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【分析】韓国メモリ輸出が277%増、システム半導体は微減―AI投資で際立つ帯域幅需要

(Samsung.com)[写真拡大]
韓国の2026年7月のICT貿易統計で、メモリ半導体の輸出額が前年同月比276.9%増と急増した一方、ロジック半導体などを含むシステム半導体の輸出は0.7%減となった。大規模言語モデルの推論、とりわけトークンを逐次生成するデコード処理では、演算能力だけでなくメモリ容量や帯域幅、チップ間接続が性能を左右する。7月の統計は、世界的なAIインフラ投資が韓国のメモリ輸出を強く押し上げている状況を示している。
■なぜAI推論でメモリが重視されるのか
輸出動向の違いを理解するには、トランスフォーマーモデルの処理構造を見る必要がある。AIが単語やコードなどのトークンを生成する際には、モデルの重みパラメータやKVキャッシュなどのデータをメモリからGPUの演算ユニットへ転送する必要がある。
特にバッチサイズが小さい大規模言語モデルのデコード処理では、演算性能を十分に使い切る前に、メモリからデータを読み出す速度がボトルネックとなる場合が多い。これは、プロセッサーの演算性能向上に比べてメモリ性能の伸びが追いつかない「メモリの壁」の一例である。ただし、実際の性能制約はモデル、バッチサイズ、コンテキスト長、量子化方式、ソフトウェア実装、GPU間通信などによって異なり、すべてのAI推論が一律にメモリ帯域幅だけで決まるわけではない。
広帯域メモリ(HBM)は、こうした制約を緩和するための技術である。一般的なDDR5 DRAMがプロセッサーと比較的狭いバスで接続されるのに対し、HBMは複数のDRAMダイを垂直に積層し、TSV(シリコン貫通電極)などを介して広いインターフェースで接続する。通常はGPUやAIアクセラレーターの近くに配置され、大量のデータを高速に供給する。
JEDECが2025年4月に公開したHBM4規格は、2,048ビット幅のインターフェースと最大8Gb/sの転送速度により、1スタックあたり最大2TB/sの帯域幅を規定している。NVIDIA H200は141GBのHBM3Eと4.8TB/sのメモリ帯域幅を備える。これらの数値は、AIアクセラレーターの性能においてメモリ容量と帯域幅が重要な設計要素になっていることを示す。
ロジック半導体とメモリ半導体は相互に代替できる製品ではない。AIアクセラレーターの需要が強くても、ロジック半導体とメモリ半導体の輸出額が同じ割合で増えるとは限らない。価格変動、生産拠点、製品構成、輸出時期なども統計に影響するため、7月の数値だけから「AI需要が演算からメモリへ移った」と断定するのではなく、AI投資によるメモリ需要の強さが特に鮮明になったと捉えるのが適切だ。
■輸出統計に見るメモリとシステム半導体の差
韓国科学技術情報通信部と産業通商資源部が8月14日に公表したICT貿易統計によると、7月の半導体輸出額は410億2000万ドル(約6兆5222億円、1ドル=159円換算)で、前年同月比178.8%増となった。半導体輸出が400億ドルを超えるのは2カ月連続である。
内訳では、メモリ半導体が276.9%増の356億8000万ドルとなった一方、アプリケーションプロセッサーやASICなどを含むシステム半導体は0.7%減の46億8000万ドルだった。メモリ価格の上昇に加え、AIサーバー向けのDRAM、HBM、エンタープライズSSD需要が輸出額を押し上げた。
コンピューターおよび周辺機器の輸出額は前年同月比353.9%増の49億4000万ドルだった。このうちSSDは500.2%増の45億1000万ドルを占め、AIサーバー向けストレージ需要の拡大が表れている。一般貿易統計ではコンピューター輸出の集計範囲が異なるため、404%増とされているが、ICT貿易統計に合わせる場合は353.9%増となる。
韓国の7月の全品目輸出額は前年同月比62.8%増の988億9000万ドル(約15兆7235億円)で、2026年6月の1022億5000万ドルに次ぐ過去2番目の規模となった。半導体輸出は全体の約4割を占めており、韓国の輸出拡大がメモリ市況とAI投資に大きく依存していることも示している。
■生産能力の転換がDRAM価格に与える影響
HBMは複数のDRAMダイを積層し、TSV形成、ダイ薄化、接合、検査、先端パッケージングなどの工程を必要とする。このため、一般的なDRAMより製造工程が複雑で、生産能力や先端パッケージング設備を多く使用する。
業界では、HBM向けに生産能力を割り当てることで、同じ設備から供給できる汎用DRAMの量が減少する「3対1」の影響が指摘されている。ただし、これは製品1個当たりの単純なウエハー使用量を示す普遍的な比率ではなく、工程数、歩留まり、積層数、パッケージング能力などを含めた業界上の目安である。
