日本海のスルメイカ、産卵適水温域は維持も幼生出現率は調査最低水準

2026年9月7日 00:40

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記事提供元:Tech Times

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日本海(論文中のEast Sea)では、スルメイカの産卵に適した水温の海域が面積を大きく減らさず北へ移動する一方、幼生が確認された調査地点の割合は2025年と2026年に調査期間中の最低水準となった。韓国国立水産科学院の研究チームが、2000~2025年の水温データと2018~2026年の幼生調査を組み合わせて明らかにした。

研究結果は、適した水温の海域が存在することと、実際に幼生が出現することとの間に時間的なずれが生じている可能性を示す。ただし、調査期間が短く、幼生出現率の低下傾向は統計的に有意ではない。研究チームは、原因が確立されたとはせず、今後の継続調査で検証すべき仮説として位置付けている。

■日本海の産卵海域で急速な昇温

韓国国立水産科学院のSeokjin Yoon、Sehun Myoung、Min Jin Jo、Hwan-Sung Jiによる研究は、2026年9月3日付で学術誌「Frontiers in Marine Science」に掲載された。26年間の水温場から産卵に適した水温域を再構築し、漁業活動に依存しない幼生調査と組み合わせた。

研究チームが2000~2025年のデータを分析したところ、日本海南部、韓国側の日本海海域、北部沖合の3海域では、海面水温が10年当たりそれぞれ0.32℃、0.51℃、0.52℃上昇していた。研究で比較対象とされた世界の海洋平均は10年当たり約0.14℃であり、対象海域の上昇率はおおむねその2~4倍に相当する。ただし、世界平均とは推計期間や対象範囲が異なるため、研究チームは同一条件での厳密な比較ではなく、背景を示す目安としている。

昇温は海面だけでなく、水深100メートルまでの水柱全体で確認された。このほか、表層塩分の低下、日本海と北部沖合におけるクロロフィルaの減少、対馬海峡の海水輸送量の増加も観測されたが、研究ではこれらが幼生の加入に与える影響までは検証していない。

■産卵適水温域は面積を保ちながら北上

研究チームは、幼生が確認された地点の水深50メートルの水温を基に、冬季を15.7~17.5℃、秋季を17.8~22.5℃とする季節別の適水温範囲を設定した。この範囲を2000~2025年の水温データに適用し、産卵に適した水温の海域がどのように変化したかを調べた。

その結果、秋季の適水温域の中心は10年当たり約27キロメートル北上していた。水深200メートル以内の海域に対象を絞るなど、算定条件を変えた場合の移動速度は10年当たり17~27キロメートルとなった。従来の産卵海域の南側では、適水温範囲の上限を超える場所が増えていた。

一方、適水温域の総面積には有意な減少傾向がなかった。水温条件だけを見れば、産卵に適した海域が消失したというより、その位置が北へ再配分されていることになる。

もっとも、産卵環境は水温だけで決まるものではない。海底地形、海流、水柱の構造、溶存酸素、餌の状態なども関係する。今回の再構築が示すのは産卵環境のうち水温に関する部分であり、適水温域の面積が保たれていることを、そのまま産卵機会全体の維持とみなすことはできない。

また、直近の2024年と2025年を分析から外すと、北上傾向の統計的な明瞭さは弱まった。研究チームは、移動方向は複数の算定方法で一貫しているものの、長期的な傾向の強さには最近の高水温年が大きく寄与しているとしている。

■幼生は北へ移った適水温域にも出現

幼生調査は、韓国の調査船「Tamgu 22」と「Tamgu 23」を使い、2018~2026年に延べ744地点で実施された。開口部の直径が80センチメートルのボンゴネットを海面から水深100メートルまで斜めに曳航し、採取したスルメイカの幼生を識別した。

スルメイカの幼生は外套長がおよそ1~10ミリメートルで、短い腕、癒合して吻状になった触腕、鐘形の外套、特徴的な色素胞の配置などを手掛かりに、ほかの頭足類の幼生と区別した。調査期間を通じて、漁具、曳航方法、試料の保存方法、識別基準を統一した。

幼生が確認された地点の水深50メートルの水温は、確認されなかった地点より、冬季で平均1.1℃、秋季で平均1.2℃高かった。緯度の影響を統計的に調整した後も、水温は幼生の出現を説明する有意な要因だった。

適水温の地点だけを比較すると、北側で幼生出現率が低くなる傾向は確認されなかった。2024~2026年の秋季調査では、適水温地点における幼生出現率は、調査海域の北側で58%、南側で14%だった。幼生は、適した水温の海域が北へ移った後も、その海域に出現していたことになる。

■適水温地点でも幼生出現率が低下

調査地点のうち少なくとも1個体の幼生が見つかった地点の割合を、研究チームは幼生出現率として算出した。この指標は2020~2021年にピークを付けた後、秋季、冬季の両グループで2025~2026年に調査期間中の最低水準へ低下した。適水温の地点に対象を絞っても、低下は残った。

調査範囲は年によってわずかに異なるため、研究チームは全ての調査航海に共通する緯度範囲でも計算し直した。その場合も、2025年秋季と2026年冬季は調査期間中の最低水準だった。冬季の2025年については、調査範囲が北へ移ったことが低い数値の一部に影響していた。

