Appleは外部決済にいくら請求できるのか―米最高裁判断で原価ベースの算定手続き再開

2026年8月15日 16:06

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記事提供元:Tech Times

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米連邦最高裁判所のエレナ・ケイガン判事は2026年8月13日、Appleが申し立てていたApp Store手数料算定手続きの停止申請を却下した。これにより、Appleが米国向けiOSアプリの外部リンク経由の購入に課すことのできる手数料を、カリフォルニア州北部地区連邦地裁が算定する手続きは再開される。

同手続きでは、Appleが外部リンク購入の調整に必要な費用を証拠に基づいて示し、イボンヌ・ゴンザレス・ロジャーズ判事が認める手数料率を決める。2025年4月30日の法廷侮辱認定以降、米国のApp Storeでは外部リンク経由の購入に対するAppleの手数料がゼロとなっており、今後認められる料率は100万を超えるApp Store開発者に影響する可能性がある。

■法廷記録が明かしたApple内部の意思決定プロセス

法廷侮辱を巡る審理では、Appleが2021年のアンチステアリング差止命令にどのように対応したかを示す社内記録が明らかになった。この差止命令は、開発者がアプリから外部の購入手段へ利用者を誘導するリンクなどを設置することを、Appleが妨げる行為を禁じたものだ。

社内では、長年上級副社長を務め、現在はApple Fellowであるフィリップ・シラー氏が、差止命令を文面通り順守するよう求めていた。だが、ティム・クックCEOはその案を採用せず、当時のルカ・マエストリ最高財務責任者(CFO)が率いる財務チームの提案に基づいて対応を進めた。

その結果、Appleはユーザーが外部リンクをクリックしてから7日以内に行った購入に27%の手数料を課す仕組みを導入した。裁判所は、この料率が外部リンクを商業的に利用しにくくする効果を持つことをAppleが認識していたと認定した。

例えば、決済代行サービスStripeの米国における標準的なオンラインカード決済手数料は2.9%+0.30ドルである。これにAppleの27%の手数料が加われば、開発者がAppleのアプリ内課金を使わずに外部決済を導入する経済的な利点はほとんど残らない。実際、問題となった運用期間中、大規模な開発者は外部リンクを導入しなかったとされ、裁判所はそれがAppleの設計意図に沿った結果だったと判断した。

ロジャーズ判事は決定の中で、「社内ではフィリップ・シラー氏が差止命令の順守を主張していたが、ティム・クック氏はシラー氏の意見を無視し、ルカ・マエストリCFOとその財務チームに説得されることを許した。クック氏は誤った選択をした」と述べた。

■虚偽と認定された財務担当幹部の証言

Appleの財務担当バイスプレジデントであるアレックス・ローマン氏の証言も問題となった。ローマン氏は2024年5月の審問で、27%の手数料を採用する決定が2024年1月に行われたと証言した。

一方、同時期に作成されたAppleの内部業務記録は、手数料体系が2023年7月には決定されていたことを示していた。ロジャーズ判事は、この食い違いを単なる混乱や記憶違いとは認めず、ローマン氏の証言を「誤導と露骨な嘘に満ちている」と評価した。Appleと代理人は、証言後もその内容を訂正しなかった。

ロジャーズ判事は2025年4月、刑事法廷侮辱の手続きを開始すべきか検討するよう、ローマン氏とAppleに関する事項をカリフォルニア州北部地区連邦検察局へ付託した。これは刑事責任の成立を意味するものではなく、起訴などを行うかどうかは検察当局が独立して判断する。2026年8月13日時点で、公表された結論は確認されていない。

■最高裁がAppleの停止申請を却下

ケイガン判事は8月12日、Appleの緊急申請を最高裁が検討するため、地裁手続きを米東部時間8月13日午後5時まで一時的に停止した。この行政上の短期停止は事件の結論を示すものではなかった。

その後、ケイガン判事は8月13日にAppleの停止申請を却下した。したがって、最高裁が法廷侮辱認定に関する本案を審理している間も、地裁での手数料算定手続きは進むことになる。

