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テスラ、2026年サマーアップデートを配信開始 Grokの車両音声操作はAMD Ryzen搭載車に限定

(Tesla.com)[写真拡大]
テスラは2026年7月26日から、2026年サマーアップデート(ソフトウェアバージョン2026.26)の世界向け配信を開始した。最大の目玉は、AIアシスタント「Grok」による車両機能の音声操作だが、利用できるのはAMD Ryzen搭載のインフォテインメントシステムを備えた車両に限られる。アップデート自体は7月末までに全車両へ行き渡ると見込まれているものの、Intel製チップを搭載する車両では、ハードウェア上の制約からGrokによる車両操作を利用できない。
■Grokが越えられなかった一線を越える
テスラは7月26日、2026年サマーアップデート(ソフトウェアバージョン2026.26)の世界向け配信を開始した。テスラのリリースノートによると、目玉となる変更は、同社の音声アシスタントがこの1年目指してきた「Grokによる車両機能の音声操作」である。声で指示すればグローブボックスが開き、音楽が再生され、車内の暖房も作動する。ただし、これらの操作を利用できるかどうかは、インフォテインメントユニットに搭載されたチップによって決まり、相当数の車両が非対応となる。
写真と動画による2026.26の解説で確認されている通り、アップデートは現在展開中で、7月末までに全車両へ行き渡ると見込まれている。また、消費者向け機能の展開とは別に、テスラのロボタクシー車両にも小さな変更が加えられた。EVアナリストのソーヤー・メリット氏が7月27日に指摘したところによると、無人運転するModel Yのロボタクシーでは、車内のウインカーとハザードランプの作動音が鳴らなくなった。この変更を巡っては、自動運転車の乗客にどのような音を聞かせるべきかという議論が起きている。
テスラが2025年7月にGrokを初めて統合した当時、このアシスタントは画面上のチャットボットとして機能していた。Grokは、xAIとSpaceXが2026年2月に合併して設立されたSpaceXAIが開発した大規模言語モデルである。質問への回答、ナビゲーションの目的地設定、ジョークの披露はできたものの、車両の物理的なシステムを操作することはできなかった。2026年4月のスプリングアップデートでは、「Hey Grok」というウェイクワードと位置情報に基づくリマインダーが追加され、アシスタントは車両操作に一歩近づいたが、実際に車両機能を動かすことはなかった。
テスラの公式リリースノートによると、バージョン2026.26はこの隔たりを埋めるものだ。対応ハードウェアを搭載する車両では、画面に触れることなく、自然な音声対話によって電話をかける、音楽を検索して再生する、車内の空調を調整する、グローブボックスを開ける、コントロール画面の設定項目を検索するといった操作が可能になった。テスラのリリースノートでも、Grokが電話の発信、音楽の再生、空調の調整、コントロール画面の検索に対応したと説明されている。
Electrekのフレッド・ランバート氏はアップデートの解説で、テスラが他社では以前から実現されていた水準に追いつきつつあると指摘した。多くの高級車メーカーはLLMを利用した音声機能を採用しており、中国では低価格帯の車両でも標準的な機能になっているという。
■AMD Ryzen MCUで動作し、車両の約半数が対象外となる理由
Grokが一部のテスラ車では車両機能を操作でき、ほかの車両では操作できない理由は、インフォテインメントユニットに搭載された特定の半導体にある。
テスラ車には、独立した2つのコンピューターが搭載されている。1つは運転に関する判断を処理するオートパイロット/FSDユニット、もう1つはナビゲーション、アプリ、エンターテインメント、そしてGrokの音声インターフェースなど、インフォテインメント画面上の機能を動かすメディアコントロールユニット(MCU)である。両システムは別々に更新されるため、運転支援用としてHardware 3を搭載していても、画面側のMCUにはIntel製またはAMD製のチップが使われている場合がある。
テスラは2021年12月、改良型のModel SとModel Xを皮切りに、AMD Ryzen APU(アクセラレーテッド・プロセッシング・ユニット)を採用したMCU 3の出荷を開始した。2022年にはModel 3とModel Yにも採用を広げた。おおむね2019年から2022年初頭までに生産された車両には、Intel Atom E3950プロセッサーを採用したMCU 2が搭載されている。
両チップのアーキテクチャには大きな違いがある。AMD Ryzen APUは、CPUコアに加えて、ゲーミング機器にも使われるRDNAアーキテクチャのGPU演算機能を統合している。一方、Intel Atom E3950はIntelの省電力な内蔵グラフィックスを使用しており、演算スループットはAMD Ryzen APUより大幅に低い。2021年のベンチマークでは、同じ車載インフォテインメント用途において、AMD製チップはIntel製プロセッサーの4倍を超える速さでアプリを読み込んだ。このGPU性能の余裕によって、Grokの音声応答を支えるリアルタイムのLLM推論を、走行中でも実用的な応答速度のハンズフリーインターフェースとして動かせる。
