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Amazon、スマホ直接通信向け衛星5,105機を米FCCに申請 Globalstarの周波数帯を活用へ

(Leo.amazon.com)[写真拡大]
Amazonの衛星部門が、地上の基地局なしでスマートフォンと直接通信(D2D)するための低軌道衛星5,105機について、米連邦通信委員会(FCC)に認可を申請した。衛星の展開開始は早くとも2028年となる見込みだ。先行するSpaceXのStarlinkに対し、Amazonは買収予定のGlobalstarが持つ衛星通信用の周波数帯を活用し、国ごとに通信キャリアと周波数共有契約を結ぶ必要性を抑えたグローバル展開を目指す。
■衛星ではなく「周波数帯」が戦略の要
Amazonの衛星部門であるKuiper Systems LLCは2026年7月24日、既存の4Gおよび5Gスマートフォンに音声通話、テキストメッセージ、モバイルデータ、緊急サービスを直接提供する「Amazon Leo Direct-to-Device(D2D)」システムの認可をFCCに申請した。衛星の展開開始は早くとも2028年となる。SpaceXの「Starlink Direct to Cell」が2025年7月からT-Mobileで稼働していることを踏まえると、Amazonはすでに急速に動いている市場へ遅れて参入することになる。
5,105機という衛星の数は目を引くが、重要なのはその背後にあるアーキテクチャだ。SpaceXはStarlink Direct to Cellを開始する際、FCCが「Supplemental Coverage from Space(SCS)」と呼ぶ枠組みの下で、T-Mobileに割り当てられた地上通信用の周波数帯を借りた。この方式では、Starlinkがスマートフォン向け通信を提供したい国ごとに、周波数ライセンスを持つ通信キャリアと個別に周波数共有契約を結ぶ必要がある。衛星事業者は、そのキャリアの免許地域内で、キャリアに割り当てられた周波数を使用し、同社の加入者にサービスを提供する。T-Mobileに関する承認はあくまで米国内での承認であり、メキシコやオーストラリア、インドネシアで同様のサービスを展開するには、改めて交渉しなければならない。
一方、Amazonのアプローチは構造的に異なる。FCCへの申請によると、Amazon Leo D2Dシステムは、Globalstarが既存のLバンドおよびSバンドで保有する周波数帯を使用する。周波数はそれぞれ約1.6GHzと2.4GHzだ。これらは国際電気通信連合(ITU)が衛星によるモバイル通信に割り当てたモバイル衛星サービス(MSS)の周波数であり、地上の通信キャリアから借りるものではない。Globalstarは120カ国以上でMSSライセンスを保有しており、Amazonは同社の事業とともにこれらを取得しようとしている。
Amazonは2026年4月、Globalstarを約115億7,000万ドル(約1兆8,975億円、1ドル=164円換算)で買収することで合意したと発表しており、取引は2027年に完了する見込みだ。この周波数帯が、Amazonによる買収の重要な理由となっている。これらのライセンスがなければ、Amazonは世界の多くの地域でスマートフォンへ音声通話を合法的に送信できない。ライセンスを獲得すれば、AmazonはStarlinkのように国ごとにキャリアとの交渉を繰り返すことなく、モバイル端末に信号を送るための国際的に調整された権利を引き継ぐことになる。
■軌道上からスマホへ信号を届ける仕組み
AmazonのD2D技術解説によると、提案されている衛星は地球上空510~580kmの高度にある5つの軌道シェルに配置される。3つのシェルが人口の多い中緯度地域を高密度にカバーし、軌道傾斜角がより大きい2つのシェルが極地域へサービス範囲を広げる。
これらの衛星は単なる中継局ではない。信号を最寄りの地上局へ送り返すだけの「ベントパイプ」型衛星とは異なり、AmazonのD2D衛星は軌道上で信号を処理する。衛星間をレーザーで接続する光衛星間リンクにより、トラフィックを地上ゲートウェイへ到達させる前にコンステレーション内でルーティングし、カバレッジの空白を減らす。