ただし、利用できるデータは秋季が7年分、冬季が8年分に限られる。幼生出現率の単調な低下傾向は、秋季、冬季とも統計的に有意ではなかった。スルメイカは年による資源変動が大きいため、今回確認された最低水準が一時的な変動なのか、持続的な変化の始まりなのかは、現段階では判断できない。

適水温域の位置や面積と幼生出現率との関連についても、現時点では結果が一貫していない。秋季には、適水温域が北へ移るほど幼生出現率が下がる方向の関連が見られたが、統計的に有意ではなく、多重比較の補正も通過しなかった。冬季には逆方向の関連が見られた。

このため研究結果は、維持された適水温域が実際の幼生出現に十分には結び付いていない可能性を示すものの、その仕組みまで確立したものではない。研究チームは、親となる産卵群の減少、卵や初期幼生の生残率の変化、餌環境の変化、海流による調査海域外への輸送などを、今後検証すべき候補として挙げている。

■漁獲統計では原因を切り分けられず

韓国のスルメイカ漁獲量は、1996年の約25万3000トンから2024年には約1万4000トンへ減少した。減少率は94.6%に達する。一方、研究チームが韓国の操業記録から標準化したCPUE(単位努力量当たり漁獲量)は、2000年から2016年まで急低下した後、統計上は横ばいとなった。

海面水温とCPUEの間には、長期データをそのまま比較すると強い負の相関が見られた。しかし、両方に共通する時間的な傾向を取り除くと、その相関は消えた。線形トレンドの除去や一階差分、移動平均からの残差、時間差を設けた分析でも、水温変動とCPUEの有意な関係は確認されなかった。

この結果は、水温上昇が資源減少に関係していないことを意味するものではない。緩やかな気候の影響は長期トレンドそのものとして現れる可能性があるためだ。一方で、漁獲統計だけでは水温、漁獲圧、船団構成、管理措置、未報告漁獲などの影響を切り分けられず、減少の原因を特定できないことを示している。

韓国の操業記録は水揚げを基にしており、漁獲がなかった操業の多くは記録されない。このため、CPUEは主に漁獲に成功した操業を基に計算され、漁獲失敗の増加という形で表れる資源減少を十分に捉えられない可能性がある。

資源が減少しても、残った群れに操業を集中させることでCPUEが比較的安定して見える現象は、ハイパースタビリティーと呼ばれる。2016年以降のCPUEの横ばいは、資源状態の安定だけでなく、こうしたデータ上の特性によって減少が覆い隠されている状態とも整合する。

■加入段階を毎年追跡する基準に

今回の幼生調査は、漁船の行動や漁獲報告に左右されず、産卵場における初期加入の状態を直接調べられる点に特徴がある。各地点では幼生の採取と同時に、水温、塩分、深度を測るCTD観測を行った。

研究チームが水深50メートルの水温を重視したのは、スルメイカの卵塊が密度躍層付近で中性浮力を保つと考えられているためだ。冬季は水柱がよく混合するため、水深50メートルの水温は海面水温に近い。秋季は水柱が成層し、水深50メートル付近が水温躍層に当たる。

今回設定した季節別の適水温範囲、適水温域の面積と中心緯度、幼生出現率を組み合わせることで、産卵に適した水温条件が実際の初期加入に結び付いているかを、今後も毎年追跡できる。

次の分析手法として研究チームが挙げるのが、平衡石に刻まれた日周成長輪を使った孵化日の推定である。個々の幼生がいつ孵化したかを再構築すれば、異なる季節の産卵群の重なりや、どの時期に生まれた群れの加入が低調なのかを詳しく調べられる。

スルメイカは寿命が約1年で、生涯に一度繁殖する。前年までの高齢個体が不調な加入年を補うことがないため、卵から幼生に至る段階の状態が、その年の資源量を考える上で重要になる。

高水温が寿命に与える影響を調べた飼育実験では、通常より高い水温条件で成長や成熟が早まり、寿命が半分程度になる可能性が報告されている。ただし、これは異なる水温で飼育した個体を基にした研究結果であり、日本海の天然個体群で同じ割合の寿命短縮が確認されたことを意味するものではない。

■短期的な最低値か持続的な変化か

今回の研究が直接示したのは、日本海のスルメイカ産卵海域で水温環境が変化し、秋季の適水温域が北へ移動していること、幼生が北側の適水温地点にも出現していること、そして幼生出現率が直近の調査で最低水準になったことである。

一方、適水温域と幼生出現率のずれが持続的なものか、その原因が水温以外の環境条件、産卵親群の規模、海流輸送、あるいは複数要因の組み合わせなのかは確定していない。漁獲統計から水温上昇の影響を単独で抽出することもできなかった。

研究チームが整備した水温域と幼生出現率の基準線は、調査年数を積み重ねることで、現在の低水準が大きな年変動の一部なのか、加入過程の持続的な変化なのかを検証する土台となる。

論文「Evidence for a decoupling of Todarodes pacificus thermal spawning habitat and paralarval recruitment in the warming East Sea」は、韓国国立水産科学院のSeokjin Yoon、Sehun Myoung、Min Jin Jo、Hwan-Sung Jiが執筆した。研究は韓国国立水産科学院の研究事業「R2026060」の支援を受けた。

元記事: Japanese Flying Squid Find Spawning Habitat but Larvae Hit Record Low, Study Shows

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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