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Anthropic、英Fractileの未出荷AIチップを約398億円購入へ―2027年の供給に先行合意

(Fractile.ai)[写真拡大]
AI開発企業の米Anthropicが、英ロンドンの半導体スタートアップFractileから、約2億5000万ドル(約398億円、1ドル=159円換算)相当のAI推論チップを購入する初期合意に達した。チップは2027年まで利用可能にならない見通しで、両社は将来的な契約拡大も検討している。
Fractileは約6億ドル(約954億円)の資金調達に向けた交渉も進めている。想定するプレマネー評価額は65億ドル(約1兆335億円)だが、調達はまだ完了しておらず、条件が変わる可能性がある。
■AnthropicとFractileが約2.5億ドルの購入で初期合意
Bloombergが関係者の話として報じたところによると、AnthropicはFractileが開発するAI推論チップを約2億5000万ドル購入する初期合意に達した。FractileとAnthropicは報道へのコメントを控えており、契約の支払い条件や購入数量などの詳細は明らかになっていない。
Fractileは2026年5月、Accel、Founders Fund、Factorial Fundsが主導するラウンドで2億2000万ドルを調達し、当時の評価額は約10億ドルだった。それから約3カ月後となる今回の調達交渉では、評価額が65億ドルまで上昇する可能性がある。
新たなラウンドでは、約6億ドルの調達が検討されている。資金の一部は65億ドルより低い評価額に基づいて投資されたと報じられており、65億ドルという数字がラウンド全体に一律に適用されるわけではない。また、交渉は継続中で、最終的な調達額や評価額は変更される可能性がある。
Fractileは2022年にオックスフォード大学出身のロボティクス研究者Walter Goodwin氏が創業した。学習済みAIモデルを使って応答などを生成する「推論」に特化した半導体を開発している。
■計算とメモリを近づけ、データ移動を減らす
大規模言語モデルの推論では、行列演算そのものに加え、モデルの重みをメモリから演算回路へ読み出す処理が性能や消費電力を左右する。プロセッサーの処理性能に対してメモリの速度が追いつかず、システム全体の性能を制約する問題は「メモリの壁」と呼ばれている。
Fractileは、メモリと演算機能を同じチップ上で密接に組み合わせる設計を「メモリ・コンピュート・フュージョン」と呼んでいる。モデルの重みと演算回路の間で発生するデータ移動を減らし、推論の待ち時間やエネルギー消費を抑えることが狙いだ。
同社は、Andes Technologyの64ビットRISC-Vベクタープロセッサ「AX45MPV」と、カスタム命令を追加するための「Andes Custom Extension」をライセンスしている。AX45MPVは最大1024ビットのベクター処理ユニットと、高帯域のベクターローカルメモリを備える。
FractileとAndes Technologyは、推論に必要な演算の99.99%をオンチップメモリで実行する設計を目指すとしている。Fractileは既存のハードウェアに比べてAIモデルを最大100倍高速に実行し、コストを10分の1にできるとの目標も掲げているが、いずれも同社側が示した開発目標である。量産チップを用いた独立機関による比較結果は公表されていない。
この設計は、推論におけるデータ移動の負担を小さくするという発想に特徴がある。一方、実際の性能は、搭載できるSRAMの容量、モデルの数値精度、複数チップ間の接続、ソフトウェアによる処理の分割、同時に処理する要求数などにも左右される。
■2027年の利用開始を見込む先行契約
Fractileのチップは2027年まで利用可能にならない見通しだ。このため、今回の初期合意は、Anthropicが直ちに利用できる半導体を購入する契約ではなく、開発中の製品について将来の供給枠を確保する性格を持つ。
半導体では、設計を製造工程へ引き渡すテープアウトから試作、検証、量産までに長い時間を要する。開発中の製品を対象とする契約には、製造上の問題やスケジュールの遅延、量産時の歩留まり、消費電力、実際のAIワークロードにおける性能といった不確定要素が残る。
Fractileの資金調達が完了すれば、最初のAIチップを市場へ投入するための開発や量産準備を進める資金となる。Anthropicにとっては、Fractileの設計が期待どおりの性能を示した場合に、供給を受けるための足場を早い段階で築く意味がある。
