愛知県豊橋市立八町小学校の英語イマージョン授業を視察した原田教授(早稲田大学)&林博士(UCLA)の対談記事を公開

プレスリリース発表元企業:ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所

配信日時: 2024-09-11 11:30:00

早稲田大学 教育・総合科学学術院 原田哲男教授(左)とカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)林(高倉)あさこ 博士(右)

八町小の研究授業

グループワーク

ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所(所在地:東京都新宿区、以下:IBS)は、グローバル化社会における幼児期からの英語教育の有効性や重要性に関する情報を、IBSのホームページ上で定期的に発信しています。

今回は、今年の6月に愛知県豊橋市立八町小学校(以下:八町小)での英語イマージョン教育の授業を視察した早稲田大学 原田哲男教授、カリフォルニア大学ロサンゼルス校 林(高倉)あさこ博士の対談に関する記事を公開しました。

画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/409610/LL_img_409610_1.png
早稲田大学 教育・総合科学学術院 原田哲男教授(左)とカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)林(高倉)あさこ 博士(右)

<記事のまとめ>
●国内外のイマージョン教育では、学習対象の言語を自発的に使うよう促すことが課題になっている。一方、八町小では、日本語使用を尊重しながら英語を使って教科学習を深めるトランスランゲージングの効果が見られる。

●八町小児童の英語使用をさらに促すためには、英語を使えるようなコンテクストやタスクを効果的につくり出すことが不可欠。言語習得や異文化理解の観点から、日本語のほうが強い児童と英語のほうが強い児童が一緒に学ぶ米国の双方向イマージョン教育は理想的である。

●認知能力が高くなってくる3・4年生以降は、英語力が自分の知的レベルまで上がっていなくて「できない」という気持ちになった児童をどのようにサポートするかが課題。八町小は、高学年の児童も授業に引きつけられている様子が見られるため、公立学校のイマージョン教育にとって多くの知見を提供すると考えられる。


(以下、対談内容の一部を抜粋)
■子どもたちの母語を尊重しながら英語使用を促すためにできること
原田:
イマージョン教育で英語使用を促すタスクには、1)コミュニケーション・ギャップがあること、2)言語学習だけではなく教科学習としても意味があること、3)他教科も含めた既習の知識・技能などを使って達成できること、4)言語学習だけではなく教科学習の観点からも成果を評価できることが大切です 。今回の研究授業では、グループワークを中心としたタスクによって英語使用が促進されていましたが(資料1・2)、この4つの観点から見ても、良いタスクだと思いました。
また、教師の発問に答えさせるだけではなく、発表した児童に対して質問させることで、児童同士のやりとりで英語を使う機会につながっていた点(資料3)は素晴らしかったと思います。いまの5年生が卒業するまでの1年半で、日本語の使用を尊重しながらも、目標言語である英語のインプットとアウトプット、インタラクションを最大限にする授業案をつくっていくことが目標になるのではないでしょうか。

画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/409610/LL_img_409610_2.png
八町小の研究授業

資料1:八町小の研究授業:5年生の社会科「米づくりのさかんな地域」
今回は、米農家のMr. I(ミスターアイ)が米づくりを継続できるようにするためのアドバイスを考えて表現する授業。調べ学習をもとに英語で書いた自分の考えをグループで共有し、一つひとつの困りごとに対する解決策を整理してまとめていく。

画像3: https://www.atpress.ne.jp/releases/409610/LL_img_409610_3.png
グループワーク

資料2:グループワークにおける生徒同士のやりとり
“We will talk about~.(~について話しましょう)”、“Who has ideas for this?(これについて意見がある人はいますか?)”など、ファシリテーター役の児童が英語を使って進行することで、ほかの児童も、できる限り英語で発話しようとする姿が観察された。また、どの問題に対する解決策なのかを整理する必要があるため、お互いの発話に耳を傾けて思考している様子も見られた。

画像4: https://www.atpress.ne.jp/releases/409610/LL_img_409610_4.png
グループ発表

資料3:グループ発表に対する質疑応答
教師は、発表を聞いた児童たちに対して質問があるかどうかを確認していた。何名かの児童が手を挙げ、例えば下記の質問が出た。
児童A:えっとYou mentioned that you...あ...you increase the number of people. But did you change...how...did you change how to work?(人数を増やす、という話が出ましたが、作業のやり方は変えましたか?)
これまでの授業観察から、特に積極的に英語を使おうとする児童の一人だと考えられるが、その場で自分が伝えたいことを即興的に英語で表現しようとする姿勢がさらに養われている様子が伺えた。


■八町小における双方向イマージョンの可能性
原田:
子どもたち同士が授業外でも自然と英語を使うような環境をつくる、という意味では、Two-wayイマージョン(双方向イマージョン)(詳細は、佐藤, 2021cを参照)は理想的だと思います。アメリカ国内のバイリンガル教育(Dual Language Program)では、Two-wayイマージョンの歴史も長いですよね。フロリダ州でキューバからの移民(スペイン語話者)が増えてきた1960年代、現地の子どもたちもスペイン語を学んでお互いに理解し合うことが必要、ということで、公立小学校でスペイン語を話す移民の子どもたちと英語を話す現地の子どもたちが同じクラスで英語とスペイン語を使って学ぶTwo-wayイマージョンが始まりました。アメリカの日本語イマージョン・プログラムは、Two-wayイマージョンを含めて40校以上だと思いますが、徐々に増えてきています。

林:
Two-wayイマージョンは、子どもたちが目標言語(八町小であれば英語)を使ってもっと自発的に話せるようになることが良いですよね。

原田:
そうですよね。もし英語のTwo-wayイマージョンであれば、半分が日本語話者(英語が第二言語)で、もう半分は英語話者(英語が第一言語)、というクラス構成になります。英語話者というのは、必ずしもネイティブ・スピーカーである必要はなく、日本語よりも英語を多く使う生徒、というイメージです。その生徒たちが同じクラスで日本語または英語で教科を学ぶ、同じクラスやグループに日本語話者もいるし英語話者もいる、という状況は、子ども同士のやりとりで目標言語を使うことを促すうえでとても良いですよね。八町小のイマージョン学級には、海外から帰国した児童や外国籍の児童などが特別枠として6名まで入級できるようになっていますが、その中には、英語のほうが強くて日本語を学びたい子どももいるわけです。
これはTwo-wayイマージョンの考え方に近いですし、このような子どもの割合が増えれば、「日本語を話す子どもたちの英語教育」という枠を超えて、帰国児童や外国籍児童の日本語学習と英語力維持をサポートする教育にもなると思います。

※詳しい内容はIBS研究所で公開中の下記の記事をご覧ください。
https://bilingualscience.com/english/2024090401/


【ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所(IBS)について】
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設立 : 2016年10月
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