スマートフォンとの通信には、デジタルビームフォーミングを用いて、ユーザーのいる場所へ電波のエネルギーを集中的に向ける。さらに、複数のビームへ送信時間を割り当てるビームホッピング、低出力のスマートフォンからより多くの信号を捉える二重偏波受信、信号状況に応じてデータの符号化方式をリアルタイムで調整する適応変調などを組み合わせる。
これらの技術は、見過ごされやすい物理的な課題への対応策だ。LバンドとSバンドは障害物の影響を受けにくく、広い範囲をカバーできる一方、家庭向け衛星ブロードバンドで使われるKaバンドほどの帯域幅はない。そのため、Amazon Leo D2Dはギガビット級のストリーミングではなく、音声通話、メッセージング、緊急サービス、IoT向けに位置付けられている。これは意図的なトレードオフだ。通信手段がない地域で音声通話や緊急通信を提供することは、高速インターネットを提供することとは異なる課題であり、適した周波数帯も異なる。
このシステムは、衛星通信対応チップセットを搭載する4Gまたは5Gスマートフォンで動作するように設計されている。こうしたハードウェアの選択肢は、3GPPリリース17で定義された非地上系ネットワーク(NTN)標準を背景に、Apple、Google、Qualcommの各プラットフォームで急速に広がっている。
■数億人の潜在ユーザーと競合の動向
Amazonの申請では、対応するiPhoneおよびApple Watchの「緊急SOS」「衛星経由のメッセージ」「探す」「衛星経由のロードサービス」などの衛星機能を、引き続き支えるためのAppleとの契約も確認された。Globalstarは現在、Appleとの複数年契約に基づいてこれらのサービスを提供しており、Amazonはこの関係をゼロから構築するのではなく引き継ぐことになる。
この継承により、Amazonは他のD2D事業者にはない既存の利用基盤を得る。数億台のApple製デバイスが、緊急機能のためにすでにGlobalstarのネットワークへ接続しており、Amazonがコンステレーションと周波数帯を引き継げば、これらのユーザー基盤も取引に伴って引き継がれる。
キャリアおよびパートナーとの関係では、Amazonは初期のD2DパートナーとしてVodafone、DirecTV、南アフリカのHerotel、オーストラリアのNational Broadband Network(NBN)などと契約を結んでいる。
Amazonが参入する市場は、過去12カ月で劇的に加速している。SpaceXのStarlink Direct to Cellは2025年7月から商用提供されており、当初はT-Mobile顧客向けのテキストメッセージおよび緊急サービスとして始まり、その後、音声通話やデータ通信へと拡大している。
2026年1月には、FCCがSpaceXの第2世代コンステレーションを7,500機から1万5,000機へ拡大することを承認した。FCC委員長のブレンダン・カー氏は、この承認について「次世代サービスの促進に変革をもたらす」と述べた。SpaceXは最大100万機の衛星を運用する認可も別途申請しているが、AmazonはFCCに対し、この申請を却下するよう正式に求めている。
もう一つの重要な競合は、テキサス州に拠点を置くスタートアップのAST SpaceMobileだ。同社は2026年4月21日、スマートフォンへ直接ブロードバンドを提供する248機のD2Dコンステレーションについて、FCCから商用認可を取得した。
AST SpaceMobileは、AT&T、Verizon、FirstNetといったパートナーがライセンスを持つ700MHz帯および800MHz帯のローバンド周波数を使用している。これはStarlinkと同じSCSの枠組みで運用されるが、単一の通信事業者に依存するのではなく、複数のキャリアとの提携を積み重ねるアプローチを採っている。
2026年5月には、AT&T、T-Mobile、Verizonが合弁事業を立ち上げ、周波数を共同利用し、共通のD2D統合標準を開発するとともに、衛星通信へ共同投資すると発表した。3社はそれぞれ既存の衛星パートナーシップを維持しており、T-MobileはSpaceX、AT&TはAST SpaceMobile、VerizonはAST SpaceMobileおよびSkyloと提携している。それでも、この合弁事業は、単一の衛星事業者がキャリアとの関係を構造的に支配する前に、共通の技術プラットフォームを確立するための防衛的な動きを示している。
