な臨床試験を経て一般診療を始めました。ANK免疫細胞療法1クールは、NK活性においても、NK細胞数においてもNIH法を上回るため、一度に体内に戻すと大きな腫瘍が壊死を起こすリスクがあります。そこで、培養細胞は凍結保管され、1クールを12回に分け融解・再培養を行いながら、原則、週2回ずつに分割投与することで、クリニックでの通院治療が可能な安全性を確保しました。
但し、今回論文発表されたケースでは患者の状態等も考慮し、通常投与量の半分の細胞数に分割し治療を行ったため、論文に記載のある1回当たりの投与細胞数は標準量の半分となっています。

画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/411308/LL_img_411308_2.jpg
各々の治療法で培養した細胞傷害活性比較

国内で広く普及している「一般法」による免疫細胞療法では点滴後に若干の微熱等を除き強い免疫副反応は見られませんが、ANK免疫細胞療法は、強い免疫刺激の結果として、40度前後の発熱を伴います。なお、近年、遺伝子改変を伴うCAR-T療法が承認取得し保険適応となっていますが治療対象となるがんの種類が限られ、また激しい副作用を伴います。

標準治療では、がん細胞が飛び散ってしまうと一般に予後不良です。体内に分散するがん細胞を追いかけ、一つずつ仕留めるNK細胞をがん治療に活用することは、進行がんの治療において重要な鍵を握ると考えられています。


■リンパ球バンク株式会社の概要
○本社 : 東京都品川区西五反田1-25-1 KANOビル8階
○代表者 : 代表取締役社長 原田 広太郎
○資本金 : 67百万円
○設立 : 2001年1月 京都大学発ベンチャーとして設立
○事業内容: ANK自己リンパ球免疫療法総合支援サービス
○URL : https://www.lymphocyte-bank.co.jp/
○企業理念
リンパ球バンク株式会社は、ANK免疫細胞療法を開発した医師と治療を受けた患者を中心に創業され、経営している企業です。
一人でも多くのがん患者にとって治療の選択肢が広がる状況を築いていきます。
科学的根拠に基づいたオーソドックスな考え方で治療システムを開発・提案します。
高度で複雑な生命システムを謙虚にみつめ、細胞加工技術や免疫制御技術を過信せず、細胞本来がもつ能力をありのまま引き出すことを工夫します。
がんの予防や治療における免疫の重要性への認知を広めることで、免疫細胞療法が社会システムに組み込まれ、より多くの患者が治療を受けられる機会を広げます。


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