東京観光財団・株式会社リクルート・東京都台東区がオーバーツーリズムに関する共同研究を実施

プレスリリース発表元企業:公益財団法人東京観光財団

配信日時: 2024-02-27 11:15:07

「オーバーツーリズムを防ぐために~東京・台東区での検証を踏まえて~」

公益財団法人東京観光財団(東京都新宿区、理事長:金子 眞吾、以下「TCVB」)、株式会社リクルート(本社:東京都千代田区 代表取締役社長:北村 吉弘、以下リクルート)の観光に関する調査・研究、地域振興機関『じゃらんリサーチセンター』(センター長:沢登 次彦、以下「JRC」)及び台東区(東京都台東区、区長:服部 征夫)は、共同研究「オーバーツーリズムを防ぐために~東京・台東区での検証を踏まえて~」を実施しました。



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【研究実施の経緯と目的】
「オーバーツーリズム」がいま改めて注目を集めています。地域により問題は様々ですが、これらの現象は、コロナ禍前にすでに国内の複数の箇所で見られていました。
 2019年、東京は過去最高のインバウンド旅行者数を記録しました。当時TCVBでは、今後の東京の観光振興を考えるにあたり、東京でもいずれこのような問題が顕在化してくる可能性を懸念していました。東京でオーバーツーリズムは起きているのか。起きているとしたら、何を根拠にそう断言できるのか。そのメカニズムと地域に合わせた未然防止策等について、より具体的に検証する必要性を感じ、本研究の実施に至りました。実施にあたっては、TCVB、JRC及び台東区が協業し、オーバーツーリズムを取り巻く様々な項目を改めて整理するとともに、問題が顕在化する引き金となる住民感情に焦点を当て、仮説を検証しました。
本研究は、持続可能な観光を目指す国内の多くの地域の皆様が、地域住民及び旅行者双方にとってより良い観光を推進するためのプロセスの一助となることを目的としています。オーバーツーリズムの問題を顕在化させないために、地域はどのような点に気をつけながら観光を推進すれば良いのか、本研究がその考察の参考となれば幸いです。

【研究内容・構成】
本研究は以下の通り構成し、オーバーツーリズムの定義や現在の国内外の状況等の前提条件を整理し、最終的には、東京・台東区という具体的な地域に落とし込んで検証しました。

視点1.現状把握(今何が起きているのか、オーバーツーリズムの定義や現在の議論)
視点2.発生パターンの分類(住民への悪影響への整理、顕在化までの段階、オーバーツーリズムの分類)
視点3.複数都市での比較(住民のネガティブ感情のトリガー検証、国内外の都市を数値化)
視点4.具体的な地域で検証(台東区を例に:モニタリングすべき項目、旅行者行動調査)
結論.オーバーツーリズムを防ぐために

【分かったこと】
オーバーツーリズムという言葉は2016年に旅行メディアが使用、以後多用されるが、具体的にオーバーツーリズムの状態や程度を決定しうる明確な定義や指標は存在しない。


「観光客の急激な増加や過剰な増加等を契機として、クローズアップされる観光の持続可能性に関わる全ての現象と問題」が広義、「住民の生活環境の維持と、観光の質や観光客の満足度の低下に関わるネガティブな現象等に焦点をあてたもの」が狭義の定義であるとすれば、国内では後者がより一般的。


地域特性から、オーバーツーリズムを「都市型」「リゾート型」「アイランド型」「自然型」に分類。「都市型」は観光の目的別にさらに4つに分類され、それぞれ懸念される影響の種類が異なる。地域は、どの分類に当てはまるかを想定し、懸念される影響を事前に予想・把握する必要がある。


住民のネガティブ感情には大まかに三つの不(不安、不快、不利益)があり、問題顕在化のトリガーになる。ネガティブ感情を引き起こす複数の仮説を国内外の都市で定量的に検証。結果、単純な「観光客の増加」が必ずしも問題を引き起こしているとは言えず、1.交通インフラの脆弱性、2.ナイトライフ需要に対する宿泊施設の供給不足、3.都市における特定の観光スポットへの依存度等の関連度が大きい。


台東区について住民目線、旅行者目線で調査。最新の区民調査では8割強以上の住民が観光を好意的に受け止めているが、一部に否定的意見もあった。否定的意見の割合は北部エリアに多く、このエリアは住民の長期居住比率が比較的高い。区内の人流ヒートマップや交通インフラ状況から分析した結果、住民の生活導線と観光を含む区外からの来訪者の行動がバッティングしている可能性が明らかになった。




[画像2: https://prtimes.jp/i/37225/24/resize/d37225-24-f816e30cde5859365ea5-1.png ]