Intel Atomには、そのために必要な性能上の余裕がない。ナビゲーションソフトウェアやアプリのインターフェースを動かし、今回のアップデートに含まれる機能の大半を利用することはできる。しかし、Grokの音声操作を即時に応答していると感じられる速度で実行するための推論処理には対応できない。これは、テスラが将来のアップデートで変更できるソフトウェア設定の問題ではなく、半導体アーキテクチャ上の制約である。したがって、Intel製チップを採用したMCU 2の車両では、次回以降のOTAアップデートによってGrokの車両音声操作が追加されるわけではない。ハードウェアを交換しない限り、この機能は利用できない。
バージョン2026.26でAMD Ryzen搭載車に限って提供される機能には、Grokによる車両操作、採点機能付きのCaraoke、Google MeetやMicrosoft Teamsなどを使ったビデオ通話のためのブラウザ内カメラおよびマイク対応が含まれる。
■Intel搭載のテスラ車でも利用できる機能
ハードウェアによる機能差はあるものの、すべての機能が分かれるわけではない。2026.26の機能の大部分は、Intel搭載車とAMD搭載車の両方に提供される。
2026年サマーアップデートの解説によると、インフォテインメント用チップの世代にかかわらず、テスラ車には、優先ルート(Preferred Routes)、自動ナビゲーション(Automatic Navigation)、モバイルアプリからのカスタムラップ画像のアップロード、到着時のバッテリー残量目標の設定、リアディスプレイロック、名称によるスーパーチャージャー検索、Apple Musicの再生キュー改善、カメラプレビューが提供される。配信開始後に確認された新しいトラクションコントロールモードの「Auto」「Slippery Surface」「Stuck Assist」も、幅広い車両に適用されるとみられている。
優先ルートは、多くのオーナーにとって今回のアップデートで最も実質的なナビゲーション機能の変更といえる。オンラインルーティングを有効にしている場合、目的地まで複数の経路があるとき、ナビゲーションシステムは計算上の最速ルートを常に選ぶのではなく、ドライバーが過去に利用した道路も考慮するようになった。
テスラの公式リリースノートによると、自動ナビゲーションはこの仕組みをさらに発展させたものだ。起動時に自宅、職場、カレンダーの予定だけを候補として示すのではなく、学校への送迎ルートや帰宅途中に立ち寄るジムなど、運転パターンから定期的に訪れる目的地を学習する。特定の場所について十分な確度が得られると、その場所へのルート案内を自動的に開始する。テスラは、両機能に使用される位置データは匿名化され、車両とは関連付けられないとしている。
■ナビゲーションは日常を学習するが、そのためにはデータが必要
優先ルートと自動ナビゲーションは、すべてのハードウェア世代のオーナーに関係する重要な変更だが、テスラのリリースノートで簡単にしか触れられていない、データ利用とのトレードオフを伴う。
テスラの公式リリースノートによると、両機能を利用するにはオンラインルーティングを有効にする必要がある。つまり、車両内だけで経路を計算するのではなく、ルートデータをテスラのサーバーに送信することで機能する。テスラは、そこで得られるデータは匿名化され、特定の車両とは関連付けられないと説明している。
一方、プライバシーとIoTのアナリストは、プライバシーと利便性のトレードオフに関する分析で、自宅や職場を日常的に含む位置情報を有効に匿名化することは難しく、習慣的な移動ルートのデータセットは、実質的に日常生活のプロファイルになると指摘している。また、テスラが説明するデータの取り扱いについては、第三者による独立した監査が行われていないとしている。
ルートデータを車両内だけにとどめたいオーナーは、オンラインルーティングを無効にできる。ただし、無効にすると、リアルタイム交通情報を反映したルート案内と新しいパーソナライズ機能も使用できなくなる。機能の利用とデータ送信が同じ設定によって制御されるという、構造的なトレードオフである。
■Caraokeの進化とダッシュボードでのビデオ通話
2026.26に含まれる比較的目立たない追加機能からは、テスラが車内を単なる移動のための空間ではなく、滞在する場所としても重視し続けていることがうかがえる。
テスラが2019年のV10アップデートで導入した車内カラオケ機能「Caraoke」は、提供開始以来、最大規模の刷新を受ける。新バージョンでは、単純にスクロールする歌詞に代わって、音程を示すラインと発声タイミングを示すバーが表示され、歌唱の正確さをリアルタイムで採点する機能も加わる。最終スコア、音程を連続して合わせた記録、達成率の内訳は、ドライバープロフィールに保存される。この機能は引き続き駐車中に限って利用できる。