Samsung Electronics、SK hynix、Micron TechnologyがHBMやサーバー向けDRAMを優先すれば、PCやスマートフォンなどに使われる汎用DRAMの供給余力は小さくなる。AI向け需要の拡大が、AI以外の製品に使われるメモリの価格と供給にも影響する構図だ。
2026年6月25日には、Samsung、SK hynix、Micronが汎用DRAMの供給を協調して制限したとの主張に基づく反トラスト集団訴訟が、米カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に提起された(Garciaguirre v. Samsung Electronics、事件番号3:26-cv-06345)。これは原告側の主張であり、3社の法的責任が認定されたものではない。訴訟は係属中である。
価格面でも逼迫が続いている。調査会社や業界関係者は、DRAM価格の上昇と納期の長期化を報告している。Counterpoint Researchのニール・シャー氏はCNBCに対し、各社が2028年まで供給能力を拡大するものの、計画を上回る需要が続くため、メモリ価格は2028年末より前には下がりにくいとの見方を示した。
消費者向け市場にも影響が及んでいる。Samsung Electronicsのモバイル事業を含むMX・ネットワーク部門は、部品コスト上昇などを背景に2026年第2四半期に7000億ウォンの営業損失を計上した。一方、半導体を担うデバイスソリューション部門は過去最高の業績を記録した。
IDCは、メモリ不足や部品価格上昇などを背景として、2026年の世界PC出荷台数が前年比11.3%減、スマートフォン出荷台数が13.9%減になると予測している。地政学的要因や輸送費、端末価格の上昇なども減少要因に含まれるため、すべてをメモリ価格だけに帰することはできない。
■SamsungとSK hynixの業績と設備投資
Samsung Electronicsは2026年第2四半期に、連結売上高171兆5000億ウォン、営業利益89兆5000億ウォン(約10兆円)を記録した。半導体を担うデバイスソリューション部門は、売上高127兆5000億ウォン、営業利益89兆2000億ウォンとなり、AIサーバー向けメモリ需要や価格上昇が業績を押し上げた。
Counterpoint Researchによると、2026年第2四半期のDRAM売上高シェアはSamsungが39%で首位、SK hynixが26%、Micronが25%だった。Samsungは汎用DRAMの価格上昇とHBM事業の拡大によって、2025年第2四半期にSK hynixへ譲っていた首位を取り戻した。
SK hynixは同四半期に売上高79兆3187億ウォン、営業利益60兆5426億ウォン(約6兆7900億円)を計上した。売上高は前年同期比257%増、営業利益は557%増で、いずれも過去最高となった。ただし、営業利益は市場予想を下回り、HBM4の売上計上時期などが業績評価に影響したと報じられている。
SK hynixは8月7日、龍仁のDRAM新工場「Y2」に35兆2000億ウォン、清州のNAND新工場「M17」に19兆1000億ウォン、合計約54兆ウォンを投じる計画を発表した。M17は単なるパッケージング施設ではなく、NANDフラッシュを生産するファブである。
M17は2027年2月に着工し、2028年12月に最初のクリーンルームを開設する予定だ。Y2は2027年7月に着工し、2029年6月に最初のクリーンルームを開設して、HBMを含む次世代DRAMを生産する計画である。クリーンルームの開設が直ちにフル生産を意味するわけではなく、実際の供給能力は製造装置の導入や歩留まりの改善に応じて段階的に増える。
■エージェント型AIとサーバー需要がメモリ市場を押し上げ
韓国政府は7月の輸出拡大について、AIインフラ投資の拡大やメモリ価格の上昇、サーバー向け製品の需要増加を主な背景として挙げている。SamsungとSK hynixも、エージェント型AIの普及がサーバー向けDRAM、HBM、エンタープライズSSDの需要を広げるとの見方を示している。
エージェント型AIは、ツールの利用、複数段階の処理、長いコンテキストの保持などを伴う場合がある。こうした処理はメモリ容量やストレージ、データ転送への要求を高める可能性があるが、必要なリソースはシステムの設計や実行するタスクによって異なる。
7月の韓国の全品目輸出額を地域別に見ると、中国向けは216億8000万ドル(約3兆4471億円)とほぼ倍増し、米国向けは67.8%増の174億3000万ドル(約2兆7714億円)、ASEAN向けは73.7%増となった。ただし、これらは半導体だけでなく全品目を含む地域別輸出額であり、各地域の増加分をすべてAIデータセンター投資によるものとみなすことはできない。
Counterpoint Researchは、2026年第2四半期には汎用DRAM価格が前四半期比で大幅に上昇する一方、HBM価格はHBM3Eの値下がりやHBM4の投入遅れによって前年同期を下回ったと分析している。HBM4の出荷拡大に伴い、製品構成の改善によってHBM価格の下落幅は縮小するとみている。
