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牧野フライス買収に政府が中止勧告、経済安保と対日投資の分岐点
●MBKによる牧野フライス買収を政府が中止勧告
牧野フライス製作所の買収を進めてきたアジア系ファンドのMBKパートナーズに、日本政府が中止勧告を出した。
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牧野フライスの工作機械が、国内防衛産業の製造に使われていることなどから、安全保障上の懸念があるとの判断だった。財務相と経産相が外為法第27条第5項に基づき勧告した。
中止勧告を受けて、牧野フライスの株価は急落した。
2017年の外為法改正以来、初の中止勧告となる。重要技術や能力が海外流出するリスクに対応する一方、勧告によって対日投資を委縮させかねないという危惧もあり、これらのバランス調整の難しさを示唆するケースとなった。
●MBKによる牧野フライス買収の流れ
ニデックが2025年4月に敵対的TOB(株式公開買い付け)を仕掛けたが、牧野フライスがポイズンピル(対抗策)を導入したことで、翌月にはニデックが撤回した。
牧野フライスはマシニングセンタの先駆け的存在で、工作機械はグローバル展開しており、海外売上比率は80%を超える。
当時のニデックは、「世界屈指の工作機械メーカー」を目指し、M&Aを繰り返していた。牧野フライスの経営が不調だったわけではなく、同社の堅調な業績や低PBRによる割安さ、無借金経営などから、買収の対象となった。
牧野フライスはニデックの買収を拒否し、MBKをホワイトナイト(友好的な買収者)として受け入れた。
●気になる今後の展開と同様のケースではどうなる?
MBKは中止勧告を「大きな驚き」と表明し、2026年5月1日までに勧告を受け入れるかの判断が迫られる。拒否した場合には中止命令が出されると見られる。
23日には日系投資ファンドNSSK(日本産業推進機構)が買収提案し、牧野フライスの完全子会社化を目指すことが、日本経済新聞の報道で明らかになった。
日本企業を取り巻く環境は大きく変化しており、技術力が高くとも、利益率が低かったり、資本効率が悪かったりといった企業は、買収されやすくなる。
地政学リスクが高まり、防衛産業にかかわる企業は安全保障を脅かしかねない。日本は対日投資を呼び込める環境になってきてはいるが、外国投資の“緩さ”も指摘されていた。
投資家にとって、日本政府からの横やりは、慎重姿勢とならざるを得なくなることは否定できない。だが安全保障を理由とした制限は、グローバルスタンダードでもあり、日本が世界に追いついてきたとの見方もできることから、悪いことばかりではない。(記事:森泰隆・記事一覧を見る)
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