Appleは、最高裁が法廷侮辱認定を覆した場合、地裁で行われた費用の開示や証拠提出が無駄になり、機密情報の開示による回復不能な損害を受けると主張していた。

これに対してEpic Gamesは、手数料算定は法廷侮辱の成立とは別に必要な手続きであり、停止による遅延はAppleだけを利すると反論した。外部リンク購入に対する手数料ゼロの状態は2025年4月30日から続いており、開発者はこの条件を前提に事業を行っている。

■Appleに課される「原価回収基準」

手数料算定手続きは、AppleとEpicが任意に料率を交渉する場ではない。第9巡回区連邦控訴裁判所は2025年12月、Appleが請求できるのは、外部リンク購入の調整に「真に、かつ合理的に必要な」費用に限られるとの基準を示した。

これは、市場が受け入れられる料率やAppleが提供するエコシステムの価値から手数料を決める方式ではなく、実際に必要な費用を回収するための基準である。Appleが従来の15~30%のアプリ内課金手数料を示すだけでは、料率の根拠にはならない。

Appleは、外部リンクをクリックしたユーザーと7日以内の購入を関連付けるアトリビューション基盤、サーバー資源、取引の確認作業、不正防止など、外部リンク取引の調整に固有の費用を証拠によって示す必要がある。認定される調整費用が小さければ、許容される手数料も小さくなる。

地裁が示したスケジュールでは、Appleは提案する料率を裏付ける証拠と証言を誠実に提示するプロファーを提出する。その10日以内に、意思決定過程に関する文書のうち弁護士・依頼者間秘匿特権などの対象とならないものを開示する。

その後、AppleとEpicが特権を巡る争点を整理し、Epicには30ページ以内の法的分析を提出するための60日間、Appleには最終的な回答を提出するための30日間が与えられる。これらを経て、裁判所が手数料率を判断する審問が開かれる。

■法廷侮辱を巡る最高裁の争点

最高裁が受理した事件番号25-1311の争点は、Appleが法廷侮辱に当たるかという事実判断だけではない。差止命令に問題となった行為が明記されていない場合でも、その行為が命令の実効性を失わせるなら民事法廷侮辱を認定できるかが問われている。

Appleは、民事法廷侮辱を認定するには、問題となる具体的な行為が命令によって明確かつ曖昧さなく禁止されていなければならないと主張している。これに対し第9巡回区控訴裁は、27%の手数料が差止命令に明記されていなくても、開発者による外部購入への誘導を事実上妨げる効果があったとして、法廷侮辱認定を支持した。

Appleの主張が認められれば、差止命令を受けた企業にとって、命令の文言に明記されていない行為を採用できる余地が広がる可能性がある。一方、第9巡回区控訴裁の考え方を広く認めれば、命令の対象となる企業が順守の境界を事前に判断しにくくなるとの懸念もある。

最高裁は2026年6月30日、この法的争点に限って上告を受理した。Appleの本案書面の提出期限は9月14日、Epicの書面は11月13日とされており、事件は最高裁の2026年10月開廷期に審理される。

■開発者と消費者への影響

地裁が承認する手数料は、米国向けApp Storeで配信されるiOSアプリから外部の購入ページへユーザーを誘導した場合に適用される。現在のAppleの手数料はゼロであるため、新たにゼロを超える料率が認められれば、開発者の負担は現状から増える。

一方、Appleが実際の調整費用を十分に証明できず、有意な手数料が認められなければ、現在の状態が維持される。開発者は引き続き、Appleへの手数料ではなく、決済代行事業者の費用を中心に外部決済の採算性を判断できることになる。

最高裁が今後Appleの主張を認め、法廷侮辱認定を取り消した場合には、地裁での算定手続きの法的な前提や、Appleが主張できる手数料の範囲が変わる可能性がある。反対に法廷侮辱認定が維持されれば、第9巡回区控訴裁が示した原価回収基準が引き続き中心となる。

