EV商機獲得を目指す台湾電子産業メーカー<ワイズ機械業界ジャーナル2021年10月第3週号発行>
配信日時: 2021-10-21 11:00:00
~台湾機械業界の最新動向と分析~
ワイズコンサルティング グループ(本社:中華民国台北市、代表取締役:吉本康志)は台湾機械業界専門誌「ワイズ機械業界ジャーナル」の10月第3週号を発行しました。今週号では、電動自動車業界、航空業界、電源製造メーカーの飛宏科技、外資企業の投資状況を紹介します。
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<211021号内容>
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●今週号記事の一部を紹介します。
EV商機獲得を目指す台湾電子産業メーカー
一、TSMC 車載用半導体の供給を通じてEVサプライチェーンへの参入を目指す
車載用半導体不足の深刻さを受け、自動車大手のフォルクスワーゲンはアジアのファウンドリー大手、台湾積体電路製造(TSMC)とサムスン電子に協力を要請した。欧米自動車大手の協力要請に対し、TSMCは最大限協力することを承諾した。TSMCの売上高で車載用半導体が占める割合はわずか4%程度で、車載用半導体の生産拡大は採算が合わないようにみえるが、これはTSMCが電気自動車(EV)の商機獲得を視野に入れたからに他ならない。
ガソリン車に搭載される車載用半導体は平均40種類だが、EVには平均150種類の車載用半導体が搭載されている。省エネと温室効果ガス削減のトレンドを受けて、EVが次世代自動車産業の主要製品となったため、TSMCは車載用半導体供給を通じてEVサプライチェーンの参入を目指している。
現在、TSMCは2024年までに1,000億米ドルを投資し、▽新竹科学園区(竹科)、▽中部科学園区(中科)、▽南部科学園区(南科)の工場拡張を進め、さらに台湾中油(中油、CPC)の高雄製油所跡地(高雄市楠梓区)に工場を設置して、車載用半導体の生産を行う計画だ。このように、同社は▽車載用半導体、▽第5世代移動通信システム(5G)、▽高性能計算(HPC)がスマートフォンに続く売上高の主力となると考えている。
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二、台湾電子産業 EV産業への進出に注力
鴻海精密工業は20年10月にEV産業への参入計画を明らかにし、オープンプラットフォーム、MIH聯盟(MIHコンソーシアム)を発足した。台湾と海外の関連メーカーを含め、すでに1,200社のメーカーが参加している。
また、ノートパソコン受託生産大手の和碩聯合科技(ペガトロン)は電子制御システムの研究開発を進め、受注が安定したことから、顧客のテスラへの出荷効率化を考えた上で、米国テキサス州での工場設置を検討している。なお、ペガトロンの童子賢董事長は、EVは構造的に電子製品が大きな割合を占めるため、半導体と情報通信(ICT)を得意分野とする台湾電子産業にとって、自動車産業に進出する絶好のと指摘する。
台湾電子産業のICT分野の経験を自動車産業に応用することについて、台湾電子産業メーカーは車載用半導体から着手するべきと考えている。車載用半導体の計算能力はEVの電子制御システムに直接影響するため、テスラはすでに車載用半導体の研究開発と試運転を行っている。このように、台湾はEV産業の発展のために、半導体産業の技術力を基礎にすることで競争力をさらに高めることができるだろう。
三、EV産業の発展において 注意すべき課題
1.競合メーカーとの技術競争
車載用半導体の最先端技術である自動運転向けICチップについて、TSMCだけでなく競合メーカーのサムスン電子とインテルも同様に研究開発を進めている。サムスン電子は14ナノメートルの自動運転向けICチップをテスラに供給した実績があり、インテルは投資するモービルアイがニューヨーク市街地で自動運転車の試運転を実施した。このことから、競合メーカーの自動運転向けICチップはテスト段階に入っていることが分かる。
TSMCの3ナノプロセスの量産は22年下半期から、サムスン電子の3ナノプロセスの量産は3年から開始予定だ。TSMCは確実に優位な技術力を有するものの、油断はできない状況だ。
2.人材不足と各国の自給自足方針 台湾半導体産業に影響か
近年、台湾半導体産業は新しい人材が不足しており、大手メーカーは今後研究開発能力を維持できるかを懸念して、政府との提携で対策を検討している。また▽米中ハイテク冷戦、▽新型コロナウイルス感染症のパンデミック、▽半導体不足などを受けて、多くの国が半導体産業の発展を重視するようになり、TSMCに工場設置を打診している。
これに対し、TSMCは20年5月に米国アリゾナ州での工場設置計画を発表、日本とドイツでも工場建設を検討しているが、TSMCの創業者、張忠謀(モリス・チャン)氏は半導体産業のコスト上昇と技術開発の遅れを招くと否定的な意見を述べた。また、業界は各国の半導体自給率が上昇した場合、台湾半導体産業の世界市場におけるシェアへの影響について懸念している。
EV産業の発展が世界的に進む中、車載用半導体の不足を受けて、自動車大手がサプライチェーンの調整を開始したことが、これまでサプライチェーンの参入に難航してきた台湾メーカーにとって大きなチャンスとなった。これはアップルのiPhone以来、台湾の半導体産業が世界のブルーオーシャン産業に参入するきっかけとなるだろう。
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