WSTS(世界半導体市場統計)は2026年春季予測で、2026年の世界半導体市場が前年比約90%増の1兆5100億ドル規模に達すると予測している。メモリ市場はAIインフラやHBM需要を背景に約250%増と予測されており、2025年秋時点の9750億ドルという予測から大幅に上方修正された。
■エンタープライズ調達部門とAI設計者が確認すべきこと
AIシステムの設計では、GPUの演算性能だけでなく、HBMの容量と帯域幅、KVキャッシュの容量、GPU間接続、バッチサイズ、量子化方式、ソフトウェア実装を総合的に評価する必要がある。特に大規模言語モデルのデコード処理では、メモリ転送が性能を制約しやすい。
一方、学習処理、プロンプトを処理するプリフィル段階、大きなバッチを使う処理などでは、演算性能が主要な制約となる場合もある。「演算ではなくメモリ」と二者択一で捉えるのではなく、対象ワークロードの演算強度とデータ移動量を測定して構成を決めることが重要だ。
企業の調達担当者にとっては、HBMだけでなくサーバー向けDDR5やエンタープライズSSDを含め、供給枠、価格改定条件、納期、代替部品の有無を早期に確認する必要がある。複数年契約は供給枠と価格変動を管理する手段となるが、市場価格が下落した場合のリスクもあるため、価格の上限と下限、購入義務、需要変動への対応条件を精査すべきだ。
SK hynixの新工場では、M17の最初のクリーンルーム開設が2028年12月、Y2が2029年6月に予定されている。Counterpoint Researchは、主要メーカーの増産が進んでも、需要が計画能力を上回る場合には2028年末まで価格が下がりにくいとの見方を示している。ただし、今後のAI投資、景気、歩留まり、生産計画によって需給見通しは変わり得る。
韓国では8月11日、「半導体産業の競争力強化および支援に関する特別法」、いわゆる半導体特別法とその施行令が施行された。同法は半導体クラスターの指定、電力・用水・道路などのインフラ支援、人材育成、研究開発、素材・部品・装置の供給網強化、特別会計の運用などの制度的な枠組みを定めている。
7月の統計は、AI投資が韓国のメモリ輸出を強力に押し上げていることを示した。一方で、システム半導体の輸出が微減した理由には、製造地域や輸出構造、価格、製品投入時期など複数の要因があり、単月の数値だけでAI市場全体の需要構造を判断することはできない。今後は、メモリとシステム半導体の輸出額だけでなく、価格と数量、HBMと汎用DRAMの構成、SSD需要、生産能力の拡大時期を併せて確認する必要がある。
■注目ポイントQ&A
●なぜシステム半導体が微減した一方で、メモリ半導体は276.9%も増えたのですか?
AIサーバー向けのDRAM、HBM、SSD需要とメモリ価格の上昇が、韓国のメモリ輸出額を大きく押し上げたためです。大規模言語モデルのデコード処理ではメモリ容量や帯域幅が重要ですが、輸出額の違いには製品価格、生産拠点、出荷時期なども影響します。ロジック半導体の需要がなくなったことを示す数値ではありません。
●メモリ不足や価格高騰はいつまで続きますか? 企業はどう対応すべきですか?
Counterpoint Researchは、各社が供給能力を拡大しても、需要の伸びが計画を上回れば2028年末より前には価格が下がりにくいとみています。ただし確定した見通しではありません。企業は使用量と導入時期を精査し、複数サプライヤーの確保、代替構成の検討、長期契約の価格条件や購入義務の確認を進める必要があります。
●HBMの生産がなぜPCやスマートフォン向けメモリに影響するのですか?
HBMはTSV形成、ダイ積層、接合、検査、先端パッケージングなど多くの工程を必要とします。メーカーが製造設備や人員をHBMとサーバー向け製品へ重点配分すると、汎用DRAMやNANDに回せる能力が減る可能性があります。その結果、PCやスマートフォン向け部品の価格や納期にも影響が及びます。
●中国のCXMTは韓国メーカーの競争相手になりますか?
CXMTは汎用DRAMの生産能力を拡大しており、Counterpoint Researchによる2026年第2四半期のDRAM売上高シェアは7%でした。同社は同年にIPOを実施し、HBMや次世代モバイルDRAMへの投資動向が注目されています。ただし、HBMでは積層、接合、歩留まり、先端パッケージングなど複数の技術が必要であり、韓国メーカーとの競争力を単一のシェアや技術世代だけで判断することはできません。
元記事: South Korea Chip Data: Memory Up 277%, Logic Down; AI Buys Bandwidth, Not Compute
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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