23年12月に浅草を訪れたインバウンド旅行者73名に調査をしたところ、浅草が「混雑している」と感じているのは回答者の約60%。そのうち「混雑が浅草を満喫することを阻害しない」と回答したのは約80%であった。ただし20%弱は混雑が阻害すると回答しており、課題が残った。また、区が実施しているマナー啓発について、旅ナカでの認知度は1割と低かった。



【結論~オーバーツーリズムを防ぐために~】
分析結果を踏まえ、「オーバーツーリズムを未然に防ぐために」と題し、1.台東区への提言、2.観光庁による各対応策の優先度、3.自治体・観光協会/DMO・観光関連事業者別にステークホルダーが出来ることをまとめています。
オーバーツーリズムという言葉だけが注目されることにより、この問題が「観光客(観光産業)」VS「地域住民」の構図とみられてしまいがちですが、今回の研究を通して、観光に起因して地域住民に起こりうる問題は、観光セクターだけで解決できるような問題ではないことが分かりました。問題を未然に防ぐためには、普段から住民の声が自治体やDMO、観光協会に入って来やすい環境を作ることが必要不可欠です。また、住民の声が観光セクターに届きやすい環境には、地域が住民の理解なしには観光を推進できないことを前提に、観光によって地域にどれだけの恩恵がもたらされるのかが普段から丁寧に説明され、信頼関係が構築されていることが重要です。
 今回の現地調査で、少なくとも浅草エリアにおいては、多くの観光客が満足していることが分かりました。今後、より焦点を当てるべきは住民対応です。自地域の状況がオーバーツーリズムかどうかはさほど重要ではなく、まずは自分たちの地域で何が起きているのか、それを「誰と」「どのように」解決していくのか、多角的な視点で整理しながら考えていくことが、問題の未然防止だけでなく、今後の観光産業の更なる発展に繋がると考えます。


共同研究報告書:
https://www.tcvb.or.jp/jp/project/0b462134115beeff30aa7346bcc1a9ee.pdf
プレスリリース:
TCVB
▼リリースレポート
https://www.tcvb.or.jp/jp/news/R5%20joint%20research%20overtourism%20press%200227fnl.pdf
JRC
▼リリースページ
https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/2024/0227_14060.html
▼リリースレポート
https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/assets/20240227_travel_01.pdf

●東京観光財団について
東京の観光振興に関する各種事業を推進する東京都の政策連携団体。「世界から選ばれ続けるTOKYOへ。」を組織理念に掲げ、様々なパートナーと連携しながら、旅行者やビジネスイベンツを誘致するとともに、地域の観光振興や受入環境を向上するための取組を幅広く展開。
組織名:公益財団法人 東京観光財団
理事長:金子眞吾
所在地:〒162-0801 東京都新宿区山吹町346番地6 日新ビル
設立: 2003年10月15日
URL:https://www.tcvb.or.jp/jp/

●株式会社リクルートについて
1960年の創業以来、リクルートグループは、就職・結婚・進学・住宅・自動車・旅行・飲食・美容などの領域において、一人ひとりのライフスタイルに応じたより最適な選択肢を提供してきました。現在、HRテクノロジー、マッチング&ソリューション、人材派遣の3事業を軸に、60を超える国・地域で事業を展開しています。リクルートグループは、新しい価値の創造を通じ、社会からの期待に応え、一人ひとりが輝く豊かな世界の実現に向けて、より多くの『まだ、ここにない、出会い。』を提供していきます。
●じゃらんリサーチセンターについて
旅行に関する調査・研究を目的とし、2005年8月に(株)リクルート旅行カンパニー内に設置した研究組織。じゃらんが有する豊富な情報の分析と共に、新たな視点で、日本の観光振興にさまざまな切り口から提案を行うことで、新しい観光ムーブメントを創出し、観光産業全体のさらなる
活性化に寄与することを目的として活動しています。

組織名:株式会社リクルート
代表取締役社長:北村 吉弘
所在地:〒100-6640 東京都千代田区丸の内1-9-2 グラントウキョウサウスタワー
設立: 2012年 10月1日 ※株式会社リクルートホールディングス設立時の分社化により設立
URL:https://www.recruit.co.jp/ (株式会社リクルートHP)
https://jrc.jalan.net/(じゃらんリサーチセンターHP)

●台東区について
東京都の東部に位置し、面積は10.11平方キロメートルと23区で一番小さな特別区。上野、浅草、谷中、蔵前などの観光地を有しており、コロナ禍前の2018年の年間観光客数は5,583万人で、うち外国人観光客は953万人と東京を代表する国際文化観光都市である。

【本件に関する問合せ先】
■公益財団法人東京観光財団 総務部総務課(企画調査)山村・工藤
電話:03-5579-2680 メールアドレス:sanjyokaiin@tcvb.or.jp

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