■世界各国の規制当局も注視

Appleは最高裁への申立書で、「世界中の規制当局が、米国外の巨大市場でAppleが対象購入に課すことのできる手数料率を見極めるため、本件を注視している」と述べた。

EUでは、欧州委員会が2025年4月、デジタル市場法(DMA)のアンチステアリング義務に違反したとしてAppleに5億ユーロの制裁金を科した。Appleはこの決定を不服として上訴している。

日本では「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」、通称スマートフォンソフトウェア競争促進法が2025年12月18日に全面施行された。Appleはこれに対応し、日本のiOSで代替アプリマーケットプレイスによる配信や、アプリ内の代替決済、外部ウェブサイトへの決済リンクを利用できる仕組みを導入している。

ただし、日本ではAppleが独自の手数料体系を設定しており、米国の裁判所が決める料率が日本へ直接適用されるわけではない。米地裁がどの費用を外部リンク取引に必要なものと認め、どのように料率へ反映するかは、各国でプラットフォーム手数料を検討する際の分析材料となる可能性がある。

■刑事法廷侮辱の付託は今後も意味を持つのか

民事法廷侮辱は将来の順守を促すことを主な目的とするのに対し、刑事法廷侮辱は過去に行われた命令違反を処罰するための手続きである。

ロジャーズ判事がローマン氏とAppleに関する事項を連邦検察局へ付託したことで、刑事手続きを開始するかどうかの判断は地裁の手を離れた。検察当局が独立して判断するため、地裁での手数料算定や最高裁での民事法廷侮辱を巡る審理とは別に扱われる。

付託の前提となった法廷記録には、Apple内部で手数料を決定した時期と、ローマン氏の宣誓証言との食い違いが記録されている。今後の手数料算定でも、Appleが提出する説明だけでなく、同時期に作成された内部記録が重要な証拠となる。

■注目ポイントQ&A

●Appleの27%外部リンク手数料は誰が決定したのですか?

法廷記録によると、フィリップ・シラー氏は差止命令を文面通り順守するよう求めましたが、ティム・クックCEOはその案を採用せず、ルカ・マエストリCFOが率いる財務チームの提案に基づいて対応を進めました。その結果、外部リンクをクリックしてから7日以内の購入に27%の手数料を課す仕組みが導入されました。

●アレックス・ローマン氏は偽証罪に問われたのですか?

偽証罪や刑事法廷侮辱について有罪が確定したわけではありません。ロジャーズ判事は、ローマン氏の証言を「誤導と露骨な嘘に満ちている」と認定し、刑事法廷侮辱の手続きを検討するようローマン氏とAppleに関する事項を連邦検察局へ付託しました。刑事手続きを開始するかどうかは検察当局が判断します。

●現在、米国のApp Storeで外部リンク購入に課されるAppleの手数料はいくらですか?

2025年4月30日の法廷侮辱認定以降、Appleが外部リンク経由の購入に課すことのできる手数料はゼロです。最高裁が2026年8月13日に手続き停止申請を却下したため、Appleが請求できる将来の料率を地裁で算定する手続きが進みます。

●Appleに適用される「原価回収基準」とは何ですか?

市場相場や従来の15~30%のアプリ内課金手数料ではなく、外部リンク購入の調整に「真に、かつ合理的に必要な」費用だけを手数料の根拠にできるという基準です。Appleは、追跡基盤やサーバー、不正防止、確認作業などに実際に必要な費用を証拠によって示さなければなりません。

●米国の裁判結果は日本のApp Storeにも直接適用されますか?

直接は適用されません。米国の手続きは、米国向けApp Storeの外部リンク購入に関するものです。日本ではスマートフォンソフトウェア競争促進法に対応した別の制度と手数料体系が運用されています。ただし、米地裁が原価ベースの料率をどのように算定するかは、各国の規制当局や訴訟当事者が手数料を検討する際の分析材料となる可能性があります。

元記事: Apple CEO Tim Cook Picked Anticompetitive Strategy; VP Alex Roman Lied Under Oath

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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