AMD搭載車では、2026.26によって車内のインターネットブラウザを使った本格的なビデオ会議が可能になる。ブラウザから車内カメラとマイクにアクセスし、Google Meet、Microsoft Teams、Discordなど、ウェブインターフェースを備えたサービスを利用できる。これまで、車内でのビデオ通話は専用のZoomアプリに限られていた。
AMDハードウェアを搭載する2024年以降のModel 3とJuniper Model Yでは、ドアを開けたときに新しいウェルカムアニメーションも表示される。中央ディスプレイに「TESLA」のアニメーションロゴが現れ、選択したアンビエントライトと同じ色で光りながら、実際のライトストリップへ流れ込むように演出される。パフォーマンス仕様では、Ludicrous専用のワープスピード風グラフィックが表示される。アニメーションの色はカスタマイズできる。
そのほか、簡素化された経由地ナビゲーション、「経由地を追加」ボタンのナビゲーションカードへの直接表示、ステーション名によるスーパーチャージャー検索、検索結果やアーティストページからApple Musicの再生キューへ追加する機能の改善、モバイルアプリからの到着時バッテリー残量目標の設定が追加される。
さらに、連続利用記録や月間走行距離などの自動運転に関する統計をアプリで閲覧、共有する機能や、Grokの音声機能と緊急時のドア開放手順を説明するインタラクティブな導入チュートリアルも含まれる。
■静かになったロボタクシーと分かれる意見
消費者向けのOTAアップデートとは別に、テスラの無人運転Model Yロボタクシーにも、7月27日に明らかになった変更が加えられた。車内で鳴っていたウインカーとハザードランプの規則的な作動音が消されたのである。
EVアナリストのソーヤー・メリット氏はXでこの変更に触れ、合理的だと評した。人間の運転手がいない完全無人運転車では、ウインカーが作動中であることを知らせる音を聞いて対応する運転手がおらず、乗客にもウインカーを停止する責任はないためだ。
ほかのテスラ関係者や観測者は、この変更を、テスラがハードウェア、ソフトウェア、車両群を含むシステム全体を自社で保有していることの利点と捉えた。自動運転技術を第三者からライセンス供与されている自動車メーカーの場合、同様の変更を実施するには、より多くの調整が必要になる可能性がある。
反応は一様に肯定的だったわけではない。一部の乗客やコメント投稿者は、ウインカーの作動音は自動車に乗る際の感覚として深く定着しており、消音する合理的な理由が明確でも、音がないと違和感や不安を覚えることがあると指摘した。すでにウインカー音のない自動運転車を運行しているZooxとの比較からも、こうした判断自体は前例のないものではないが、意見はなお分かれている。
この変更が適用されるのは、無人運転モードで稼働するロボタクシー車両だけである。Full Self-Driving(Supervised)を使用している車両を含め、一般消費者向けの車両では、引き続き通常通りウインカー音が鳴る。テスラは、乗客が音の有無を切り替えられる設定を将来提供するかどうかを明らかにしていない。
■Grokが欧州とアジアに拡大、ロボタクシーはFSD v15で稼働
2026年サマーアップデートは、2026.26におけるGrokアシスタントの2度目の大規模な地域拡大でもある。Grokが2025年7月に初めて導入された当初、利用できるのは米国のドライバーだけだった。その後、カナダ、オーストラリア、欧州の一部地域へ拡大された。2026.26ではGrokの全機能を欧州全域へ広げ、今後数週間以内にインド、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイへも展開する計画である。
消費者向けアップデートが展開される一方、ロボタクシー車両はまったく別のソフトウェアブランチで稼働している。テスラのAI責任者であるアショク・エラスワミー氏は、7月22日の第2四半期決算説明会で、ロボタクシー車両がすでにFSD v15の初期ビルドで稼働していることを確認した。
FSD v15は、テスラのFull Self-Drivingソフトウェアにおける次の大規模なアーキテクチャ刷新であり、運転モデルのニューラルネットワークを約10倍に拡大する。同説明会の時点で、ロボタクシー車両は2州6都市において、38万マイルを超える無人走行を記録しており、目立った事故は報告されていなかった。その後、テスラはサービスをさらに別の市場へ拡大しており、FSD v15の成熟に合わせて一段の拡大を計画している。
ソフトウェアバージョン2026.26は、4月のスプリングアップデートに続く、2026年で2回目の主要な季節アップデートである。テスラは年4回の季節アップデートを基本としている。FSDの改良は別のバージョンブランチで提供され、消費者向け機能のアップデートには含まれない。
■注目ポイントQ&A
●2026年サマーアップデートで、私のテスラはGrokの音声操作を利用できますか?