さらに2026年6月29日には、Rocket Labが従来型の低軌道衛星電話事業者であるIridiumを80億ドル(約1兆3,120億円、1ドル=164円換算)で買収することで合意した。AmazonのFCC申請は、米国外で現在Iridiumに関連付けられている1,618.725~1,621.25MHzの周波数帯へのアクセスを明示的に求めている。
Rocket LabによるIridium買収は2027年半ばに完了する見込みだ。買収が完了した場合、AmazonがD2D衛星を1機も打ち上げないうちに、両社がFCCで周波数を巡る対立に直面する可能性がある。
■ブロードバンド衛星の構築と並行する課題
AmazonのD2D申請は、同社のブロードバンドコンステレーションがまだ初期の展開段階にある中で行われた。2026年7月時点で、Amazonが軌道上に展開していたブロードバンド衛星は約396機であり、FCCから構築認可を得ている3,232機の一部にすぎない。
FCCは、2026年7月30日までに1,618機を運用状態にするという期限について、Amazonに免除を認めた。一方、2029年7月30日までにコンステレーション全体を完成させる期限は引き続き適用される。
計画が遅れている理由は製造ではなく、ロケットの確保にある。United Launch Allianceの「Atlas V」、Arianespaceの「Ariane 6」、Blue Originの「New Glenn」、SpaceXの「Falcon 9」からなる打ち上げロケット群が、衛星の生産ペースに追いついていない。Amazonはブロードバンドコンステレーションの構築を継続しながら、それと並行して2028年にD2D衛星の展開を開始する計画だとしている。
完全展開時には、ブロードバンドコンステレーション、D2Dコンステレーション、買収によって取得するGlobalstarの衛星を合わせたAmazonの衛星群は8,300機を超える。実現すれば、現在1万機を超えるStarlink衛星を運用するSpaceXに次ぎ、Amazonは世界第2位の規模の衛星事業者となる。
調査会社Omdiaが2026年3月に公表した予測によると、世界の衛星D2Dサービスは2030年までに月間アクティブユーザー数が4億1,100万人、収益が約119億9,000万ドル(約1兆9,664億円、1ドル=164円換算)に達すると見込まれている。これは2026年の水準から、ユーザー数で年率80%超、収益で年率約50%の成長を意味する。
■衛星電話時代を左右する事業モデル
市場を形作る戦略的な違いの一つは、各事業者がモバイルキャリアとの関係で自らをどう位置付けるかだ。
SpaceXのDirect to Cellは、米国でT-Mobileの独占サービスとして始まった。これにより展開の速さと規制面での勢いを得た一方、AT&TやVerizonとの摩擦を生み、両社はAST SpaceMobileとの衛星通信提携を加速させた。SpaceXは現在、名前を明らかにしたMNO(移動体通信事業者)パートナーを伴わずに、メキシコを含む国外でのD2D展開を進めている。この動きは、SCSの枠組みに慣れた現地の周波数規制当局との摩擦を生んでいる。
一方、AmazonはD2Dサービスを地上ネットワークの代替ではなく、補完するものとして明確に位置付けている。Vodafone、DirecTV、Herotel、オーストラリアのNBNなどと契約するパートナーモデルは、Amazonをキャリアと競合する消費者向けブランドではなく、キャリアへ接続サービスを卸売りする事業者として位置付けるものだ。
しかし、この位置付けはAmazonの長期的な競争上の利益と緊張関係にある。Amazonが衛星レイヤー、端末のソフトウェアスタック、周波数帯を所有すれば、モバイル事業者は最終的にネットワークの門番ではなく、サービスの流通パートナーになる可能性がある。現在の表現は融和的だが、構築されているインフラは必ずしもそうではない。
Amazon Leoのビジネスおよびプロダクト担当バイスプレジデントであるクリス・ウェーバー氏はXで、「2028年に展開を開始する計画であり、実現に向けてパートナーと協力できることを楽しみにしている」と述べた。しかし、その短い言葉は背後にある複雑さを十分には表していない。