ただし、購入合意がFractileの性能目標を検証したことを意味するわけではない。量産チップの仕様、納入数量、導入するワークロード、性能評価の条件などは公表されておらず、技術面と事業面の成否は今後の開発と検証に委ねられる。
■Anthropicは複数種類のAI半導体を併用
Anthropicは、単一の半導体に依存せず、複数のAIアクセラレーターを用途に応じて使い分ける方針を示している。現在は、AWSのTrainium、GoogleのTPU、NvidiaのGPUをClaudeの学習と推論に利用している。
AWSとの「Project Rainier」では、Trainium2を大規模に接続した計算基盤をClaudeの学習と推論に使用している。Anthropicは2026年4月、Amazonとの提携を拡大し、将来世代のTrainiumを含む最大5ギガワットの計算能力を確保する契約を発表した。
同月にはGoogleおよびBroadcomとの提携拡大も発表し、2027年から稼働を始める複数ギガワット規模の次世代TPU容量を確保した。Anthropicは、ワークロードに適した半導体を選ぶことで、性能と運用上の柔軟性を高めるとしている。
Fractileとの合意も、このマルチプラットフォーム戦略に新たな選択肢を加えるものと位置付けられる。既存のGPUやクラウド事業者の専用チップを置き換えると決まったわけではなく、2027年以降に実チップの性能やコストを評価したうえで、適した処理へ割り当てられる可能性がある。
■評価額65億ドルを左右する量産と実測性能
Fractileが交渉中の65億ドルという評価額には、Anthropicとの初期合意に加え、AI推論向け半導体の需要拡大に対する投資家の期待が反映されている。一方、Fractileはまだ商用チップを出荷しておらず、調達ラウンドも完了していない。
今後の焦点は、設計を予定どおりテープアウトし、試作チップで機能や性能を確認したうえで、量産へ移行できるかどうかだ。シミュレーション上の性能が、実際のデータセンターにおける発熱、電力、通信、ソフトウェア互換性などの条件下で再現されるかも重要になる。
オンチップSRAMは高速である一方、搭載容量やチップ面積、製造コストとの調整が必要になる。大規模なモデルを扱う場合は、重みの量子化、必要な部分だけを使うモデル構造、複数チップへの分割といった技術との組み合わせも性能を左右するが、Fractileの量産製品における具体的な実装は明らかになっていない。
Anthropicによる約2億5000万ドルの初期合意は、Fractileにとって有力な顧客候補を得たことを示す。しかし、65億ドルという評価が妥当だったかどうかは、2027年の利用開始に向けた開発、量産能力、実測性能、そして既存GPUやほかの専用AIチップに対する費用対効果によって判断されることになる。
■注目ポイントQ&A
●AnthropicとFractileはどのような合意に達したのですか?
Anthropicが約2億5000万ドル相当のFractile製AI推論チップを購入する初期合意です。将来的な契約拡大も検討されていますが、購入数量や支払い条件などの詳細は公表されていません。
●Fractileのチップはいつ利用可能になりますか?
2027年まで利用可能にならない見通しです。開発や量産の進捗によって、実際の供給時期が変わる可能性があります。
●「メモリ・コンピュート・フュージョン」とは何ですか?
メモリと演算機能を同じチップ上で密接に組み合わせ、推論時に発生するデータ移動を減らす設計思想です。Fractileは、推論に必要な演算の99.99%をオンチップメモリで実行することを目標として掲げています。
●Fractileの評価額はすでに65億ドルで確定したのですか?
確定していません。Fractileは65億ドルのプレマネー評価額で約6億ドルを調達する交渉を進めていますが、ラウンドは完了しておらず、条件が変わる可能性があります。
元記事: Anthropic Bet $250M on Unshipped Silicon: Why Fractile Earned Pre-Revenue Contract
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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