利用できるかどうかは、FSD用のハードウェアではなく、インフォテインメントユニット内のチップによって決まります。2021年12月以降に製造され、AMD RyzenベースのMCU 3を搭載している車両では、通話、音楽、空調、グローブボックス、コントロール画面の検索など、Grokによる一連の操作を利用できます。
移行前のおおむね2019年から2022年初頭までに製造され、Intel AtomベースのMCU 2を搭載している車両では、Grokの音声操作を利用できません。これは、将来のアップデートで解消されるソフトウェア上の問題ではなく、恒久的なアーキテクチャ上の制約です。MCUの種類は、タッチスクリーンで「コントロール」→「ソフトウェア」→「追加の車両情報」の順に開くと確認できます。
●AMD Ryzenチップは、なぜGrokの動作に適しているのですか?
AMD Ryzen APUは、CPUコアに加えて、ゲーミング機器にも使われるRDNAアーキテクチャのGPU演算コアを統合しています。このGPU性能の余裕によって、Grokが自然な発話を理解し、車両操作の要求に応答するために必要な、計算負荷の高いリアルタイムLLM推論が可能になります。
古い車両に搭載されているIntel Atom E3950は、Intelの省電力な内蔵グラフィックスを使用しており、GPUの演算スループットはAMD Ryzen APUより大幅に低くなっています。2021年のベンチマークでは、AMD製チップがIntel製プロセッサーの4倍を超える速さでインフォテインメントアプリを読み込みました。車内で快適なハンズフリー操作を実現するために必要な応答速度は、Intel製チップの処理能力を上回ります。
●オンラインルーティングをオフにすると、優先ルートと自動ナビゲーションはどうなりますか?
優先ルートと自動ナビゲーションを利用するには、オンラインルーティングを有効にする必要があります。パーソナライズ機能を動作させるため、ルートデータがテスラのサーバーへ送信されます。
「コントロール」→「ナビゲーション」→「オンラインルーティング」でこの機能を無効にすると、リアルタイム交通情報を反映したルート案内と、新しい行動パターン学習機能も利用できなくなります。テスラは、これらの機能を通じて収集する位置データは匿名化され、車両とは関連付けられないと説明していますが、この主張は第三者による独立した監査を受けていません。オンラインルーティングを無効にしても、2026.26に含まれるその他の機能は引き続き利用できます。
●なぜテスラはロボタクシーのウインカー音を消したのですか?
人間が運転する車両では、ウインカーの作動音には、ウインカーが作動中であることをドライバーに知らせ、曲がった後に停止するよう促す役割があります。人間の運転手がいないテスラの無人ロボタクシーでは、その音を聞いて対応する運転手がいません。乗客にも、ウインカーを監視したり停止したりする責任はありません。
このためテスラは、車内の騒音を減らす目的で、ロボタクシー専用ソフトウェアの作動音を消しました。一般消費者向けのテスラ車や、ドライバーが乗車しているFSD車両には影響しません。Zooxも、すでにウインカー音を鳴らさない自動運転車両を運行しています。
元記事: Grok Takes Control: Tesla’s Summer Update Unlocks Voice Hardware Access
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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