FCCは申請を承認しなければならず、Globalstarの買収も完了する必要がある。Rocket Labとの周波数を巡る対立を解決し、さらにAmazonは2つのコンステレーションを並行して構築できることを規制当局に示すため、ブロードバンド衛星の展開を加速させなければならない。
これらはいずれも実現が保証されておらず、それぞれに複数年の時間を要する。それでも戦略的な論理は明確だ。Amazonは地上キャリアから借りた周波数ではなく、衛星モバイル通信専用に割り当てられたMSS周波数をD2Dの基盤とすることで、すべての国で個別のキャリアパートナーを必要としないグローバル市場を構築しようとしている。規制手続きと買収が予定通りに進めば、この構造的な優位性によって、2029年の衛星電話時代は現在とは大きく異なるものになる可能性がある。
■注目ポイントQ&A
●Amazon Leoの衛星電話アプローチは、Starlinkとどう違うのですか?
Starlink Direct to Cellは、FCCのSCS(Supplemental Coverage from Space)という枠組みの下で、T-Mobileから借りた周波数を使用しています。このため、スマートフォン向け通信を提供したい国ごとに、原則として現地のキャリアパートナーが必要です。
一方、Amazon Leoは、ITUが衛星モバイル通信向けに割り当てたGlobalstarのモバイル衛星サービス(MSS)周波数、具体的にはLバンドとSバンドを使用する計画です。関連するライセンスは120カ国以上をカバーしているため、AmazonはStarlinkの国際展開を制約する国ごとの周波数交渉を繰り返すことなく、理論上はグローバルに事業を展開できる可能性があります。
●Amazon Leoの衛星電話サービスはいつから利用できるようになりますか?
Amazonは、Globalstarの買収が2027年に完了し、FCCが現在の申請を審査した後、2028年にD2Dコンステレーションの衛星展開を開始する計画です。消費者向けサービスの開始日は発表されていません。参考までに、SpaceXの同等サービスでは、最初の専用衛星を打ち上げてから商用提供までに約2年かかりました。
●Globalstarの買収により、Amazonは衛星以外に何を得るのですか?
115億7,000万ドルでのGlobalstar買収における戦略的価値の中心は、衛星ハードウェアではなく、周波数帯とAppleとの関係です。Globalstarは120カ国以上をカバーするMSSライセンスを保有しており、これによりAmazonは国外でもモバイル端末へ直接信号を送る権利を得ることになります。
さらに、GlobalstarはすでにiPhoneおよびApple Watchの衛星機能を支えています。対象には「緊急SOS」「衛星経由のメッセージ」「衛星経由のロードサービス」などが含まれます。Amazonは周波数の権利とAppleとのパートナーシップの両方を引き継ぐことで、互換性のあるデバイスの既存利用基盤と、大手消費者向けハードウェア企業であるAppleという法人顧客を得ることになります。
●Amazon LeoのD2D衛星で、スマートフォンにブロードバンドインターネットを提供できますか?
一般的なブロードバンド相当の速度では提供できません。AmazonがD2Dに使用するLバンドおよびSバンドは、音声通話、テキストメッセージ、緊急通信、低帯域幅のIoT用途に適していますが、高速なデータストリーミングには向いていません。
低い周波数帯は広い範囲をカバーでき、障害物の影響も受けにくい一方、Amazonが固定回線型の家庭向け衛星ブロードバンドに使用するKaバンドほどの帯域幅はありません。D2Dは家庭用インターネット接続の代替ではなく、現在は通信手段がない場所へ接続性を提供するサービスと考えるべきです。
元記事: Amazon Leo Files for 5,105 Satellites to Beam Calls Directly to Your Phone
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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